◆『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』
〜連載各話のTRPGシナリオ化〜

text:安藤 昌季

0.この文章は?
1.第1話「friends」のTRPG化
2.第2話「錨たる子ら」のTRPG化
3.第3話「椿座の佳人」のTRPG化
4.第4話「巡り影」のTRPG化
5.第5話「可憐なる流星」のTRPG化
6.第6話「智慧の牢獄」、第7話「現在を認めること」のTRPG化

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 ここでは、ゲームギャザ誌の連載で使用されたシナリオをTRPGとして遊ぶ場合について説明します。読まれる前に連載各話を一読されることをオススメします。またネタバレを含んでいるのでご注意ください。

1.第1話「friends」のTRPG化

 重要登場人物となる、橘 幹人、朝霞 桜との接点を持たないと、話の主筋に関われなくなるシナリオです。ですから、PCの初期配置として「幹人、桜と幼なじみ(PC全員は友人関係)」である必要があります。とはいえ、プレイヤー人数が3人以上となる場合は、PCの配役が同じとなることから、見せ場が重なってしまう問題があります。

 シナリオ執筆者がGMを行ったセッションでは、この問題について以下のように対処しました。

PC1:幹人、桜の幼なじみ。小学生の時はクラスのガキ大将的な存在。包容力がある。

PC2:幹人、桜の幼なじみ。小学生の時はクラス委員長。勉学は得意だが、ここぞの決断力はPC1に譲る。

PC3:幹人、桜の幼なじみ。現在は《Anchors & Ships》インストラクターで、PC1、2とは小学生時代の友人。小学生時はインストラクターではなく、後に覚醒したという設定。朋は配役が重なるので登場させず。

 PC1と2は「ボケとツッコミ」の関係で、そしてPC3や幹人を助ける間柄です。
 ゲームの導入部分については、PC3から始めました。PC3に《Anchors & Ships》日本支部である「ペルセフォーネ」号にて支部長の小津 香澄に「美浦市内で、最近行方不明事件が多発している。事件発生場所に近い正慶高校に転校し、事件を調査してもらえないか」と依頼したのです。

 そして香澄に「正慶高校には、あなたの小学生時代の幼なじみ(PC1、2)もいるようね。いい機会だから、旧交を温めていらっしゃい」と言わせることで、他のPCとの接点を作りました。次のシーンはPC3がPC1、2の学校に転校してくる場面。PC1、2は同じクラスとし、クラスメイトは転校生についての話題で盛り上がっている「転校生なんて、小学生以来」だと話を振り、PC1〜3が登場する回想シーンとしたのです。

 その上でPC3に[ベクトルカード]で「転校で不安がっている演出」を依頼し、PC1、2には「他のクラスメイトに迎えられるようにしてあげて」と示唆しました。このさいに、小学生時代の幹人、桜も登場させ、PC3を迎え入れる場面を演出したのです。そして回想シーンを戻し、現代でPC3が転校してくる場面にしました。回想シーンでの会話があったため、PC間での会話はスムーズに回り、幹人、桜についても認知してもらえたようです。

 次の場面は「PC全員と幹人、桜の小学生時代」です。
 前の場面で友人になれたPCと幹人、桜が夏休みの宿題提出のために意気投合する場面を描き、その上で幹人に「みんなで海に行こう」と切り出させ、そして桜が病気で倒れるところまで演出しました(*1)
 その次に「昔を懐かしんで喫茶店『ギャレー』にPCが行く」場面を振り、現実の桜を登場させたのです。  あとは朋が登場しないので、PC3に[ベクトルカード]効果4で他のPCに伝えるべきことを示唆させ、連載通りに話が進みました(*2、3)

*1 プレイヤーは盛り上がり女性PCと桜で水着を買いに行く場面など、自ら演出してくれた。

*2 ただ、私はプレイヤーに情報提示を誤ったため「幹人と桜が恋人関係」だと勘違いさせてしまった。第1話は「善意で医学向上を願う幹人の心を利用し、踏みにじる“意識”の卑劣さの演出」が要点なのだが、恋愛話と思われるとテーマがそれてしまいやすい。むしろ幹人も女性にしていたほうが、テーマは描けると反省した次第。

*3 《イモータル》能力覚醒の演出が面倒であればPC1、2も当初から《Anchors & Ships》協力者としても構わない。

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2.第2話「錨たる子ら」のTRPG化

 第2話の主題は「《Anchors & Ships》インストラクターのあり方を見せること」でした。
 ジュブナイル小説などでは、よく「組織で生まれ戦闘機械となった主人公が、周囲との繋がりで人として成長する」テーマが用いられます(*4)
 そうしたことから「人との交流に慣れていない純粋な少年が、クラスメイトとのやり取りを通じて、心を開いていく」という展開にしました。とはいえ、そのような特殊なPCだと、遊ぶ人を選びます。
 ですからTRPGとして遊ぶ場合には、シナリオの骨子のみを採用する展開とした方が、扱いやすくなります。

 PCは《Anchors & Ships》インストラクター、もしくは《Anchors & Ships》への協力者とします。
 そして接点として、PCは「磐城 昴平に《イモータル》能力の指導を受けた」とするのです。具体的にはPCたちは「マリンショップA&S」のスポーツ仲間。安永 仁美もその仲間内グループですが、ただ一人能力に覚醒していない、という設定です。冒頭にスポーツを通じての磐城、仁美との交流を描き、キャラクターを立てるわけです。

 そして「千鳥山に赤い火の玉が落ちる」事件をきっかけに、磐城が派遣され、戻ってこないという展開とします。インストラクター役のPCは磐城の任務を知っていますから、連載のような香澄に直訴する展開にしやすいはずです。
 そして、千鳥高校に転校したインストラクターPCと、磐城の失踪を知って不安がっている仁美との出会い。PCのために、転校祝いをしてくれる仁美たち。という展開とします。あとは連載通りに話が進むはずです(*5)

*4 《Anchors & Ships》は「世界の秩序と人の絆を守る」組織なので、戦闘機械とか人形のような無機質主人公は、あまり考えられないのだが。

*5 余談だが、実は第1話の続きとして遊ぶこともできる。シナリオ上は1話の高校と同じでも構わないし、1話で覚醒したPCたちが磐城に指導された、とすればいいのだから。

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3.第3話「椿座の佳人」のTRPG化

 第3話の主題は「組織に属さない《イモータル》のあり方」と「《九曜家》の顔見せ」でした。
 後者の《九曜家》要素を省いた場合、いわゆる「スタンダートな幽霊屋敷もの」となります。PCは劇団「椿座」の俳優候補生(*6)。立ち位置にメリハリを出したいなら、滝浪を出さずに、座長もPCとすればいいでしょう。

 その場合、導入に回想シーンで「滝浪と滝浪の妻とのやり取り」から始め、「椿座」が難病によって、心ならずも女優業を断念した滝浪の妻が、せめて後進を育てたい、という願いから椿座を創設したという場面を入れると、後ほどの展開に対して、「椿座を護らなくては」というプレイヤーのモチベーションを高めやすくなります(*7)

 また「どうせなら《九曜家》も遊びたい」というのであれば、連載で日色 奏が行った任務を、九曜 珠子が依頼するという導入から始めるといいでしょう(*8)
 ただし、《九曜家》PCと椿座のPCが対立するような展開は論外ですので、滝浪、もしくは座長役のPCを《九曜家》に仕えていることにするのがいいでしょう。

*6 「後輩の俳優候補生につらく当たる先輩」を出すなどすれば、PC同士の連帯感を高めやすい。

*7 回想シーン中は、手空きのプレイヤーにかつての滝浪先生の共演者とか、妻自身を「NPCを遊ぶルール」で遊んでもらうといい。

*8 珠子の依頼場面は本ホームページ掲載の ショートリプレイ「夢違」が参考になる。依頼内容は「占いにより見いだした勾玉の捜索」である。

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4.第4話「巡り影」のTRPG化

 第4話の主題は「《九曜家》のあり方」「《Storm Crusade》の顔見せ」でした。PC作成において【能力値】60点を割り振るというハイレベル・シナリオですから『ホワイトカオス』のゲームに慣れてから遊ぶことを推奨します(*9)
 PC全員を《九曜家》の切札というべき《要》とした場合、プレイヤーが意識して工夫しないと、どうしても見せ場が食い合います。ですから一人を《備》として、《要》と上司部下の関係にするのもいいでしょう(*10)

 それでも3人以上のPCになった場合は、一人を《Anchors & Ships》インストラクターにする必要があります。つまり、連載で磐城が担っていた役割を、PCの役割に変更するのです。そしてPCの登場場面に偏りが起こらないよう、珠子が《Anchors & Ships》の名前を出した後で、《大戦》の回想シーンにすることを推奨します。

 劇中で描かれる《大戦》の情報は以下の通りです。

 まず《Anchors & Ships》インストラクター役(以下《A&S》PC)には、育ての親がいます。乾 朋の両親です。乾夫妻は、《A&S》PCに強力な《ホワイトアウト》が行われるさいの予兆が現れていることを告げます。それは、1999年7月(6年前)に現れた《恐怖の大王》麾下の戦力でも最強クラスである《滅びの騎士》が多数出現する予兆です。
 《A&S》PCと乾夫妻、そしてその他の《A&S》インストラクターは、美浦市中心部に移動、強力な《ホワイトアウト》に同調し、戦いが始まります(*11)。そして、乾夫妻はまだ駆け出しの《A&S》PCをかばって戦死します。

 その後で《九曜家》側のPCが現れて、《滅びの騎士》を撃退するのです。これにより、《A&S》PCには、乾夫妻の忘れ形見である朋を護るという行動原理を持つことができます。
 より演出意図を明確にするために、回想シーンを開けたあとで、《A&S》PCと朋の場面にするといいでしょう。

 朋は以前の任務(第2話)で勾玉を持ち帰ったことにより、呪われているのですが、苦痛に耐えながらも気丈に振る舞う様子を描き、乾夫妻が《A&S》PCに見せたインストラクターとしての姿勢と重ねる演出をするのです。

 あとは、時任と《A&S》PCが接触したさいに[ベクトルカード]効果4を使って《Storm Crusade》の説明をするといいでしょう。

 《九曜家》側PCに対する演出としては、美鏡と百合子が別人格であることを意識して演出することです。やむを得ない事情があるにせよ、PCの行為は一般人である百合子の自由を奪い、影武者としての人生を歩ませる行為です。その辺りをプレイヤーが理解するなら、重みのある場面が作れるでしょう。

*9 『ホワイトカオス』のゲームルールは、初期キャラクターの6倍である【能力値】60点でも機能するようにデザインされている。この場合、行為判定の目標値の基本は【能力値】+12程度にするとよい。敵の強さの目安としては、ボス級が「PCが判定でクリティカルしたさいに届く」程度の【能力値】(つまりPC+10程度)を持たせることを推奨する。

*10 別に《備》だからといって、《要》より弱くする必要はない。

*11 《滅びの騎士》基本型のデータは、【能力値】30/−/10、[武器威力]+60、[結界強度]200。ただし、この場面で戦闘を入れる必要はない。回想シーンなので演出で済ませることを宣言すべきである。

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5.第5話「可憐なる流星」のTRPG化

 第5話の主題は「《Storm Crusade》の正義と問題点」「『この世界』を侵略する大敵の実像を描くこと」です。

 ですから「《Storm Crusade》の正義を盲信している人物」はPC不可であることを明言してください。立ち位置は二つ考えられます。一つは「《Storm Crusade》の正義に漠然とした疑問を持つアーク学園の生徒」です。
 この立ち位置のPCは両親を《大戦》で失い、アーク学園の寮で生活しています。そして、洗脳された生徒が多数いる学校内で「話が通じる数少ない友達同士」という扱いです。このPCグループは、学校に禁じられた物品を持ち込める廃屋・“秘密基地”を共有しています。

 もう一つの立ち位置は、「アーク学園に潜入した《Anchors & Ships》インストラクター」です。《Storm Crusade》は第1話ボスの“意識”から戦闘生物の製法を入手するなど、『この世界』を護るという行動原理のためなら、手段を選びません。そうしたことから、現在アーク学園で何が行われているのかについて、調査の必要があるという理由です。
 すでに教師の立場としては、《Anchors & Ships》屈指のインストラクター・碇 承明が、非常勤講師として潜入しているのですが、彼のレポート結果から、生徒の立場からも調査の必要があるということになったのです。

 導入としては、まず冒頭で洗脳された生徒たちの異様さを描きます(*12)
 そして回想シーンとして“まともな”PCたちが学校に言えない秘密を共有したきっかけである、「秘密基地の入手」を描くのです。《A&S》PCは碇の計らいにより、《Storm Crusade》でも常識的な価値観を持つ存在である他のPCと共に「地学の調査」という名目で千鳥山に登ります。

 そして秘密基地を発見するのです。GMは特に《A&S》PCに「他のPCに一般社会を知ってもらうために、この場所が役立つのではないか」ということを示唆してください(*13)

 あとは、連載では碇が生物教師と対決しますが、《異界人》及びヤヒロとの交流が盛り上がった場合など、PCが戦いたがる場合もあるでしょう(*14)
 この場合は、時任を登場させなくても構いません。生物教師を倒したあとで碇が登場し、ペルセフォーネ号にヤヒロを保護するという展開となります。

*12 GMが何人か級友を見せたあと、「NPCをプレイするルール」でそうした演出をプレイヤーに振るのもよいだろう。

*13 《A&S》PCから碇に報告し、示唆される、でも構わない。《A&S》PCの発案から「みんなで秘密基地を作っていく」という展開に繋げるのは美味しい。

*14 データは以下の通り。 生物教師・黒澤 朱門
【能力値】10/15/6 [武器威力]+20 [結界強度]150

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6.第6話「智慧の牢獄」、第7話「現在を認めること」のTRPG化

 「世界を封じた勾玉を巡る物語」が『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』連載のメインとなる物語ですが、第6話はそのプロローグです。

 ですから、単体で遊ぶのにはあまり向いたシナリオではありません。

 遊ばれる場合は、キャンペーンの最終話とその一話手前という形で、セットとして遊ばれることを推奨します。盛り上げ方ですが、《九曜家》側はショートリプレイで示唆したような、当主・九曜 珠子の苦悩を描くことによる盛り上げ。《Anchors & Ships》側は、ヤヒロが第5話の結末で示唆した「《大戦》の再来が起ころうとしていること」を危機感の演出として、盛り上げるといいでしょう。

 第7話はPCをアーカーシャや珠子に同行させるより、彼らが入り込んだ勾玉を守り抜く、ペルセフォーネ号防衛戦を行うことを推奨します。
 この場合のクライマックスは《滅びの騎士》や《恐怖の大王》最高の側近である大将軍・スシンとの対決です(*15)

*15 データは以下の通り。
スシン  【能力値】45/30/20 [武器威力]+90 [結界強度]400 
PCの【能力値】70点での制作を推奨する。