◆『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』/『ホワイトカオス 3rd.edition』用シナリオフック

♯1 「展覧会の絵」 ♯2 「ジュリエットの檻」 ♯3 「パッチ・ワーク」
♯4 「最後の卒業式」 ♯5 「終夜遊園地」 ♯6 「二人のための協奏曲」
♯7 「鯉のぼりの逆襲」 ♯8 「マインド・マップ」 ♯9 「ブルー・マリッジ・ブルー」
#10 「サンタが街にやってきた」 ♯11 「逢瀬が刻」 ♯12 「悲しみテディ」
♯13 「デッド・コピー」 ♯14 「迷い児」 ♯15 「神域乱すもの」
♯16 「水の悲しみ」 ♯17 「千年煉獄」 ♯18 「イミテーション・プリティ」
♯19 「逆斎火」 ♯20 「双葉鏡華」 ♯21 「ビーンズツリー」
♯22 「学び舎への珍客」 ♯23 「二つの石碑」 ♯24 「ココロの重さ」
♯25 「白く舞う涙」 ♯26 「神拾遺」 ♯27 「祝詞」
♯28 「原罪なき贄」 ♯29 「漂流学校」 ♯30 「天使の種」
♯31 「愉快な誘拐」 ♯32 「裏山にUFO?」 ♯33 「椿座の客人」
♯34 「なごり雪」 ♯35 「喪服の訪問者」 ♯36 「椿座の猫叉」
♯37「ワンナイト・ウィズ・グリーンベリー」 #38「Romantic from Zoo」

◆text(スタジオサウスサンド):網代 千枝(♯1〜4、6〜9、11、18、20、30〜38)、
  安藤 昌季(♯5、17、19、21、24〜29)、鷹島あかね(♯10)

◆text(投稿シナリオフック):神波(♯12)、でかい人(♯13〜16、22〜23)、にゃあ(♯19)


■♯1 「展覧会の絵」


「この部分に青を載せ、白でぼかして……」

 学生絵画コンクールを総なめにしている女子高生、杉田 花穂(すぎた・かほ)。
 そのタッチは大正時代に夭折した天才画家、桐原 隗(きりはら・かい)に酷似しており、彼の再来とまで讃えられる。
 しかし彼女は二科展で最優秀賞を取った日、失踪する。「これは私の絵じゃない」という謎の言葉を残して。

 調査をすると、美術部員だった彼女は、他の部員が帰った後も一人で絵を描きつづけ、居残りの理由を問う友人に「夜、部のOBに絵を見てもらってい るの」と答えていたことがわかる。
 そして花穂の通う高校の美術室には桐原 隗の未完の作品「少女」が展示されている。そこに描かれていた少女は、花穂そっくりだった。

 「少女」の本当のモデルは桐原 隗の弟子であり恋人であった、浅野 恵(あさの・めぐみ)という女性である。しかし彼女は、桐原の心無い仕打ちによって彼の元から去ってしまった。
 失った恵への悔悟の念によって《タイラント》となった桐原は、恵にうり二つの花穂に、絵の手ほどきをすることで、罪を償っていたのだ。
 しかし、花穂は桐原の手ほどきによって自らの絵が描けなくなってゆく事実に直面し、桐原を拒絶する。
 花穂の拒絶と恵の失踪を重ねた桐原は、花穂(=恵)を失うことを恐れ、自らの《異界》へ連れ去ってしまったのだ。

 桐原の《異界》に通じる《うさぎ穴》は「少女」の絵に重なるように存在する。
 《異界》の中は桐原が恵と過ごした、幸せだった時代の街並みの姿を再現したものである。
 桐原はその中の、かつて恵と暮らしていたのとそっくりな安アパートでカンバスに向かって黒一色の鬼の絵を描いている。PCが桐原と口論になると、絵の中 の鬼(=桐原の無意識化にある破壊衝動)が“桐原の意志とは無関係に”絵から抜けだし、襲いかかってくる。

 推奨PCは花穂のクラスメート、学校の美術教諭、《Anchors& Ships》(以下《A&S》)関係者。

◆DATA

《タイラント》「桐原 隗」
【強度/制御/反応】3/8/5
[結界強度]70
[武器威力]+5
保有アクセス:《スケアリーモンスター》《スローターハウス》《ファイズセンス》

 桐原本人には戦う能力はない。 《スケアリーモンスター》は絵の中の鬼が使う能力である。
 鬼は彼の意志とは無関係に、自己防衛本能から襲いかかってくる。つまり、桐原の説得に成功しても結局戦闘にはなる。
 《スローターハウス》《ファイズセンス》は、画家らしい演出をさせる際の使用を想定。  使用パワーレベルは1〜2。

主要NPC「杉田 花穂」
[結界強度]0
[感覚系]の一般人判定に+3修正

 高校の美術部に所属する大人しい少女。技術はさほどでもなかったが、絵を描くのが大好きだった。
 しかしある日を境に急に絵のタッチががらりと変わり、あちこちのコンクールで高い評価を受けるようになる。
 情報収集を行えば、それとともに彼女の言動が沈みがちになっていったことが、友人たちの口から聞ける。
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■♯2 「ジュリエットの檻」


『さあ、演じなさい。心の限り、命の限りね。』

 大手芸能会社に譲渡されることが決まった小劇場「れんげ座」。
 この劇場で禁忌となっていた劇『ロミオとジュリエット』が再び上演されることとなった。舞台稽古が始まるようになってから、ジュリエット役のアイドル、 早坂 愛理(はやさか・あいり)への嫌がらせとも思える怪異は続き、ついに愛理は行方不明になる。

 PCは『れんげ座』でアルバイトをしており、この怪異を起している犯人の正体が《イモータル》なのではないかと疑う。《A&S》は独自に この事件に気づきPCたちに調査を命ずる。

 愛理をさらった犯人はこの劇場で二十五年前上演された「ロミオとジュリエット」に出演した女優、古宮 藍子(こみや・らんこ)である。
 かつて藍子はジュリエット役を同期のライバル草間 静歌(くさま・しずか)と取り合い、勝利した。だが、ロミオ役の俳優・高遠 欣哉(たかとお・きんや)をめぐる恋の競争には敗れ、高遠を静歌に取られてしまう。
 これを自らの演技力の未熟のためと思いつめた藍子は失踪。以後舞台をかたどった《異界》を構築した《タイラント》となった。

 藍子の目的は「ジュリエット役の女優を鍛える」ことである。真の行動原理は過去の自分への嫌悪からなのだが、藍子はこれを『善意』でやっているのだと思 い込んでいる。
 また、藍子は、高遠を得られなかった自らへの苛立ちを、被害者にぶつけることで解消しているため、被害者の演技力がどれだけ上達したとしても、満足する ことはない。
 藍子が被害者を解放するのは、レッスンに耐えきれなくなり「発狂」もしくは「死亡」した場合のみ。
 なお、藍子による女優の拉致は過去に数度起きている。「れんげ座」で『ロミオとジュリエット』が封印されたのは、そのためである。

 推奨PCは他に、ロミオ役の俳優、愛理の付き人など。

◆DATA

《タイラント》「古宮 藍子」
【強度/制御/反応】6/6/4
[結界強度]65
[武器威力]+10
保有アクセス:《シャープエッジ》《ドッペルゲンガー》《ハニーボイス》《ナックルトーク》

 藍子の外見は、手に短い鞭を持った、典雅な初老の女性。
 非常に指導熱心であり、指導者としても有能。しかしレッスンや藍子に背いた時の懲戒内容は常軌を逸する。藍子は《ドッペルゲンガー》《ハニーボイス》の 《アクセス》で、姿形は自由自在。
 不利時は、生来の演技力で改心したように振る舞い、逃走する。藍子の葛藤を指摘・解消しない限り、事件は解決したことにならない。
 戦闘になると、彼女は《ナックルトーク》と《シャープエッジ》を宿した手の鞭で、敵対者の心を斬り裂く。
 使用パワーレベルは1〜2。

重要NPC「早坂 愛理」
[結界強度]0
[行動系]の一般人判定に+3修正

 大手芸能プロダクションに所属する、売り出し中の新人アイドル歌手。
 今回のジュリエット役は明らかに話題作り先行の抜擢であり、演技力は皆無。
 藍子にさらわれ、彼女の《異界》の中で想像を絶するしごきを受けている。
 放置しておけば、いずれ変わり果てた姿となって『れんげ座』内で発見されることになる。

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■♯3 「パッチ・ワーク」


「見ヨ! 我ハ美ノ体現者ナルゾ」

 一月のある日、町外れにある丁里(ひのとり)神社の境内で体の一部分を切り取られた女性の変死体が相次いで発見された。犯人の手がかりはなく、一 見、被害者に共通点はない。《A&S》は、現場に残されていた微かな《時紋》を証拠に事件を《タイラント》絡みと断定、PCに解決を指示した。

 調査の結果、以下の情報が手に入る。

 これらの情報が集まった頃、PCの一人(高校生)は、クラス行事で丁里神社へ初詣したおりに、級友、黒澤 優佳(くろさわ・ゆか)も同じおみくじをもっていたことを思い出す。彼女は学校どころか地域でも評判の美少女であった。
 時を同じくして優佳は失踪。犯人である《タイラント》の《異界》への《うさぎ穴》は、丁里神社の御神体(鏡)に重なるように存在する。
 《異界》の内部は長い廊下と幽玄な能舞台のような造りで、篝火が焚かれている。その正面には若い女の面を着け、被害者から奪った肉体を綴った身に、金糸 銀糸装束の《タイラント》喜媛命(きえんのみこと)が待ち受けている。彼女は最後に優佳の「顔」を手に入れることで完璧な美女となるつもりなのだ。

 《タイラント》の行動原理は「自らの美を保つこと」。それが天命と狂信している。このため、自身の行為に一切の、罪の意志はない。
 その正体は、かつてこの地で自らの美を保つために他の娘を殺めた女性の妄念である。凶行が発覚し、村人に追いつめられた彼女は炎に身を投げ焼死したの だ。
 丁里神社は、彼女が死してなお村に祟ることを恐れた村人達がその魂を鎮めるために建立したものである。これは、完全に記録から抹消されており、神社の宮 司ですら知らない事実である。

 推奨PCは、神社の家の子弟、優佳のクラスメート、優佳の学校の新聞部員や教諭など。

◆DATA

《タイラント》「喜媛命」
【強度/制御/反応】6/12/3
[結界強度]70
[武器威力]+20
保有アクセス:《ティア・ディメンション》《クールアイズ》《ハニーボイス》《ハイドインシャドウ》

 彼女は《ハイドインシャドウ》で背後から襲いかかり、《ティア・ディメンション》で体の一部分を切り取って集めていた。
 PCたちを見ると《ハニーボイス》でささやきかけて《クールアイズ》を使い、無理矢理にでも自分の美しさを褒めさせようとする。  使用パワーレベルは2〜MAX。

《タイラント》の僕「大蛆虫」
【強度/制御/反応】2/なし/2
[結界強度]30
[武器威力]+4

 《タイラント》が作りだした巨大な蛆虫。《タイラント》が飽きて廃棄した体のパーツを処理する。  使用パワーレベルは1。

重要NPC「黒澤 優佳」
[結界強度]0

 近隣の高校にまでファンクラブができるほどの美少女。
 本人はその美貌を鼻に掛けることはない(自覚はしているが)、分け隔てのない性格。

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■♯4 「最後の卒業式」


「ぼくは、こうして机について、授業を受けてみたかったんだ」

 過疎の進む山間の村、大山村。百年の歴史を誇る、松波小学校大山分校は学校の統廃合により、この三月で廃校が決定した。
 その卒業式の席上、来賓の一人村議会議員の梶山 貢(かじやま・みつぐ)氏が祝辞で「老朽化した校舎は取り壊すことになります」と付け足す。
 その時、体育館が雷に打たれたように激震し、校舎は創立当時の姿を取り戻す。そして、その場にいた来賓も、教師も、父母も全員『小学校へ入学したとき』 の姿に戻ってしまった。

 これは、「自らが壊される」と聞いた校舎が、その衝撃によって《タイラント》化し、起きた現象である。
 校舎は、自らを擬人化した少年・松波(まつなみ)コウを子供達の中に出現させる。コウは、《イモータル》だったため子供化しなかったPCに興味を持ち、 話しかける。
 コウは無邪気にこれから受ける授業が楽しみだと語る。この時のコウには、他の子供と一緒に遊んだり、授業を受けることしか意識になく、その他のことは全 て忘れている。
 PCは、コウに、自分の正体や運命、自分がしていることの危険性を納得させなければならない。
 コウは素直な性格なので、PCが説明すれば、自分の正体を思い出すが、自分のしていることの危険性については、「そんな悪いことはしていない」と戸惑い を見せる。
 また、校舎が取り壊されることを教えると、コウは「そんなのやだよ」と叫んで校舎へ逃げ込んでしまう。
 PCとコウの鬼ごっこが始まり、捕まえかける毎にコウの持つ記憶が再生される。
 捕まると、コウはうなだれ、「みんなとお別れしたくない」と言ってしくしくと泣き出す。

 このシナリオの目的は「《タイラント》を倒す」ことではない。コウを戦闘で倒してしまうと、子供化してしまったNPCたちは元に戻らない。
 「コウに校舎を壊すことを納得させる」あるいは「校舎を何らかの形で二次利用(あるいは保存)することを約束する」など、コウが納得する形での校舎の処 遇が決まると、コウはNPCたちを元に戻し、解放してくれる。

 推奨PCは松波小学校の関係者や来賓、卒業生、児童の父兄など。

◆DATA

《タイラント》「松波コウ」
【強度/制御/反応】2/12/6
[結界強度]40
[武器威力]±0
保有アクセス:《スローターハウス》《スィートアロマ》《タップビート》《ファニー・ブリット》

 コウは、性格上攻撃を行わない。せいぜい《ファニー・ブリット》でチョークや黒板消しを飛ばす程度である。
 《スローターハウス》は校舎内の再現に、《スィートアロマ》は給食のにおいや牛乳ワックスの匂い、《タップビート》で、かつて流れていた掃除のBGMや チャイムを再現するためのもの。  コウの服装はかすりの着物に白ズボン、性格は「ちょっとしたいたずらもする小学1年生」。  使用パワーレベルは0〜1。

重要NPC「梶山 貢」
[結界強度]0

 開発推進派に属する壮年の村会議員。彼も大山分校の卒業生であるが、古い校舎を取り壊し、村おこしのための新しい施設を作るのが村の発展のためと信じて いる。
 コウの力で子供になった後は、多少学校に対する子供の頃の幸せな思い出が戻っている。校舎を残すことでより村のためになるという根拠をPCたちが提示で きるのであれば、校舎保存に賛成してくれるかもしれない。
 また、プレイヤーが暴走してサブGMとなった場合や、[ベクトルカード]の効果でNPCに任意の行動を取らせられることを利用して彼の言動を操作し、校 舎を取り壊さない方向へ持って行くことも可能である。

return

■♯5 「終夜遊園地」


「ここにはたーのしいコトがいっぱいじゃぞ?」

 PCの1人には病弱な幼い妹、沙羅(さら)がいる。そんな彼女が久しぶりに退院し、家に帰ってきた。
 そんなある夜、家から離れた場所で、パジャマ姿の子供の手を引く沙羅の姿が目撃される。沙羅は『不思議の国のアリス』を思わせるエプロンドレスを着てい た。兄弟であるPCには、病弱で走ることもできない沙羅が、そんな深夜に、しかも見慣れない服を着て外出するとは考えられない。
 しかし、沙羅の部屋を調べると、彼女の姿は部屋から消えていた。
 《ホワイトアウト》を行うと、沙羅のベッドの傍らには、ぽっかりと異世界への通路である《うさぎ穴》が開いている。
 《うさぎ穴》を通って《ホワイトアウト・プレーン》へ出ると、丸ごと遊園地のような《異界》に、沙羅が走って入って行くのが見える。

 《異界》には様々な遊具があり、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
 中には、沙羅と同じ病室にいた、寝たきりで動けないはずの子供などもいて、元気に走り回っている。
 沙羅に追いついて事情を聞くと、ここは体調を心配せずとも思いきり遊べる天国で、お菓子も食べ放題なのだ、という。
 沙羅は少し前からこの《異界》に出入りしており、寂しそうにしている子どもや大人を連れてくる大役である『親善大使』をこの国の『王様』に任命されてい るのだ、と誇らしげに答える。
 PCがお菓子のお城にいる『王様』に謁見すると、『王様』は誠心誠意、PCをもてなそうとする。が、それをPCに拒絶されると、態度が豹変し、兵隊と共 に襲い掛かってくる。

 この世界の《タイラント》である『王様』の正体は、壊れて捨てられた王様型のクルミ割人形である。
 彼の行動原理は、『彼』が自らが作られた目的である「人間の役に立ち、人を楽しませること」。ただし、この《異界》は実質、物を食べない『クルミ割り人 形』である彼が創ったため、この《異界》由来の食物には栄養がない。よって長期間ここにいれば、苦しみのない餓死が必ず訪れる。《ブルーウォーター》など の[感覚系]アクセスか、[感覚系]の一般人判定で達成値12を出せば、そのことがわかる。

 推奨PCは沙羅の兄や姉とその友人、沙羅の担当医師など。

◆DATA

《タイラント》「クルミ割人形の王様」 【強度/制御/反応】4/10/2
[結界強度]100
[武器威力]+4

保有アクセス:《ファニー・ブリット》《スラップスティック》《タップ・ビート》《ルーニークラウン》

 《ファニー・ブリット》《スラップスティック》を使ってキャンディの杖で殴りかかってきたり、クラッカーを破裂させたりと、かわいらしく攻撃してくる。 動くたびに《タップ・ビート》で妙な擬音が発生する。《ルーニークラウン》はコミカルな動きを加えるために使用。使用[パワーレベル]は2〜MAX。
 なお、戦闘中に《タイラント》が[パワーレベル]MAXを使用するか、倒されるかした場合、自身が作った世界を維持しきれなくなって、大量にベッドが並 べられた地下室があらわになる。その上には骸骨が寝かされている。これは、ずっとこの世界で過ごした結果、餓死した人々の末路である。だが、《タイラン ト》は人形なので人の死を理解できず、「みんな幸せそうにぐっすり眠っている」という認識しか持っていない。彼は「遊び場で寝ていても、うるさくて眠れな いだろう」という親切心で、手下を使って、倒れた人を地下のベッドに移動させていたのだ。PCがそのことの問題点を指摘するなら、説得は可能。
 説得できた場合、戦闘なしで《タイラント》が作りだした《異界》は崩壊する。
主要NPC:「(PCの名字) 沙羅」
[結界強度]0
[感覚系]の一般人判定に+3修正
 PCの妹。生まれつき病弱で、1年のほとんどを病院のベッドの上で過ごしている。病気のせいで、少し運動をしただけですぐ息が上がって熱を出し、動けな くなってしまう。そのため、いつも「他の子供のように外を自由に走り回りたい」と兄(姉)であるPCに漏らしていた。
 彼女を説得するには、上記に述べた「この世界の真の姿」を彼女に見せ、このままこの世界に留まることは死に繋がることを理解させる必要がある。もし彼女 を説得できないまま《タイラント》を倒してしまうと、彼女は「この世界にいるほうが自分は幸せだ」と言い張り、世界の崩壊と共に《ホワイトカオス》に引き ずり込まれてしまう。
 なお、彼女は《イモータル》ではない。《タイラント》によって《異界》へ招き入れられ、『親善大使』として一時的に《うさぎ穴》を通り抜けられる能力を 与えられているだけである。
return

■♯6 「二人のための協奏曲」


「最高の演奏会を開くのだよ。最高の、ね」

 日本海上空一万メートルで、ドイツからのジェット旅客機が忽然と消え失せた。そのジェット旅客機には天才バイオリニストとの名も高い沢渡 幸秀(さわたり・ゆきひで)が乗り込んでいた。
 沢渡の恋人であるピアニスト名瀬 瑞穂(なせ・みずほ)と共に空港まで沢渡を出迎えに来ていたPCたちの元に、《Anchors&Ships》から連絡が入る。沢渡が乗った旅客機 の航路上に巨大な《うさぎ穴》が出現し、そのまま吸い込まれた疑いがある、というのだ。

 緊急を要するため、《Anchors&Ships》は即座に飛行機をチャーターし、その場にいたPCたちに救出に向かうよう要請する。現場に急 行すると、ぽっかりと開いたジェット旅客機を飲み込むほど巨大な《ウサギ穴》の向こうには、巨大な音楽堂が見え、その傍らに姿を消した旅客機が鎮座してい る。
 音楽堂の中では、世界各地で失踪したとされている名演奏者たちがオーケストラを編成し、演奏会が開かれていた。その中には沢渡の姿もあった。観客となっ ているのは、飲み込まれた旅客機の乗客である。プログラムを見ると、1曲が終わるたびに新たな曲が追加され、いつまでたっても演奏会が終わることはない。 観客の中には、飢えや渇きを訴え、体調を崩した者も出始めており、このままでは最悪の事態が発生してしまう。

 この《異界》の《タイラント》は、大沢 貴俊(おおさわ・たかとし)、大沢 貴之(おおさわ・たかゆき)という兄弟である。
 この兄弟は戦後まもなく消息不明になった高名なクラシック評論家で、「最高の演奏会を作りたい」貴俊と、「最上の演奏会会場を運営したい」貴之が利害を 一致させたことで世界を成立させている。彼らは、どんな演奏が行われたとしてもその出来映えに納得できず、世界中から著名な演奏家と観客をさらって補充し ては演奏会を繰り返しているのだ。
 大沢兄弟は沢渡に加え、著名なピアニストである瑞穂を加えることで、完璧な演奏会を完成させようと企てている。PCたちが彼らの目論見を阻止しようとす るなら、二人揃って立ちはだかってくる。

 推奨PCは沢渡の弟弟子や、沢渡の友人である《Anchors&Ships》インストラクターなど。

◆DATA

《タイラント》「大沢 貴俊/貴之」
【強度/制御/反応】5/10/2
[結界強度]80
[武器威力]+3

保有アクセス:《スケアリーモンスター》《ブルーウォーター》《ファイズセンス》

 大沢兄弟のパラメータは二人で一人分として扱う。《スケアリーモンスター》は戦闘時の攻撃手段(怪物化するわけではないことに注意)。
 《ブルーウォーター》《ファイズセンス》は彼らの音楽を含めた美的センス、音楽堂の造形の優麗さの演出時に活用して欲しい。例としては、『バロック様式 の建物』や『計算し尽くされた音響効果』、『秀逸な選曲』など。
 彼らの当初の目的は「人々の為の素晴らしい演奏会」の実現である。しかし現在の目的は「自らの為の素晴らしい演奏会」に変質。この歪みを指摘できれば論 破は可能である。
 説得に成功した場合、彼らの歪んだ理念の結晶である音楽堂が自我を持ち、《ホワイトカオス》に飲み込まれたくないと暴走、《タイラント》二人を取り込ん で怪物化し、襲いかかってくる(データは上記と同じ)。音楽堂を倒すと、《タイラント》二人を解放できる。
重要NPC「沢渡 幸秀」
[結界強度]0
[感覚系]アクセスに+9修正
 海外の著名なコンクールで何度も優勝した、世界でもトップクラスのバイオリニスト。温厚で穏やかな性格をした名瀬 瑞穂の恋人。
重要NPC「名瀬 瑞穂」
[結界強度]0
[感覚系]アクセスに+9修正
 国際的に有名なピアニスト。沢渡 幸秀の恋人である。大沢兄弟は当初、彼女と沢渡を同時に拉致することを計画していたが、飛行機には沢渡しか乗っていなかった。
return

■♯7 「鯉のぼりの逆襲」


「なぜ我々は捨てられる、なのだ?」

 使い捨ての鯉のぼり。それがある日意識を持ち、《タイラント》となった。彼(?)は不燃ゴミ集積場上空に《うさぎ穴》を開き、鯉のぼりの王国を作 る。そこは鯉のぼりが自由に大空を泳ぐことの出来る世界、永遠に5月5日が続く楽園であった。
 《タイラント》はさらにその能力で東京中の鯉のぼりを自らの《異界》(ネヴァーランド)に呼び寄せる。PCの弟(妹、子供も可)が、幼稚園で作った手書 きの鯉のぼりも空の彼方に飛びさってしまった。この日は保護者参観も兼ねていたため、園児の保護者の一人、大月修司がその光景を録画しテレビ局へ投稿。こ れをPCは放送当日に大月の妻から聞かされる。
 《Anchors&Ships》としては、映像が放映されることは「世界の秩序を乱す行為」である。PCたちはテレビ局に潜入し、 《Anchors & Ships》が用意したフィルムと差し替える、など、何らかの手段を用いてこの放映を阻止しなくてはならない。

 放送が阻止された後、《Anchors&Ships》は引き続き、PCにゴミ集積場上空に開いた《うさぎ穴》の調査を依頼する。《うさぎ穴》の 向こうにある《異界》は青い空の下、足下に一面の瓦屋根が広がる不思議な空間。これは、鯉のぼりは歌の通り「屋根より高く」なくてはいけないという《タイ ラント》の思想に基づくものである。また、《タイラント》の持つ《アクセス》、《タップ・ビート》によって、常に《時間世界》中に「鯉のぼりの歌」が流れ ている。
 集められた鯉のぼりたちはどうせ5月5日が終わったら捨てられてしまうし、この世界にいる限り自由に空を泳げるので大半は喜んでいるが、PCの弟(妹) が作った鯉のぼりなど、一部、持ち主の所に帰りたがっているものもいる。
 《タイラント》である鯉のぼりの王は、全ての鯉のぼりがこの世界で暮らすべきだと考えているので、鯉のぼりを連れ戻そうとすると、PCたちを妨害しよう とする。
 しかし鯉のぼりの王と対決半ばで 《異界》が震撼しているのを感じる。この《異界》は、時間質量が足りないため《ホワイトカオス》に飲み込まれようとしているのだ。このままでは鯉のぼりた ちどころか、PCまで《ホワイトカオス》に堕ちてしまう。
 鯉のぼりの王は戦いの中断を申し入れ、他の鯉のぼりたちと一緒になって《異界》を引っ張り揚げようとする。PCが手伝えばこの危機は回避可能。
 PCが《Anchors&Ships》にことの顛末を報告すると、日本支部長の小津 香澄は社会的・時間質量的影響の小ささを理由に黙認を許可。ただし、《うさぎ穴》を開く場所を目立たない場所に限定すること、《異界》に招き入れるのは捨 てられてしまった鯉のぼりに限定することを《タイラント》に約束させる。

 推奨PCは《Anchors & Ships》インストラクターの他に、幼稚園や保育園へ通う弟妹がいる学生、《Anchors & Ships》の協力者である保育士など。

◆DATA

《タイラント》「鯉のぼりの王」
【強度/制御/反応】1/8/6
[結界強度]100
[武器威力]+2
保有アクセス:《ウェイキーリキッド》《テンペスト》《タップ・ビート》《ジャンピングジャック》

 鯉のぼりの王は、妨害するさいに人間を痛い目にあわせる方法を考えるが、あまりピンとこないことしか思いつかない描写を入れること。《ウェイキーリキッ ド》で水流に飲みこませたり、《テンペスト》で風を吹かせたりするが、PCに実害を与えると、びっくりしてやめてしまう。なお、説得等で《タイラント》が 戦闘を放棄した場合、即《異界》の崩壊が始まる。
 
return

■♯8 「マインド・マップ」


「心の地図さえあれば、悩みは消えて解決方法だけ残るのだよ」

 市内で、中高生の自殺事件が多発していた。遺書には一言「もう知りたくない」とだけ記して。事の不可解さに《Anchors & Ships》は、事件の調査を開始。その結果、被害者たちにはある共通点があることが判明する。彼らは、ジュニアカウンセリングルーム、略称《JCR》と いう名の心理学研究所の会員だったのである。
 《JCR》の所長、渋澤 利雄(しぶさわ・としお)はT大学の名誉教授で、国際的に認知された学者である。彼の研究の最大の課題は「人間が感情を発生させるメカニズム」であった。
 《Storm Crusade》は彼の研究が「一般人の《イモータル》への覚醒、及び《イモータル》の《タイラント》化の仕組みを解明できる」と考え、彼を支援。渋澤に 《ホワイトカオス》から拾い上げられた遺失技術の一つを与え、資金援助を行って《JCR》を設立させた。
 《JCR》は会員にカウンセリングを行い、会員自身の『心の地図』を描かせる。その手法は《Storm Crusade》が、組織に協力を申し出た《タイラント》を通じて《ホワイトカオス》から拾い上げた技法で、未完成である。
 その技法を用いられ、自らの心の中身がすべて解明された(と思いこんだ)結果、被験者は自分の未来に希望を持てなくなり、思い余って自殺を図ったのであ る。
 なお、『心の地図』を描く技法は、『光のディスク』の形で具現化している。ディスクは《Storm Crusade》に協力する《タイラント》の協力なしでは制作できないため、このディスクを破壊すれば、事件の再発を防ぐことができる。

 推奨PCは《JCR》に通っている友人がいる中高校生、被害者が通っていた学校の教諭、保健医、渋澤のかつての教え子、《JCR》に通う会員など。
 なおこのシナリオには《タイラント》は登場しないが、必要だと思うなら渋澤に《異界》の知識を与えた《タイラント》を黒幕として登場させてもよい。

◆DATA

《イモータル》「渋澤 利雄」
【強度/制御/反応】5/12/4
[結界強度]60
[武器威力]+10
保有アクセス:《ウィスパリングパスト》《ブルーウォーター》《ニューロマンサー》《ビーイントラブル》《ハニーボイス》

 国際的に有名な心理学者で、T大名誉教授。「人間の心は完全に数式化できる」という信念の元、人生の大半を研究に没頭してきた。
 《Storm Crusade》との接触を機に《イモータル》として覚醒。真理に近づくためには手段を選ばない《Storm Crusade》の思想に共鳴し、熱烈な信奉者となった。
 現在の彼は自らの研究を完成させることだけに妄執とも言える情熱を燃やしており、《JCR》で発生している少年少女の自殺についても、「実験を完成させ るためには仕方のないことだ」の一言で切り捨ててしまう。
 外見はよれよれの背広を着た偏屈な老人。攻撃は《ハニーボイス》を用いる。描写としては、「攻撃的な講義口調」を用いた音波攻撃である。
 ディスクがダメージを受けた場合は《パッシブウォール》をディスクに対して使用する。
「光のディスク」
【強度/制御/反応】3/20/2
[結界強度]30
[武器威力]+5
保有アクセス:《サンダークラップ》

 《ホワイトカオス》から拾い上げられた遺失技術の産物。
 自己防衛機能を備えており、攻撃を受けると自動的に《サンダークラップ》で電撃を発生させ、攻撃を仕掛けた相手に反撃するようになっている。
return

■♯9 「ブルー・マリッジ・ブルー」


「このお日取りでしたら、宜しいかと存じます」

 結婚披露宴最中の会場から花婿が消える、そんな事件が美浦市内で頻発した。
 事の事件性を重く見た《Anchors&Ships》は調査を開始。結果、花婿が結婚式場から披露宴会場へ移動する最中に失踪していること、式 は必ず神前式であり、新郎は黒を基調とした紋付きの和装であったことが判明する。
 事件のあった結婚式場をくまなく調べると、神殿の後ろ側に《うさぎ穴》の痕跡を発見できる。小津 香澄はおとり調査を命じ、模擬結婚式を行うことを宣言。
 PCたちが待ちかまえていると、明らかにPCの手配外の巫女装束のスタッフが現れ、新郎に「探しました。お式はこちらです」と声をかける。巫女を取り押 さえようとすると、他に二人同じ装束の若い女が現れて、《うさぎ穴》へと逃げ出す。
 《うさぎ穴》の向こうは平安時代を思わせる御殿だった。そこでは今まで失踪した新郎たちが酒食をしながらくつろぎ、談笑している。新郎たちはここが現実 世界と違うことを承知しているが、こちらに来てから大して時間が経っていないと認識している(マリッジブルー気味で愚痴を言い合っている新郎たちのロール プレイをサブGMとして振るのもよい)。  PCが先ほどこちらに逃げ出した女性を見つけ問いただすと、会ってもらいたい人物がいると切り出される。  会ってもらいたい人物とはこの《異界》の《タイラント》の片割れ──おひな様こと雛姫だった。
 雛姫が言うには、PCたちの世界へ行ってしまった夫、お内裏様を三人官女に探しに行ってもらっていたのだという。しかし、こちらの世界とPCたちの世界 では物の見方が歪んでしまうらしく、いくら探してもお内裏様らしき人物を発見することができない。これは、と思って連れてきたのが、今回の被害者である新 郎たちだったという。
 「筋は違うかも知れないが」と前置きをして、おひな様はPCたちにお内裏様を捜して欲しいと頼み込んでくる。PCが新郎たちを連れ戻そうとすると、《タ イラント》は、勘違いで連れてきたとはいえ、新郎たちは大切な「お客さま」であり、ひな祭りのお開き前に帰られては縁起でもない、と阻もうとする。
 捜索の結果、お内裏様はある結婚式会場でウェディングコンサルタントをしていることがわかる。 PCが雛姫の元へ帰ることを促すと、彼は仕事に後ろ髪を 引かれるような素振りをしながらも頷く。
 推奨PCは《Anchors&Ships》インストラクター、失踪した新郎の友人や親族、警察官、お内裏様の勤め先の人間など。

◆DATA

《タイラント1》「おひな様」
【強度/制御/反応】3/7/4
[結界強度]70
[武器威力]+6
保有アクセス:《シューティングスター》《ファニーブリット》《スイートアロマ》

《タイラント2》「お内裏様」
【強度/制御/反応】6/6/3
[結界強度]80
「武器威力]+12
保有アクセス:《スラップ・スティック》《ニューロマンサー》

 ひな祭りのおひな様とお内裏様。
 『この世界』で桃の節句が広まった頃から存在する《異界》・《三月三日》で、普段は五人囃子や三人官女と共に、ひな祭りかその準備のための生活をしてい る。
 しかしお内裏様は周囲の者たちが忙しく働いている中、自身だけ手持ちぶさたであった。
 後ろめたく思ったお内裏様は発作的に家出して『この世界』にやってきた。そして、《異界》から『この世界』を観察することで長年培ってきた古今東西の結 婚式に関する知識を活かしてウェディングコンサルタントとして就職。おひな様たちには申し訳ないと思いながらも、『この世界』での生活に充実感を覚えてい る。
 二人とも基本的に争いごとを好まないが、自衛のためやむなし、となれば、おひな様はひなあられを武器に《ファニーブリット》で、お内裏様は手の笏を武器 に《スラップ・スティック》で戦闘を行う。
 二人一緒の場合【能力値】は【強度/制御/反応】9/13/7として扱い、雛道具が《シューティングスター》で降り注ぐ。
 使用[パワーレベル]は1〜2。
《タイラント》のしもべ「三人官女」
【能力値】2/4/2
[武器威力]+5
[結界強度]30
保有アクセス:《ウェイキーリキッド》《クールアイズ》《スイートアロマ》

 《タイラント》に仕える三人官女。パラメータは3人とも共通である。
《クールアイズ》を使って花婿たちに警戒心を抱かせないまま《異界》へと連れ出していた。
 戦闘になると手にした銚子(ちょうし)に入った酒を《ウェイキーリキッド》で操って攻撃してくる。
return

■#10 「サンタが街にやってきた」


「さあ、行きなさい。子供たちの夢を護るために」

 サンタクロースが実在した!?
 その正体は、北欧の国で世界の子供たちに「サンタの手紙」を送っていた郵便局員、クラウス老人だった。
 世界中から送られてくるサンタクロースへの手紙への返事を書いていた彼は、ある日、かつて手紙をくれた日本の子供が大きくなって送った手紙を目にする。
「本当にサンタクロースがいてくれたら、世界の救われない子供たちに夢をあげられるのに……」
 その文面にショックを受けた彼は、自らがサンタクロースになることで子供に夢を与えたいという想いが高じて《タイラント》化した。
 彼は自ら作りだした《異界》でプレゼントを作り、《盟友》の「赤鼻のトナカイ」と共に美浦市上空に現れる。全ての子供に「夢」を届けるために。
 しかし、《Storm Crusade》は、「一般人が《タイラント》化した珍しいサンプル」としてクラウスに目を付け、捕獲を図る。《Storm Crusade》のエージェントに襲撃を受けたクラウスはそりから落ちて行方不明になってしまう。
 そんな折、PCの一人がクラウスとはぐれた「赤鼻のトナカイ」を保護する。
トナカイの話を聞いた《Anchors&Ships》日本支部長・小津 香澄は、クラウスを「倒すべき存在ではないし、そのままでは《ホワイトカオス》に堕ちてしまうだろう」と彼を保護するためにインストラクターを派遣する。
 クラウスを探し当てると、追いついてきた《Storm Crusade》エージェントとの戦闘になる。
 しかし、クラウスに残された時間はあとわずかしかない。彼は病魔に冒され、すでに余命いくばくもない身であった。その上、自らの肉体から《時間質量》を 削ることで『この世界』の《時間質量》を消費することなく、子供たちへのプレゼントを生み出しているのだ。
 果たして、聖夜に奇跡は起きるのか!?

◆DATA

《タイラント》「クラウス老人」
 【強度/制御/反応】3/8/5
 [結界強度]60
 [武器強度]±0
 保有アクセス:《スピードマスター》《タップ・ビート》《ストレイシープ》

 赤い防寒具を着た、恰幅のよい白いヒゲの老人。人々が持つ「サンタクロース」のイメージそのままの外見である。《イモータル》の力を使った反動と、体内 に巣くう病魔とによって、防寒具の下はがりがりに痩せている。
《盟友》「赤鼻のトナカイ」
 【強度/制御/反応】(クラウスの達成値による)  [結界強度](クラウスの達成値による)
 [武器強度](クラウスの達成値による)
 保有アクセス:《ジャンピングジャック》《ブライトライト》
 無害な姿:トナカイ
 本来の姿:鼻の頭がピカピカ赤く光るトナカイ(二足歩行可)

 クラウスの《盟友》。人語を操ることができる。クラウスの心意気に感じ入り、彼を全力でサポートしている。戦闘の際はピカピカ光る赤い鼻からビームを出 して攻撃する。
《Storm Crusade》エージェント 鷹羽 嶺示
 【強度/制御/反応】4/12/3
 [結界強度]120  [武器強度]+8
 保有アクセス:《ガンアクション》
  《ニューロマンサー》《ルーニークラウン》
 《Anchors&Ships》の敵対組織・《Storm Crusade》のエージェント。
 『この世界』の未来のためなら何をしても許されると思っている狂信者であり、まず説得は不可能。特に《Anchors&Ships》の人間が場 にいるなら、確実に戦闘になる。
 PCの強さによってはエージェントを複数登場させたり、数値を調整すること。保有《アクセス》は好みで変更してもよい。
return

■♯11 「逢瀬が刻」


「伝説? 怨霊? 全ては偶然に過ぎない。くだらないことを」

 《九曜家》関係者の子弟も多く通っている「誠真学園」。伝統あるその学園で、全生徒のあこがれの的であった女生徒、園田 百合(そのだ・ゆり)が古い時計台から謎の転落死を遂げた。
 それをきっかけに学園内で「惨殺された小動物の死骸がばらまかれる」などの猟奇事件が起き始める。PCたちが事件を調べていくと、80年前にも、同様の 事件が起きていたことがわかる。  そしてついに、80年前と同じように生徒の中に犠牲者が出る。時計台にはりつけにされた女生徒の死体……。被害者は園田 百合の従妹である、宮崎 恭子(みやざき・きょうこ)であった。

 園田 百合の家は、古くから《九曜家》に仕える《能力者》の家系だった。誠真学園の敷地には、かつて《九曜家》が邪悪な妖物「刻鬼」を封じたという言い伝えがあ り、園田家の一族はその封印を守る役目を言いつかっていたのだ。
 そして、刻鬼は封印される間際、予言めいた言葉を残していた。「百合と桔梗と女郎花が枯れる時、我は甦る」。調査すれば、園田一族の血を引き、名前のど こかに「ゆり」「ききょう」「おみなえし」の音を持つ娘を、刻鬼を封じた土地(時計台のある場所)に生け贄として捧げれば封印が解けると判明する。

 「百合」「桔梗(みやざ(き・きょう)こ)」が枯れた今、残るは「女郎花」しかない。
 誠真学園には、もう一人、園田家の遠縁の娘、安部 静子(あべ・しずこ)が通っていた。事件とは無関係と思われていた彼女だったが、調査によって衝撃の事実が明らかになる。実は彼女が名乗っていたのは、婿 入りした父方の姓だったのだ。
 彼女の本当の名字は「御水苗」……。

 折しも、すでに二つの封印が解け、ある程度自由を取り戻した刻鬼が、学園の教師、九鬼 将摩の姿を偽って静子を時計台に誘い出していた。
 駆け付けたPCが正体を見破ると、刻鬼は変身を解き、本来の姿となって襲いかかってくる。
 推奨PCは誠真学園に通う《九曜家》関係者の子弟や、誠真学園の教諭、もしくは九曜 珠子の占いで《九曜家》から派遣された《能力者》。

◆DATA

妖物「刻鬼」
【強度/制御/反応】8/9/3
[結界強度]150
[武器威力]+16
保有アクセス:《スケアリーモンスター》《クールアイズ》《ノイズィームーン》《ドッペルゲンガー》

 《九曜家》ゆかりの《能力者》によって封印された人食いの妖物。性格は極めて冷酷で残忍。
 園田 百合の死によって偶然一部の封印が解けた彼は 《ドッペルゲンガー》を使い学園の教師、九鬼 将摩の姿を模倣。自ら封印を解くために宮崎 恭子を手に掛け、さらに安部 静子の命を狙う。
 正体がばれると《スケアリーモンスター》を使い、本来の鬼の姿になって戦う。

重要NPC「園田 百合」
[結界強度]0

 謎の事故死を遂げた「学園のマドンナ」。彼女の死については、全くの偶然である。彼女は学園の教師、九鬼 将摩との恋愛の果て、許されぬ恋に絶望して九鬼と心中を図ったのである。

重要NPC「九鬼 将摩」
[結界強度]0

 百合の恋人だった学園の教師。百合と心中して命を落としたのだが、死体は鬼蜘蛛に食われた上、鬼蜘蛛が九鬼になりすましているため、その事実は誰も知ら ない。生徒に聞き込みを行えば、「人が変わったように冷たくなった」「生肉を食べていた」というウワサを聞くことができる。

重要NPC 「宮崎 恭子」
[結界強度]0

 鬼蜘蛛に惨殺された百合の従妹。
 活発系の美少女で、華やかな百合と合わせて誠真学園の2大マドンナとたたえられていた。

重要NPC 「安部 静子」
[結界強度]0

 園田 百合の遠縁にあたる少女。黒髪で色白の美少女である。母方の姓は御水苗だが、家庭の事情により婿入りした父の旧姓を名乗っている。
 性格はおとなしく、極めて控えめ。

return

■♯12 「悲しみテディ」/原案:神波


「ボクはね、君の、役に立てるよ」

 街で奇妙な傷害事件が発生していた。5〜6歳ぐらいの子供ばかりが、身体の一部だけを怪我して帰ってくるのだ。「赤いリボンをしたテディベアに襲 われた」と子どもたちは言う。あまりの荒唐無稽な内容に、大人たちはまともに取り合わなかった。しかし、警察の調査をあざ笑うかのように、子供を被害者と する傷害事件は増えていく。

 《Anchors & Ships》の協力者であるPCは、小津 香澄の依頼により調査へと乗り出した。その結果、奇妙な事実が判明する。《ウィスパリングパスト》により判明したテディベアの姿は、PCの一人がかつて 引っ越しのさいに紛失した「赤いリボンをしたテディベア」そのものだったのだ。
 ベアの持ち主であるPCは、かつて自分がいじめられたさいに、ベアに対して「××くんにこんな酷いことをされた」と語ったことを思い出す。そして被害者 である子供たちの怪我は「PCがベアに語った被害」とほぼ同じ内容だった。異なる点としては「少しだけ強くやり返されている」ということ(*1)。
 さらに、被害者の子供たちは「かつてPCをいじめた子供たち」に似た姿形をしていることもわかってくる。ベアの持ち主であるPCと、彼(彼女)をいじめ た同級生である他のPCは、今では和解し、友人関係となっているが、両者ともに過去の事件を覚えている(*2)。

 そして「ベアに話したこと」への仕返しは、ほぼ終わっていた。ただ一つ「××ちゃんに積み木を投げられて、頭に当たって大怪我をした」という内容をのぞ いて。しかしその出来事は「本当はそうされていない」のに、PCがでっち上げた作り話なのだ。その愚痴に登場した「子供のころの××ちゃん」は、いじめた 側のPC(*3)の妹である、千華にうり二つであった。
 PCたちが千華を見守っていると、近所の公園で《ホワイトアウト》が発生。レンガを手にしたベアが《うさぎ穴》から姿を現す。
 事件解決には「ベアを倒す」、もしくは、持ち主であるPCがベアに謝罪し、PCたちが和解していることをベアに納得させる必要がある。

◆DATA

《タイラント》「テディベア」(*4)
【強度/制御/反応】7/6/4
[結界強度]90
[武器威力]+14
保有アクセス:《スケアリーモンスター》《スローターハウス》《シューティングスター》
このテディベアは「人間が子供から大人になる」ということを理解していないため、説得するには「PCたちとベアとの思い出」などを話すなどして、理解させ る必要がある。
 説得するか、倒した場合、「パステルカラーで彩られたおもちゃ箱」のような、ベアの《異界》は崩壊する。もし説得できたなら、ベアはただのぬいぐるみへ と戻る。小津 香澄に相談したとしても「無害になったのであれば、強いて処分する必要はない」と示唆される。
 戦う場合、ベアは《スケアリーモンスター》で、持ち主であるPCが幼稚園の時に描いた「おそろしいかいぶつ」の姿となって襲いかかってくる。あるいは、 千華を傷つけるために用意したレンガを《シューティングスター》で投げつけてくる。使用[パワーレベル]は1〜2。

重要NPC 「(PCの名字)千華」
[結界強度]0

 PCの妹で、5〜6歳のPCの姿によく似ている。やんちゃ盛りで、男の子たちと一緒に遊ぶ元気な女の子である。とはいえ、動物や植物の世話をいやがらず にするなど、優しい一面も持っている。


*1 例えば「髪の毛を引っ張られて、頭を軽くこづかれた」なら「髪の毛を抜かれて、頭を強く殴られた」という被害となるのである。

*2 このため、前半では、折りを見て、幼稚園時代の回想シーンを入れたほうがよい。
*3 女性PCがいないなら「PCの妹」でも可。

*4 もちろん、テディベアの名前は持ち主のPCが名付けても構わない。
return

■♯13 「デッド・コピー」/原案:でかい人


「ふム、この世界の餌どモは、かなリノ甘い汁を好むようだ……」

 ある日、頭部から血を流しながら彷徨う青年が保護され、病院に担ぎ込まれた。
 彼は自分に関する記憶を完全に失っていた。
 体中に擦り傷や打撲があったことから、医師はなんらかの事故とそれによる頭部への衝撃による記憶障害と診断した。  しかし、《イモータル》であるPCは奇妙なことに気付く。青年の周囲には《ホワイトカオス》に接触した際に発生する痕跡、《時紋》が色濃く残っていたの だ。さらに《フェアリーアイズ》の判定に成功すると(達成値15)、頭の傷周りにだけまた異なった《時紋》が残っていることがわかる。
 調査をすると、青年が保護されたという場所にも同じ《時紋》が残っている。それをたどっていくと、そこには病院で眠っているはずの青年が立っていた。  傷ひとつなく、まるで獲物を値踏みするような瞳でこちらを見る彼は青年本人ではない。

 その正体は青年の姿に擬態している異世界の生命体、“寄生体”である。『この世界』に落ち、世界に適応するための知識を求めた“寄生体”は、たまたま通 りがかった青年からそれを奪うべく襲い掛かった。しかし、青年は“寄生体”の《アクセス》を通じて《ホワイトカオス》に触れ、《イモータル》に覚醒。その 場で暴走を起こした青年は無意識に《アクセス》を使って逃走したのだ。
 寄生に失敗した“寄生体”は、奪った知識とその能力をたよりに仮初めの姿を作り上げた。そして、完全に青年に成り代わるために、青年の残した《時紋》を 追いかけてきたのだ。
 しかし、そこにPCたちがやってきたことから、標的を変更し、手っ取り早くPCの誰かに成り代わるために襲い掛かってくる。

 推奨PCは青年を発見、保護した人物や搬送先の病院関係者、それらに属する協力者から連絡を受けた《A&S》関係者、青年が持っていた物から連絡 を受けた家族や友人など。

◆DATA

異世界の住人 「“寄生体”」
[結界強度]60
[武器威力]+10
保有アクセス:《ヴァンパイア》《ウィスパリングパスト》《ノイズィームーン》《ドッペルゲンガー》
 世界に対して寄生する、一種の寄生虫。
 その世界の生物に擬態し、擬態した相手と入れ替わって繁殖していく(*1)。極めて強い自己生存本能と自己複製本能を持つ生命体である。
 《寄生体》は相手に触れることで(《ヴァンパイア》と《ウィスパリングパスト》の組み合わせ使用)世界に関する情報を引き出し、《ドッペルゲンガー》を 使って擬態を行なう。【能力値】は「記憶喪失の青年」と同じ。
 さらに《ノイズィームーン》で意図的に記憶の混乱を引き起こすことで、効率的に情報を引き出し、操作することが可能。
 《寄生体》にとって記憶とは自分の生活する場所を作るための道具でしかないため、さほど価値を感じていない。よって、それを保身に用いることもないし、 問いただされれば、さも当然のように、青年の記憶が時間がたてば戻ることを話す。
 本来の姿は、不定形の、アメーバ状生物。

《イモータル》 「記憶喪失の青年」
【強度/制御/反応】4/2/4
[結界強度]30
[武器威力]+5
保有アクセス:不明

 《寄生体》に記憶を吸い出されたショックで一時的な記憶喪失に陥っている青年。
 《イモータル》に覚醒してはいるが、その覚醒は不完全である。力の使い方について指導を受けていないので、自分の意志で《アクセス》を使いこなすことは できない。

※1 擬態することで、餌となる生物をおびき寄せ、捕食するのである。しかし、《寄生体》が安定して擬態を続けるためには相手の持つ情報をそっくりコピー する必要があるのだ。

return

■♯14 「迷い児」/原案:でかい人


「なんだよ……弱いのがいけないんだろ?」

 「ねえ、もしかして、力のある人?」突然背後から掛けられた声に振り返ると、世界が白く凍り付いていく。《ホワイトアウト・プレーン》に引き込ま れたPCの足下には、いつの間にか一匹のトラ猫がいた。
 猫がPCの足に触れると「助けてほしい」という思いが頭の中に流れ込んでくる。
 その「トラ吉」と名乗る猫の話は脱線してばかり。苦労しながら要約すると、この近所に最近、猫を傷付ける人間がいるので、見つけて止めて欲しい、という 依頼だった。

 PCが協力を承諾したなら、トラ吉はPCたちを《異界》に連れて行く。そこには小さな祠があり、日当たりの良い祠の前で猫たちが思い思いに過ごし ていた(*1)。トラ吉を介して猫たちに聞き込みを行うと(*2)、「ご飯を探してたら突然ざばーっとされた(水を掛けられ た?)」「バサバサするの(竹箒だと思う……)でバタバタされ(追いかけ回され?)た」「大きいフカフカ(干してる布団?)の上でポカポカ(日光浴?)し ていたらギャーって言われた」などなど、大半は他愛のない話ばかりである。

 しかし、話を聞いていく内に、PCたちは、明らかにいたずらされた跡や、ひどい傷を負っている猫が複数いることに気づく。その猫たちに話を聞く と、手を触れずに「不思議な力で」猫を傷つける少年が近所をうろついていることがわかる。
 その少年、宇土ゆうきは、極めて弱いながらも能力に目覚めていた。日頃鬱屈した生活を送っていた彼は、そのストレスを自分より弱い存在……猫にぶつけて いたのだ。
 しかし、彼は《ホワイトカオス》について何も知らない。このまま力を使い続ければ、間違いなく《ホワイトカオス》に取り込まれてしまうだろう(*3)

 推奨PCは《Anchors&Ships》協力者である近所の学生や、宇土ゆうきの身近な人たち。

◆DATA

《イモータル》 「宇土(うど)ゆうき」
【強度/制御/反応】6/4/4
[結界強度]80
[武器威力]+12
保有アクセス:《テンペスト》

 小学5年生の男の子。気が弱く、いつも下を向いているような少年。その性格が災いして学校でいじめられ、ますます後ろ向きな考え方をするように なってしまった。
 自分よりも弱い相手にだけ強気に出る。

《イモータル》 「トラ吉」
【強度/制御/反応】1/3/6
[結界強度]40
[武器威力]+2
保有アクセス:《シリーウォーク》《ナックルトーク》《スケアリーモンスター》

 トラ柄のジャパニーズボブテイル種。長年生きた猫が《イモータル》として覚醒した「猫又」である。ぱっと見わからないがよく見ると……やっぱりわ からない。シッポが短すぎて。
 《異界》の集会場に集う猫たちのリーダー的存在である。面倒見のよい、義侠心あふれる性格だが、基本的には猫なのでとても気まぐれ。
 集中力が持たず、すぐ会話が脱線する。それも仕方がない。猫だから。

  *1 この《異界》は、昔《タイラント》化した道祖神が作りだしたもの。旅人を休ませるための空間だったが、現在では訪れる旅人もなく、猫 たちの集会所と化している。

*2 集会所にいるトラ吉以外の猫は全て非《イモータル》である。トラ吉の《ナックルトーク》を使って通訳してもらうか、《ニューロマン サー》などの《アクセス》を用いない限りコミュニケーションはできない。

*3 この場面に来るまでに、PCたちとゆうきの間に個人的な関わりを持たせ、PCたちが自発的にゆうきを助けようとする動機を与えておい たほうが話は盛り上がる。例えば、「近所の頼れるお兄(姉)さんであるPCがゆうきからいじめの相談を受け、『強くなれ』と言って逆効果になった」などの シーンを先に入れるなどである。

return

■♯15 「神域乱すもの」/原案:でかい人


「どんな物でもいい、強大な力さえ持っていれば」

 日本の裏の治安を大昔から護ってきた《九曜家》。その《九曜家》に仕えるPCはある日、当主である九曜 珠子から「日穂神社に祀られている《神器》が騒いでいるらしいのですが、様子を見てきていただけないでしょうか」と依頼される。依頼を受けると部屋の出が けに、珠子から「古きよき友へ宜しくお伝えください」と声をかけられる。

 日穂神社に到着すると「裏向きの祭祀を取り仕切る」宮司の出迎えを受ける。
 国内でも大きな規模を持つその神社には三種の神器の一つ、《草薙の剣》をはじめ、さまざまな《神器》が祀られていた。異変について宮司からは以下のよう な情報が得られる。

 禁足地に入ると常にどこかしらに蛇が居て、攻撃的な視線や威嚇音を向けられる。
 最奥まで進むと滝があり、その裏側に隠された祠がある。そこには《神器》・《草薙の剣》が安置されていた。意志を持つ剣によると、数日前から禁足地に侵 入している者がいるという。
 侵入者の正体は、異世界からやってきた間者である。その目的は『この世界』の強力な《神器》を得ること。しかし、目的の品である《草薙の剣》が安置され ている場所を見つけられず禁足地に何度も足を運んでいたのだ。

 侵入者は発見されると、いったん逃げると見せかけて身を隠し、隙があれば《草薙の剣》を手に入れようとする。逃げられない状況になった場合は《草 薙の剣》を奪い、使用することで状況を脱しようとし、死ぬまで抗い続ける。

 推奨PCは《九曜家》に仕える《イモータル》、宮司やそれを補佐する立場の人間。

◆DATA

《イモータル》 「“異世界の間者”」
【強度/制御/反応】8/12/4
[結界強度]120
[武器威力]+16
保有アクセス:《シューティングスター》《ブライトライト》《ニューロマンサー》《ブルーウォーター》《ハイドインシャドウ》《シリーウォーク》

 ひとつの異界の覇権をいくつもの組織が奪い合っている《異世界》の間者。自分の属する組織のために、さまざまな世界の強力な《神器》を求めてい る。任務遂行が全てに優先する考え方なので、自身が死ぬことを気にも留めない。相手の死角から影の刃を飛ばして攻撃する。

《神器》 「草薙の剣(模造品)」
【強度/制御/反応】15/20/5
  [結界強度]200
[武器威力]+30
保有アクセス:《ウェイキーリキッド》《シャープエッジ》《ナックルトーク》《ストレイシープ》
 《盟友》:「くさなぎ」
  《盟友》保有アクセス:《シュラ》《シリーウォーク》

 桐の木箱に納められた長さ約二尺七、八寸(約80センチ)の古代式の剣。
 三種の神器のひとつ《草那芸剣》の模造品。
 模造品とはいえ、儀式にも使われるため高い能力を持つ。禁足地に安置され、同時にそこを守護する役目を《九曜家》より与えられている。

 常に周囲には薄く霞みがかっており、異変を感じると霞が水の蛇(《盟友》くさなぎ)を形作る。
 状況がよくない場合は、自身の分身たる《盟友》くさなぎを出現させ、侵入者を攻撃する。
 また《ナックルトーク》により、PCたちに状況の説明や、指示をすることもある。

 《九曜家》に属する者は、三種の神器の一つ《草那芸剣》の現所有者(九曜 剣)を知っているので《神器・草薙の剣》がその模造品であることを知っている。

return

■♯16 「水の悲しみ」/原案:でかい人


「ありがとう? さよなら!? 嫌だよ……そんなの嫌だ!」

 保護した《イモータル》の訓練を行うべく、《Anchors&Ships》の船が海洋を航行していた。その日の訓練には、一人だけ初顔の 少年・神南 洋太(かなみ・ようた)が参加していた。彼は能力を使うのが初めてだったが、共に訓練を受けているPCたちの助言もあって徐々に力が安定していく。

 しかし、突然少年の眼前に大きな水柱が発生した。その中に現れた異世界の存在に、指導員のPCには見覚えがある。先の大戦中に戦死した同僚指導員 の盟友であった水妖ニクシーだった。
 その指導員は己の最期の時、「自分の手で拾い上げた力だから、自分の手で《ホワイトカオス》に還したい」と考え、「最期まで護る」と嫌がる水妖を無理や り《ホワイトカオス》に還したのだ。

 強い悲しみを抱えたまま水妖は《ホワイトカオス》の中を漂っていたが、懐かしい世界からの《アクセス》、すなわち力を拾い上げる意思に反応して 戻ってきてしまったのだ。強い悲しみにつけ込んだ、憎悪の欠片を抱えたまま。
 水妖は憎々しげに「白き混沌の中待ち続けたが、友は戦いの中滅びたのであろう。かけがえなき我が友の存在しない、このような世界は必要ない! 滅ぼして やろうぞ!!」と言い放つ。

 水妖は、対象を無作為に選び攻撃するが、PCから、先の《大戦》で戦死した召喚者の話が出ると手を緩める。そして、召喚者の意思である「この世界 を異世界からの侵略者から護ること」を語り、説得すると手を止めようとする。
 しかし、水妖が逡巡すると《憎悪の意志》が主導権を取り、逆に攻撃は強まってしまう。  水妖は説得されると、自分を止めてくれとPCに懇願するが、その間も憎悪の意志は攻撃をやめない。

 水妖を倒すと《憎悪の意志》と共に《ホワイトカオス》に戻るが、PCたちが水妖を助ける意思を持って行動した場合は、最期に《盟友》の無害な姿で あるペンダントが召喚した洋太の元に残る。
 推奨PCは先の召喚者の友人である《A&S》インストラクター、訓練に参加する《イモータル》。「水妖を召喚する少年役」は要GM許可。

◆DATA

元《盟友》「水妖ニクシー」
 【強度/制御/反応】10/10/5
   [結界強度]120
 [武器威力]+20
 保有アクセス:《ウェイキーリキッド》《シリーウォーク》《フットルース》

 水の豊かな《異界》に住まう種族。
 本来プライドが高く、滅多にほかの人間には気を許さない。しかし、《大戦》で戦死した召喚者・嘉神 慎(かがみ・しん)に対しては、義務感とも取れるほどに強い友情を持っていた。

 《盟友》のことを思いやった行動とはいえ、召喚者の意志で《絆》を断たれ、《ホワイトカオス》に戻されたことに深く傷ついている。

《憎悪の意志》

 《ホワイトカオス》が内包する「ネガティブな力」の一部。今回は水妖が持っていた「強い悲しみ」に混ざりこむことでこの世界に流れ込んだ。

 この存在は“一個の意志”というものが存在しない。ただ世界が崩壊の方向へ向かうように他者の意識を操作し、破壊衝動を持たせる。
 そうすることで、《ホワイトカオス》に堕ちる世界を増やそうとしているのかもしれない。

《イモータル》「神南 洋太」
 【強度/制御/反応】2/3/2
   [結界強度]10
 [武器威力]±0
 保有アクセス:不明

 《イモータル》に覚醒しかけたところを《A&S》に見いだされ、保護された少年。海洋での訓練中に水妖二クシーを召喚してしまう。
 幼いころから水に親しみ、泳ぎに関してはかなりのもの。本人も「水の中にいると落ち着く」と話す。

 なお、洋太の立ち位置については、PCとしてプレイすることも可能である。
 その場合は、物語の基本設定以外の部分について(名前・性別など)を担当するプレイヤーに自由に決めてもらってよい。

return

■♯17 「千年煉獄」


「ゆびきりしてください。無事に戻ってくるように。……破ると、本当にバチを当てますからね」

 《九曜家》に所属するPCは、一風変わった夢を見る。それは平安時代の町を舞台にした夢。そこに住まうのは恐ろしい眼差しをした天狗たちであっ た。天狗たちは怨念と呪詛をつぶやいている。そして、その呪詛の対象とされている家の名は、PCの名字であった。目覚めたPCは《九曜家》当主・珠子の命 を受けて“奥の院”に出向く。

 珠子は「少し仮眠をとったさいに、恐ろしい夢を見たのです」と語る。その夢の内容はPCたちが見た夢と酷似していた。
 そして珠子は「占を立てたところ、この度起ころうとしている災いは、あなた方でなければ防げないと出たのです」と語り、地図上に砂を撒く。
 その砂は美浦市の千鳥山に集まっていった。珠子はここで何かが起ころうとしていると語り、PCを美浦市に派遣する(なお、ここでショートリプレイのよう に、勾玉が呼び出した妖物とPCたちとの模擬戦を行うとルール体験が行える)。

 一方そのころ《Anchors & Ships》に所属するPCは、《Anchors & Ships》日本支部でもあるペルセフォーネ号に、すでに解決した事件の結果を報告するために来ていた。
 事件内容は、子供の失踪事件の調査。PCたちは犯人である《タイラント》を倒したのだが、誘拐された子供たちは魂を半ば奪われたため、植物人間状態と なってしまう。
 報告を聞き《Anchors & Ships》日本支部長・小津 香澄はPCたちを慰労する。そんな時、千鳥町の方角で強い《ホワイトアウト》が発生した。

 同調し、海を走り抜けたPCは、千鳥町にて“餓鬼”のような姿をした怪物が、10歳くらいの小学生のような姿の少女を襲撃しているところに遭遇す る。撃退したところで場面が切り替わる。
 《九曜家》側PCは、千鳥山にたどり着く。そこでPCたちは《ホワイトアウト》現象を感知する。同調すると、今いる千鳥山の風景に、別な世界が“上書 き”されるような現象が発生しているのがわかる。そして、千鳥町の方角で《うさぎ穴》が開き、少女と妖物が現れるのを目撃する。少女は妖物を止めようとす るのだが、負傷する。

 そこで《Anchors & Ships》側PC(《九曜家》側と旧知)が助けに入ることがわかる。どんなに急いでも《九曜家》側PCが戦闘介入することはできないが、戦闘後であれば 接触が取れる。
 合流したPCが少女に質問すると、記憶を失っていることが判明する。少女は負傷しており、また《イモータル》能力に覚醒しているため、保護が必要である ことが《Anchors & Ships》側PCの立場となる。医療設備が整ったペルセフォーネ号に連れて行き、治療を受けさせると、鬼の手のような腫れ物が少女の体内に巣くっている ことがわかる。

 本来、激痛があるはずなのだが、強い痛みは感じないと少女は話す。
 調査を続行すると、“上書き”される怪現象の中心は千鳥神社であることが判明する。
 神社に出向くと《九曜家》に使える宮司は「御神体の石が最近4つに割れたこと」をPCに訴える。《九曜家》PCが鎮めの儀式を行った上で《ウィスパリン グパスト》などで調査すると、以下の情報が判明する。

 ここまで判明した時点で、美浦港のほうで強い《ホワイトアウト》現象が発生する。急行するとペルセフォーネ号の船上の一部が吹き飛ばされ、平安時 代の町の一部が甲板上で実体化しようとしている。香澄ら《Anchors & Ships》インストラクターは、わき出る妖物たちと交戦している。
 そして、妖物が保護した少女に襲いかかろうとしているところにPCが駆け付ける。

 倒れる少女を介抱すると、少女がこれまで引き受けていた呪詛が、保護したPCに降りかかり、ルール的ペナルティはないが、激痛が走ることになる。 少女はそこで記憶を取り戻し、自分が童神の化身であることを話す。
 そして童神は「自分で妖物の都の主である大蛇を倒そうとしたけど、力を奪われて果たせませんでした」と語る。PCたちが大蛇討伐を申し出ると、童神は PCに詫び、そして必ず戻ってくる願掛けに、とゆびきりする。

 その上で、PCの古傷に自分の袖を裂き、巻いてくれる。
 PCたちが都に飛び込むと、天狗たちが千年の恨みを果たすべく、呪詛を行っている場面に遭遇する。しかし、童神の布のおかげで、PCたちは見つかること なく、大蛇のところにたどり着ける。大蛇は匂いでPCを見抜き、戦いとなる。
 大蛇を倒すと、その妖力で若さを保っていた天狗たちが急速に老い、世界が崩壊していく。童神はPCに礼を言うと「少しの間でしたが、お話できて楽しゅう ございました」と言う(記憶のない少女に名前を付けたなら、そのことに対しても礼を言う)。そして、お礼として植物人間化した子供たちを救うと、力を使い 果たして、御神体の石に戻っていく。

◆DATA

《童神》「不思議な少女」
 【強度/制御/反応】不明(判定は行わない)
   [結界強度]不明
 [武器威力]不明
 保有アクセス:不明

 千鳥神社の御神体である童神(わらべがみ)。
 《九曜家》側PCの祖先との盟約で、人に害を為す妖物が住む町を別世界に封じていた。しかし事故で封印が弱まったため、あふれ出た妖物を防ごうとする。
 記憶を失っていたのは、大蛇の配下である妖物の攻撃を受け、そのケガレにより、力が弱まったことで記憶が混乱したことによる(だから《九曜家》側PCが 触れると、呪詛が移ったことにより、力を取り戻し、記憶が戻るのである)

 現代の少女の姿は『この世界』に現れたときに違和感がないようにと、近所の小学生の服装を真似たもの。言葉使いは古風で丁寧。
 外見はさらさらの長髪をした信じられないほどの美少女(少し九曜 珠子に似ている)。
 なお、腫れ物で苦しまなかったのは、本来御神体の石であったためである。

《妖物》「石動の大蛇(いするぎのおろち)」
 【強度/制御/反応】10/15/2
   [結界強度]120
 [武器威力]+20
 保有アクセス:《インフェルノ》《ウェイキーリキッド》《ヴァンパイア》《ファイズセンス》《ニューロマンサー》

 千年前に住む町ごと封じられた《妖物》。強力な妖力で配下の天狗たちとともに、封印を破る機会を伺っていた。好物は人間の若い女と子供の肉。

return

■♯18 「イミテーション・プリティ」


「ボクはイイコだよ。疑ってるの?」

 《Storm Crusade》のラボから敵性生物No.0037が逃走した。逃走先は状況から《Anchors & Ships》日本支部である客船ペルセフォーネ号と判明する。No.0037の外見は庇護心を刺激するような、可憐な小動物。しかしその実態は、接した者 の猜疑心を煽りつつ、自身に依存させて狂死させ、その者の時間質量を喰う存在なのである。
 しかも、《Storm Crusade》は《Anchors & Ships》との大切な交渉を控えている状況だった。その成否を握る《Anchors & Ships》日本支部長・小津 香澄に、No.0037が接触することは、交渉の決裂を意味する。これは、《Storm Crusade》としては避けたい事態であった。

 そのため、《Storm Crusade》ラボの最高責任者である宗形 圭二(むなかた・けいじ)は部下であるPCを集め、命令した。内容は、身分を隠してのペルセフォーネ号への潜入とNo.0037の回収・もしくは抹殺であ る。

 一方、ペルセフォーネ号の船員たちは、小津 香澄が拾ってきたペット・ぽちに頭を悩ませていた。
 ぽちは、香澄以外には全くなつかず、船内で質の悪いイタズラをし続ける。しかも香澄の前では全くそんな素振りを見せない。ぽちのイタズラについて船員た ち苦言を呈しても、香澄は意にも留めない(「ぽちはおりこうさんよ?」など)。証拠を示そうと、ぽちのイタズラの現場を《ウィスパリングパスト》で再現し ても、ぽちがそのアクセス結果に《ノイズィームーン》で介入、ぽちをいじめている光景が再現されるのである。

 このような状況が整ったペルセフォーネ号に乗り込んできた宗形の部下を、ぽち(=No.0037)は盗難事件をでっち上げ犯人に仕立てて追い出す か、事故に見せかけて殺害しようと画策する。
 ぽちを事件・事故を企てている現行犯(犯行状況を《ホワイトアウト》により固定する)で押さえると、ぽちは本性を見せ、PCたちに襲いかかってくる。ぽ ちはこの戦闘で劣勢になると、《ハイドインシャドウ》を使って逃走を試みる。逃走判定に成功した場合は、そこに現れた香澄がぽちを捕まえ、事件は終わる。

 事件後、香澄はぽちを放置していたのは、ぽちの正体を見極めるためだったとPCたちに告白する。そして、命令もない状態にもかかわらず、事件を解 決するために行動したことに礼を述べる。

 推奨PCは《Storm Crusade》の構成員、《Anchors & Ships》インストラクター、《Anchors & Ships》外部協力者である香澄の友人。

◆DATA

《敵性生物》「No.0037 ぽち」
 【強度/制御/反応】3/8/5
[結界強度]90
 [武器威力]+16
 保有アクセス:《シリーウォーク》《ハイドインシャドウ》《ビーイントラブル》《ノイズィームーン》《ティア・ディメンション》

 外見はふわふわした毛が全身に生えた、猫のような姿の小動物。ただし喋れる。
 しかし、その実態は《異界》由来の生物である。他の世界に依存・寄生して存在する生物であり、接した者の猜疑心を煽りつつ、自身に依存させて狂死させ、 その者の時間質量を喰う存在なのだ。この生物を捕らえた《Storm Crusade》は、生物がそうした存在であることを突き止めた。その上で、生物の本拠地を探るために捕獲していたのである。

 《シリーウォーク》《ハイドインシャドウ》《ビーイントラブル》は《アクセス》の隠蔽・証拠隠滅に使用する。《ノィズィームーン》は調査《アクセ ス》への干渉、《ティア・ディメンション》はやむを得ない場合の戦闘、及び逃走に使用する。
 使用パワーレベルは1〜2。

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■♯19 「逆斎火(さかいみび)」/原案:にゃあ


「……お祭りなくなっちゃうなんて、寂しいよね」

 PC1は《イモータル》に覚醒し、《Anchors & Ships》の保護下にある中学生。

 PC2は《Anchors & Ships》のインストラクターで、PC1の担任。PC3は《九曜家》の所属員、PC4は《Storm Crusade》に所属する研究者である。人数が3人の場合は、PC1を外すこと。

 事件の発端はPC4(研究者)の自宅。PC4には中学生の娘・奉(まつり)がいる。奉は活発な性格で、お祭り好きな少女である(面差しがPC4の 亡くなった妻に似ている。また奉はPC1の幼なじみでもある)。
 《Storm Crusade》の協賛組織である外資企業が、総合ビジネスビルの建設のため、美浦市内のある土地を買い占めた。その結果として、かつては日取神社の一部 であった日取公園で開催予定だった夏祭りは中止となってしまう。楽しみにしていたお祭りが中止となり、心底がっかりする奉(PC1がいる場合は、夏祭り中 止を学校で奉がPC1・2に話し、がっかりするという展開にすること)。
 PC4は《Storm Crusade》に所属しているが、そのことは娘に隠しており、外資企業の研究者ということになっている。奉の言葉を受け、夏祭り開催の方法はないかと 《Storm Crusade》のアジトに向かうが、そこでは大変な事態が発生していた。処分予定だった敵性生物No.0049が脱走したのだ。
 No.0049が持つ特殊能力は「強い願いを持つ人物の願いを叶えること」。「願いを叶える」と称して対象に近づき、力を与える代償として、その人物と 同化し、最終的には乗っ取ってしまうというものであった。
 対象となった人物は24時間以内に《アクセス》を使って引きはがさないと、完全に同化されてしまうのだ。

 一方そのころ、《九曜家》に所属するPC3は、日取神社に派遣されていた。日本政府の手違いにより「売ってはならない土地」が外資に売却されてい たからである。「日取神社の夏祭り」とは、かつて《九曜家》が怨霊鎮魂のために行った儀式であり、それを中止すると封じられていた怨霊が再び解放されかね ないのである。
 PC3が調査した結果、新たな土地の所有者は《九曜家》の力が及ばない外資企業・シードルエンターテイメント社だということがわかる。困ったPC3は、 同盟関係にある《Anchors & Ships》に所属する旧知のPC2に相談を持ちかける。元々外資企業である《Anchors & Ships》なら、シードル社とパイプがあると考えたのだ。

 PC2・3(いるなら1も)が外資関係に詳しい《Anchors & Ships》日本副支部長・小津 透に相談すると、透はシードル社が《Storm Crusade》の影響下にあることを教えてくれる。
 そこでPC2は思い出す。1999年に行われた《大戦》において、自分が《Storm Crusade》に所属するPC4との間に信頼関係を成立させていたということを。

 そこで場面をPC4に戻す。No.0049探索に成果が上がらなかったPC4が深夜に帰宅すると、奉がいないことに気づく。奉は不真面目な性格で はないし、まだ中学生である。この時間に在宅しないはずがないのである。
 困惑するPC4のところに、PC2からの電話が鳴る。PC2と合流するため、美浦市に到着したPC4は強い《ホワイトアウト》現象に遭遇する。ここは他 のPCも場面に登場しているので、《同調》することが可能。
 《同調》すると、音のないはずの世界に祭り太鼓が響き渡り、色を持つ提灯と、それを持つ幽霊のような人々があちこちに出現していることがわかる。
 そして幽霊の列は、日取神社の御輿に覚醒した奉を座らせ、神社の方角に出現した《うさぎ穴》へと彼女を誘う。PC4が見れば、奉の表情は、時折研究中に 敵性生物No.49が見せたものへと変わることがわかる。

 奉はPC1、2、4がいるなら、以下のことを話す。「町中で夏祭りを存続させる署名運動を行っている人物(=No.0049)に出会い、署名した ら意識を失ったこと」「気がつくと幽霊の祭に参加していたこと」である。そして「お祭りは楽しくやるものだよ! でもこの祭りは悲しみと恨みばかりが伝 わってくるの……なんだかわからないけど、このお祭りは止めないと」と言いかけて、意識を奪われる。
 そこでNo.0049の口調に変わった奉は、自分を捕まえて処分しようとした《Storm Crusade》への復讐のために、奉に近づいたことを語る。そして、間もなく完全に奉を乗っ取れるということも。

 PCたちが奉に取り憑いたNo.0049を攻撃しようとすると、No.0049は「この土地には我に力を貸すものがおってな」と言い放ち、同時に 怨霊たちが《うさぎ穴》から現れる。提灯の怪物、怨霊(提灯・怨霊とも【能力値】[武器威力]すべて2。[結界強度]20が各2体)を撃退する間に、奉を 載せた御輿は《うさぎ穴》へと消える。
 PCが《うさぎ穴》に入ると、そこは無数の提灯が浮かぶ《異界》であった。そこでは《御神灯》と書かれた提灯を持つ天狗と幽霊の僕たちが、赤黒い火を囲 んでいる。天狗は「汚れなき若い命をこの紅黒き逆斎火(さかいみび)に捧げることで、儂を封じる忌々しき封印は完全に解かれる。(PC3を見て)《九曜》 がものよ、見るがいい! 我らが復讐劇を!」と言い放つと、奉と御輿を忌まわしき火にくべようとする。

 PCがそれを阻むなら、幽霊2体(データは先の提灯・怨霊と同じ)、No.0049、天狗と戦闘になる。PC3は天狗を倒したとしても、夏祭りを 行わないことは、この土地に封じている他の怨霊たちを解放するきっかけとなることを知っている(つまり倒さなくてはならないが、倒しても根本的な解決にな らないということ)。

 PCたちが望むなら、PC4を通じて《Storm Crusade》が《九曜家》に土地を譲ることで、夏祭りを行い、事態の収拾を図ることができる。

◆DATA

《イモータル》 「(PC4の名字)奉(まつり)」
 【強度/制御/反応】2/4/4
[結界強度]10
 [武器威力]なし
保有アクセス:不明

 中学2年生の少女でPC4の娘。PC1の幼なじみ。PC2の教え子。素直で活発な性格であり、お祭り好き。正義感が強く、アクティブ。敵生生物 No.0049に謀られ、《イモータル》に覚醒。そのよりしろにされかける。

《イモータル》 「敵性生物No.0049」
 【強度/制御/反応】4/10/4
[結界強度]60
 [武器威力]+20
保有アクセス:《スローターハウス》《クールアイズ》《ニューロマンサー》《トリックアームズ》

 《Storm Crusade》が捕獲した敵性生物。「願いを叶える」力を持ち、それを願った者の力を吸収して強大化していく存在。様々な書式の“契約書”にサインさせ ることで、相手の魂を虜にすることができる。
 『この世界』の人間がすでに何人も犠牲となっており、PC4は処分を計画したが逃げられてしまう。奉に取り憑いているため、その姿は奉と同じである。本 体の形は人間の顔がついた脳のような生物。
 使用[パワーレベル]は1〜2。

《タイラント》「紅黒(べにぐろ)」
 【強度/制御/反応】7/8/3(35/40/15)
[結界強度]100(1000)
 [武器威力]+16(+80)
保有アクセス:《インフェルノ》《ヴァンパイア》《クンフーマスター》《ジャンピングジャック》

 《九曜家》が日取神社に封じた《妖物》の天狗。《九曜家》が古に施した封印により、力を弱めている。もし封印から解放されたなら()内の 【能力値】となる。封じの儀式である夏祭りを逆に行うことで、封印から逃れることを望んでいる。本来女人禁制の御輿に奉を乗せるよう指示したの は、儀式の力を弱めるため。  《タイラント》としての目的は、男には争わせてその負の心をすすり、女は喰らうこと。使用[パワーレベル]は1〜MAX。

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■♯20 「双葉鏡華(そうよう・きょうか)」


「姉さんは、とても素晴らしい人なのよ。海外留学をしていて……」

 千鳥高校に、クラスでも目立たない少女である各務 陽子(かがみ・ようこ)がいた。
 だが、その陽子にそっくりな少女・美月(みつき)が転校生として現れる。美月はスポーツ万能であり、体育祭で大活躍する。その後、陽子は美月を自分の姉で、外国から帰ってきたのだ、と説明する。だが、不思議なことに陽子と美月は決して同時には現れないのだ。

 美月の正体は陽子である。幼い頃に双子の姉・美月と事故で死別した陽子は、姉が生きていると信じ、結果、自分自身を理想の“姉”として振る舞わさせていたのだ。美月となった彼女の活躍は《アクセス》により、実現したものである。だが“理想の姉”は、実在しない存在でありながら、本当の陽子を侵蝕していく。「美月である時間」が次第に長くなってきたため、自分自身を見失おうとしているのだ。

 その原因は、彼女が《イモータル》に覚醒したさいに、接触した元《タイラント》・ヴィルガンデインにあった。ヴィルガンテインは巧妙な話術で彼女に接し、自身を《盟友》として引き上げさせる。
 ヴィルガンテインは陽子を美月と思いこませ、自身に都合のいい人格にしようとしているのだ。自身が『この世界』に根を降ろす拠代とするために。

 思春期の少女が持つ空想でしかない“美月”は、理想の人物化されており、海外での華々しい活躍を語る(陽子が本来持つ“地味だけどいいところ”――ていねいに教室を掃除する、花壇の手入れを嫌がらない、など――は持ち合わせていない)。だが、理想の存在を実現する手段として《アクセス》を使うため、《イモータル》であるPCが「そんなすごいことが本当にできるのか」と質問することなどによって、正体が発覚する。
 美月の正体を発覚させた場合、元《タイラント》である《盟友》ヴィルガンテインが、陽子を再洗脳しようとする。《盟友》を倒すか、陽子自身のいいところを指摘し、姉が死んでいることを納得させられるなら、事件を解決できる。

 推奨PCは《Anchors & Ships》協力者であり、少女の同級生である《イモータル》、担任教師である《Anchors & Ships》インストラクターなど。

◆DATA

《イモータル》各務 陽子
【強度/制御/反応】1/10/1
[結界強度]60
[武器威力]なし(攻撃しない)
保有アクセス:《ストレイシープ》《ドッペルゲンガー》《ジャンピングジャック》《スイートアロマ》

 束ねた髪を結んだ髪型をし、眼鏡をした地味な雰囲気の少女。17歳。園芸部に所属し、花々の世話をするのが好きである。自分の引っ込み思案な性格を気にし、活発なクラスメイトを羨ましく思っている。6年前に事故で亡くなった姉が死んでしまっていることを未だに受け入れられないでいる。そのことを元《タイラント》であるヴィルガンテインにつけ込まれることになる。“美月”のときは、髪を下ろし、眼鏡もしていない。顔立ちは整っている。

 戦闘になっても、PCに《アクセス》は使用しない。

《盟友》ヴィルガンテイン
【強度/制御/反応】14/6/10
[結界強度]15
[武器威力]15
保有アクセス:《ノィズィームーン》《シュラ》《スローターハウス》

 元《タイラント》。自身が作りだした世界の存在同士に偽りを教え、戦わせることを楽しんでいた元《タイラント》。だが、その世界が時間質量を失ったため、《ホワイトカオス》に堕ちた。

 偽りを見せることに長けており、陽子の心の隙に入り込んだ。外見は少女マンガ風な黒マントの美青年。

 使用[パワーレベル]は2〜MAX。

return

■♯21 「ビーンズ・ツリー」


「見よ、あの美しさ! 植物は、愛だ!!」

 緑山高校園芸部に、新任の顧問教師(PC1)が赴任してきた。この教師、植物学者を志しているのだが、学会で認められずに地方の高校教師となった人物である。
 着任した教師(PC1)が、部活動を把握すべく、園芸部で行ったグループ旅行の記録を見ていると、その中の写真が目に入る。

 背景の写真に写っている、豆科の植物は、明らかに新種であった。教師(PC1)は園芸部生徒(PC2〜3)、学会時代の親友(PC4・実は《Anchors & Ships》インストラクター)を巻き込み、強引にグループ旅行を企画する。
 写真は文芸部生徒が、山道から滑り落ちたさいに撮ったものであり、生徒を巻き込まないと、新種の植物の場所がわからないのである。
 PCたちは歩行困難な道、落ちそうな吊り橋など、様々な困難を乗り越えて、植物の元にたどり着く。到着した場所に生えていた植物は、確かに新種であった。
 教師(PC1)たちはさっそく新種の種を持ち帰る。生育過程を明らかにすることで、論文執筆を果たし、学会に認められようというのだ。

 だが、事件は「真夏の晴天が続いた」数日後に発生する。何者かが校内の菜園を襲い、キャベツ畑を食い荒らしたのだ。鋭い牙で噛まれたような跡があることから、野犬などが食べたのだろうという話が出ている。しかし[一般人判定]で、達成値10に成功すると、明らかに口のサイズが大きすぎるということがわかる。
 同時に、新種の豆科植物が異常に大きくなっており、また水をあげた形跡もないのに葉が湿っているのがわかる。不審に思ったPCたちが《アクセス》を使うなら、《ホワイトアウト》しても色が失われない、《異界》由来の植物だとわかる。
 《ホワイトアウト》せずに、植物を監視しているなら、植物は夜中に《ホワイトアウト》して《うさぎ穴》を開き、《異界》から雨を振らしていたのだ。そして、植物は触手を伸ばし、残ったキャベツを食虫植物のような口を開いて食べていたのである。

 《Anchors & Ships》インストラクターであるPC4は、この事態を座視できない。研究を切り上げ《異界》の植物に対処するよう、教師(PC1)に進言する。
 ここまでのPCの「豆に対する愛着」によって、植物の反応は変わる。大切にしていたなら、植物はいたずらを見られて、びっくりしたようにうなだれる。手荒く扱ってきたなら、襲いかかってくる。
 《アクセス》によって、植物の意向を理解したなら、この植物の正体が判明する。この植物は、植物狂いの《タイラント》が、自分が創造した植物を「別の世界に植えたらどうなるのか」という知的欲求に負けて、種をばら撒いたことによって生えたものであった。

 何はともあれ、開いた《うさぎ穴》を通って《異界》に向かう(もしくは植物が発見された場所に向かうと、同じ植物が《うさぎ穴》を開いている。
 どちらにせよ、倒していないなら豆のつるをつたって《異界》に入ることができる)なら、そこは無数の変な植物が生えている場所である。花びらごとに色が違う花とか、いきなり発酵してねばついた豆が生えている植物、食べると大きさが2倍となるキノコなどである。
 《タイラント》が放った戦闘用植物(【能力値】3/−/2、[武器強度]+6、[結界強度]20)を撃退しながら、《異界》の中心にたどり着くと、そこは巨大なまめ科の植物が生えている。《タイラント》は収穫した種を、別の世界にばら撒こうとしている最中だった。《タイラント》を倒すか、説得するなら事件は終結する。

 なお、この「豆」は実は言葉が通じるので、しつけるなら無害となる。

◆DATA

《異界植物》すごい豆の木
【強度/制御/反応】8/10/1
[結界強度]190
[武器威力]+16
保有アクセス:《アブソリュート・ゼロ》《インフェルノ》《スラップ・スティック》《スイートアロマ》

 《タイラント》が作りだした、豆科の植物。成長すると巨木サイズになる。雑食で何でも食べるが、イヌのような性格なので、しつけることができる。キャベツが大好き。

 PCと仲がいい場合は《アクセス》を使用しない。使用[パワーレベル]は1〜2。

《タイラント》異界の学者・シクルド
【強度/制御/反応】7/−/6
[結界強度]150
[武器威力]+14
保有アクセス:《ガイアリージョン》《ウィスパリングパスト》《ニューロマンサー》《ファイズランス》《ルミナス・ダークネス》

 別世界の学会に認められなかったことで、その無念から《異界》を作りだした《タイラント》。その植物愛は∞。

 どことなくPC1に似た風貌・口調をしている。

 使用[パワーレベル]は2〜MAX。

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■♯22 「学び舎への珍客」/原案:でかい人


「おやァ、ヲいしそうな匂ゐがスるョ?」

 「あれぇ、猫が紛れ込んでるよ?」  ある日の午前、学校の授業に参加しているPCの耳に驚いた生徒の声が飛び込んでくる。
 重さを感じさせないような軽やかな足取りで、少しだけ開いた教室の入り口から入ってきたのは、猫であった。体長が30センチほどで尾は長く、銀色がかったブルーの毛並みは最高級のシルクを思わせる、その双眸も銀目と呼ばれる淡いブルーに猫科特有の縦長の虹彩の気品漂う猫である。
 猫好きな生徒であれば「ロシアンブルー」という有名な品種名を口にするだろう。

 追い出そうとするとなおさら教室に入ろうとし、捕まえようとするとその手をかわし股のあいだをくぐり抜ける。追いかけると、椅子の下や机の上、生徒のひざの上、そして教科書に重ね読んでいた雑誌を飛び越えて、楽しげに教室を一周してPCの手の届かない棚や掃除用具入れの上に逃れ毛繕いを始める。
 PC以外の教師、生徒は猫に好意的で、追い出さずにそのままにしておこうと言い出す。不思議なことに、普段は猫嫌いな人までも、そうした態度を取るのである。追い出す場合は猫は自分から、そのまま授業を再開する場合は毛繕いが終わると教室を出て行く。

 昼休み、PCの元に《Anchors & Ships》から連絡が入る。「追っていた生物がキミが通っている学校に逃げ込んだ!」と。その連絡によると、《Anchors & Ships》では数日前から、違う世界から紛れ込んだと思われる生物を追っており、それが午前中に学校へ逃げ込んだらしい。

 学校内で猫を探し出すのに苦労はしない。すでに校内では人気者になっているので、手近な生徒や先生に猫を見なかったか聞いてみると、みな楽しげに「あちらで見た」とか「中庭に居た」とか、家庭科室で食べ物をもらっていたとか話す。外に放り出すために捕獲に向かった教師たちまで、ネコ馬鹿になって戻ってくる始末である。 そして現在《Anchors & Ships》は学校の敷地から逃げられ、再度見失わないために学校の周囲に包囲網をしいており、午後1時丁度に《ホワイトアウト》して学校敷地内にて捕獲する作戦とのこと。
 しかし人手が足りないことから、PCには作戦前に校舎内における生物の居場所を確認し、捕獲の手伝いをしてほしい、と要請される。また、生物は様々な四足歩行の動物に姿を変えること、学校の敷地内に逃げ込んだ時点では猫の姿をしていたという情報を示される。

 猫のような生物を発見し《ホワイトアウト》すると、生物は色を失わないPCたちから逃げ出す。凍りついた学生たちの間を跳び回り、影を渡って逃げ回るが、見失いそうになると足を止めてPCをうかがう。

 推奨PCは《Anchors & Ships》と関係のある教師や、生徒などの学校関係者。

◆DATA

《異世界の生物》猫のような生き物
【強度/制御/反応】3/12/10
[結界強度]60
[武器威力]+6
保有アクセス:《クールアイズ》《ドッペルゲンガー》《ジャンピングジャック》《ハイドインシャドウ》

 生物にとっては追いかけっこして遊んでるようなものなので、基本的に攻撃を行わない。せいぜい、《クールアイズ》で魅了してPCの足を鈍らせるくらいだろうか。《ドッペルゲンガー》で様々な動物に変化しつつ、《ジャンピングジャック》《ハイドインシャドウ》で見た目派手に逃げ回る。

 [結界強度]が0になると、疲れからPCに擦り寄り、寄りかかったまま寝てしまう。他の事件によって開いた《うさぎ穴》から好奇心でこの世界に紛れ込み、エサを求めてこの世界を徘徊していたところを《Anchors & Ships》に発見される。
 使用[パワーレベル]は1〜2。

return

■♯23「ふたつの石碑」/原案:でかい人


「……わしが石碑を建てる? やりそうなことではあるな」

 町の中心部を流れる祝橋。その慶賀な名前を持つ橋は、最近“自殺橋”“飛び降り橋”と呼ばれるようになっていた。その理由は、この1か月に5回もの飛び降り事件があったからである。自治体は優美な祝橋に、飛び降り防止の柵を設置したが、被害者はそれでも乗り越えてまで飛び降りるのである。
 幸い、水深が深かったこともあり、飛び降りた人は大けがで済んでいた。病院に収容された被害者に、警察が事情聴取を行うが「悪夢の騎馬武者が追ってくる……助けて」などと意味不明なことをつぶやくだけである。事態を重く見た警察内部の《イモータル》は、《Anchors & Ships》に協力を要請した。

 《Anchors & Ships》では、《タイラント》絡みの事件と考え、事件の詳細について情報収集を開始する。
 《九曜家》のPCがいる場合は、事件の性質を鑑みた《Anchors & Ships》のPCから、旧知である《九曜家》のPCに連絡がいく、という展開を推奨する。たまたま、郷土史に詳しい研究者(PCを推奨)がいたため、祝橋の由来については、早期に調べが付く。

 一連の事件は、祝橋の真ん中に立つ、二つの石碑にトラックが突っ込んだ日から始まっていた。そして、この石碑は、それぞれ別の由来を持つものであった。一つは土地に祟りを為すという、古き祟り神を祭ったもの。もう一つは戦国時代にその祟りを鎮め、この荒れ地に新田を開いた大地主・國弘 五平太 高澄(くにひろ・ごへいた・たかづみ)を土地神として祭ったものである。郷土史によれば、五平太は農民同然の土豪出身だったが、戦功を上げて成り上がり、時の領主より荒れ地を授かったのだという。

 ところが、その荒れ地は人の魂を喰らう祟り神が棲まう土地であった。新領主となった五平太は、まず戦場で得た私財を投げ打って石碑を作り、祟り神を祭ることにしたのであった。それだけでなく、自身の死に際して石碑の横に新たな石碑を作るよう、言い残した。このような五平太の尽力により、祟りがなくなったことから、死後・五平太も“國弘権現”なる土地神として、祭られていたのだという。
 そうしたことから、石碑はこの橋を戦後に掛け替えたさいにも、大切に元あった場所に設置されていた。
 しかし、トラックの衝突は「祟り神を祭った石碑」を完全に破壊し、そして五平太の功績を書いた石碑も、一部破損してしまった。これにより、五平太の功績のうち、後半の部分が欠落してしまったのである。

 そうした調べが付いた時に、警察からの緊急連絡が届く。祝橋に多くの人が集まり、柵を越えようとしているのだ。PCが《ホワイトアウト》することで、この自殺行動を食い止めることができる。
 《ホワイトアウト》すると、石碑を中心として《うさぎ穴》が発生しており、そしてその穴は少しずつ広がろうとしていた。《うさぎ穴》からは強く、禍々しい気配が発せられている。

 《うさぎ穴》から《異界》に入り込むと、そこは古びた橋の上であった。[一般人判定]《感覚系》か《ブルーウォーター》などの判定に成功すれば、背景となる山の位置などから、過去の祝橋の上ではないかと推測できる(目標値10)。石碑がないことから、五平太の時代より昔ではないかということもわかる(目標値12)。  ややあって、急に天候が変わり、雷雨が降り出してくる。すると、橋のたもとにある荒れ果てた社に、近隣の村人たちが荷車を引いて現れる。そして若い娘を降ろすと、そそくさと逃げ去っていく。
 すると、社の奥から青き蛇が現れ、「今宵の生け贄は、そなたか」と人語を発する。止めなければ、娘は魂を抜かれて息絶える([デザイア]を6D6増やすこと)。
 青い蛇を止めた場合は「おのれ、畏れを知らぬ輩め」と襲いかかってくる。倒すと、娘・初穂(はつほ)は「祟り神さまの下僕を手にかけるなんて、恐ろしいことを……」と絶句する。

 初穂から事情を聞くなら、土地の領主である國弘 五平太 高澄(前述)が、殿の遠征に同行して不在のさいに、再び祟り神の下僕が現れたのだという。村人にはどうすることもできず、以前のように生け贄を捧げようとしたのだと説明する。
 何であれ、しばらくすると騎馬の一団が駆け付けてくる。馬を降りた巨漢の男は、初穂が無事なら、その無事を喜ぶ。男は「國弘五平太だ」と名乗り、現代人であるPCの姿を異様に思って「そなたらも祟り神の手の者か」と大太刀を抜刀する。対応によってはここで戦闘になる。

 初穂が無事なら、PCたちがわたしを助けてくれたのだ、とかばってくれる。
 五平太には、神主の姿をした同行者がいた。《九曜家》のPCがいれば、PCそっくりの姿(先祖)であり、所持品からも当時の《九曜家》に属する人物であることがわかる。

 事情を話すと五平太は「わしがこの後で石碑を建てるのか。やりそうなことではあるな」と納得し、「荒ぶる神を鎮めねばならん。そのために、わしらは来たのだ」と説明する。[一般人判定]《感覚系》10に成功するなら、五平太の功績である「荒ぶる神を鎮めに社に向かう」の先に書かれた「石碑の功績」が壊れてなくなっているため、「祭られた先の結果」がなくなってしまったのではないか、と推察できる。
 そして神主・杉谷 桐兵衛 貴清(すぎや・とうべえ・たかきよ)は「最近、祟り神の手のものが、そなたらのような姿をした者たちを引き込もうとするため、私が恐怖を与えて追い払っていたのだ」と話す。つまり、祝橋の通行者を恐怖の幻影によって追い払っていたのは、この《九曜家》の神主だったのだ。

 青き蛇を倒していた場合、五平太は「毎年盛大に祭りを行い、石碑を建てることで、祟り神殿には納得して頂こうと思ったが、これで難しくなってしまったな」と話し、PCたちに「どちらにせよ、話は付けねばならん。わしに同行せい」と豪快に笑う。倒していなかった場合、「わしが間に合わんばかりに、初穂殿には気の毒なことをした」と言い、PCには「そなたらはもう帰れ。祟り神殿はわしらが鎮める」と語る。
 この場合は、PCが元の世界に戻り、再び石碑を建てれば事件は解決する。もし、五平太まで倒してしまった場合は、後述する祟り神をPCが倒し、石碑を建て直すしかない。

 祟り神のいる社に同行すると、鳥居よりも高い背丈の白い大蛇が忽然と現れる。そして「古からの慣習を踏みにじり、我が僕を手にかけたること、思い知らせようか迷っておる」と話す。PCか五平太が和解の条件を聞くなら「我への祭祀を絶やさぬこと。そして我が神宝である珠を取り戻すこと」と話す。了承するなら「我が僕を手にかけたものが、行うが筋道」と、PCのみで行うことを命ずる。
 拒絶した場合は祟り神との戦いになる。勝っても「神は殺せぬ。数百年の時を経て蘇り、なんじらに祟りをもたらすであろう」と言い残す。現代に戻ると、PCの家族らが謎の奇病で苦しみ出すという結末となる。

 祟り神の依頼を受けたなら、深い谷底に落ちた神宝の姿を幻影で映し出す。谷に向かうまでは、《アクセス》がないと進めないような難所が続いている(PCの取得《アクセス》を見て、調整)。
 大きな吊り橋の下に、神宝の珠は輝いている。そして近くには不幸にも橋から落ちた通行人が息絶えており、それを一つ目の餓鬼が喰らっている。餓鬼と戦闘し、珠を取り戻せば、祟り神は「盟約はなった」として、祟ることを止める。この場合は現代に戻り、《九曜家》か地方自治体が石碑を作り直す。

 

◆DATA

《妖怪》 青き蛇
【強度/制御/反応】3/8/2
[結界強度]30
[武器威力]+8
保有アクセス:《スケアリーモンスター》《ヴァンパイア》《ハイドインシャドウ》

 祟り神の下僕。《ヴァンパイア》で吸った魂を集め、主に渡すのが存在理由である。人語を操るだけの知性を有している。

《イモータル》 國弘 五平太 高澄
【強度/制御/反応】15/15/5
[結界強度]150
[武器威力]+30
保有アクセス:《ブレイブエッジ》《スローターハウス》《タップビート》

 戦国時代に土豪から成り上がった地方領主。低い身分から出世したため、領民の気持ちを汲むことに長けている。根が明るく、豪快な性格。戦闘になった場合は、《ブレイブエッジ》による怪力で振り回す大太刀は強烈、《スローターハウス》《タップビート》で、PCたちを撹乱する。
 使用[パワーレベル]は2〜MAX。

《イモータル》 (九曜家PCの名字か)杉谷 桐兵衛 貴清
【強度/制御/反応】6/20/6
[結界強度]100
[武器威力]+12
保有アクセス:《ティア・ディメンジョン》《ニューロマンサー》《タップビート》

 五平太の領地にいる神主。《九曜家》に仕えている。冷静沈着な性格の現実家。《九曜家》のPCがいるなら、PCの先祖(倒すとそのPCは消滅してしまう)。
 使用[パワーレベル]は2〜MAX。

《祟り神》 白童子
【強度/制御/反応】40/−/25
[結界強度]300
[武器威力]+80
保有アクセス:《テンペスト》《ヴァンパイア》《クルーレスジャッジ》《ハイドインシャドウ》

 五平太に祟る、古き祟り神。とはいえ、この神の視点で言うなら「古の約定を破り、神と人の境目を犯した」ことへの憤りを表しているだけで、悪いことはしていない。大きな白蛇の姿を取る。使用[パワーレベル]は2〜MAX。

《妖怪》 一つ目餓鬼
【強度/制御/反応】7/10/4
[結界強度]120
[武器威力]+14
保有アクセス:《ヴァンパイア》《ブレイブエッジ》《スイートアロマ》《スローターハウス》

 全身に粘液をまとわせた一つ目の巨人。自身が発する腐臭を《スイートアロマ》で消すとともに、いい匂いと幻影で旅人を呼び寄せ、喰らう。
 使用[パワーレベル]は1〜MAX。

return

■♯24 「ココロの重さ」


「これは“治療”だよ。進化という名の、ね……」

 舞台はそれほど人口が多いわけではない地方の町。この町で今話題となっているのは「こんな田舎町に立てられた、不釣り合いなほど立派な大病院」のことであった。
 この「聖心病院」の誘致に成功した自治体関係者であるPC3と、その子息であるPC4は、完成した病院を視察に訪れる。しかし二人はその数日後、原因不明の高熱を出し、その聖心病院に運び込まれる。

 聖心病院を立てたのは《Storm Crusade》の後援企業。そしてこの病院を監督する医師・刑部 貴人(ぎょうぶ・たかと)も《Storm Crusade》のエージェントである。
 刑部は危険な研究に没頭していた。自身が管理する病院の隔離病棟において、病院から外に出ることがない患者を、極秘裏に研究材料としようというのだ。刑部の狙いは肉体と精神の分離による「進化の実現」である。実験は9割方成功しており、捕縛された患者たち(PC3〜4)は「決して治らない難病を抱えた肉体」から精神のみを分離され、「進化した肉体」の中に心を移されようとしている。
 さらに刑部は「精神分離」のさいの研究を推し進め、《Storm Crusade》に絶対の忠誠を誓うように、精神構造を書き換えようとしていた。

 《Anchors & Ships》インストラクターであるPC1〜2(PC1がPC3の親友、PC2と4は同級生、という関係を推奨する)は、《イモータル》として保護下にあるPC3〜4のお見舞いに行こうとするが、面会謝絶を理由に断られる。
 だがPC1〜2は、目標値8の[一般人判定](もしくは《ニューロマンサー》など)に成功することで、病院内で他の医師たちに囲まれている男の顔立ちに見覚えがあると気づく。達成値が10を越えているなら、男が整形をしているが、《大戦》のさいに《Storm Crusade》を名乗っていた研究者・刑部であることがわかる。

 PC1〜2が《Anchors & Ships》本部に相談すると、新城 要(しんじょう・かなめ。リプレイ「来訪者」参照)が応対する。新城は「危険かもしれませんが、その病院に潜入して、刑部の目的を探ってもらえないでしょうか。刑部は何を考えているのかわからない男ですから」と依頼する。そして、しばらくして電話をかけなおしてくる。かつて《Storm Crusade》に協力していた新城は、そのコネを使って聖心病院に医療器具を納入する業者にPC1〜2を入れてくれ、そして特殊な薬品を手渡す。
 一方、PC3〜4は刑部から「特殊な手術をしなければこの病気は完治しない。最新の医療技術を用いるので、安心してよい」旨の説明を受ける。そして手術の同意書を出してくる。同意するなら、すぐに手術が執行される。この時点ではPC3〜4は重病なので物理的に抵抗はできない。

 ただし、GMはPC3〜4が話を引き延ばす、など時間稼ぎを行えたと判断するなら、この次のPC1〜2の行動で、手術が執行される前に、助けが入ったという選択肢を持たせてもよい。

 PC1〜2は、注文された医療機器を運びつつ、院長室に向かう。途中、《Storm Crusade》関係者である医師や看護師に誰何されるが、許可証を見せることで対応できる。ただし、PCが院長室に入る理由はないため、強引に《アクセス》を使って近隣の医師たちを無力化するか、人がいないであろう深夜までどこかに隠れている必要がある。後者を選んだ場合は、PC3〜4は手術されてしまう。
 PC1〜2が刑部院長のパソコンを調査すると、彼の研究成果が明らかになる。そして彼の目的である「精神と肉体の分離」実験は動物において成功しており、この次は人間(PC3〜4である)に行うことが記されていたのだ。PC1〜2が手術の執行予定と館内の看取り図を調べるなど、慎重に情報を得た場合のみ、手術執行に間に合う可能性がある。間に合った場合は手術室に飛び込み、刑部と対面することになる。
 その場合は、新城が渡した薬品によって一時的に病状が収まったPC3〜4も行動できる。

 手術を阻止できなかった場合は、PC3〜4の精神はファンタジー世界の「知性を持つ魔物」のような、《異界》由来の生物に移植される。どんな魔物にされるのがいいか、はPCで選んでいい。推奨はダークエルフ、ハーピィ、ケンタウロス、ペガサス、リザードマン、マンティコア、ヴァンパイア、トロールなど。移植された魔物に応じた能力は、演出的に入手できる(トロールなら怪力、とかハーピィで飛行、など)。
 移植された場合、最初に目標値20の[対抗判定]を行うこと(《アクセス》使用可)。失敗すると、以後《Storm Crusade》関係者の命令に逆らえなくなる(ただし、命令されるごとに[対抗判定]は行える)。
 そして、PC3〜4は隠された地下室に移送され、厳重な警備下にある研究室に閉じこめられる。
 その場合は、PC1〜2が刑部のパソコンから入手した情報を元に、研究室の場所を探し出し、警備ロボット(【能力値】5/−/2、[武器威力]+10、[結界強度]30程度)を倒して救出する。この場合は救出時点で警備システムが作動し、あちこちの隔壁が閉鎖され、警備ロボットが放たれる。PCは《アクセス》や得た魔物としての能力を使って、要塞脱出を行うことになる。

 どちらにせよ、最終的に刑部との対決となる。刑部は、究極の医療とは『病のない身体に精神を移すこと』だと考えており、捕獲した《異界》生物との融合は、その一歩だと語る。ツッコミ所としては、その生物に元々あった精神は崩壊させられていること、またそうした生物が持つ未知の病があるであろうこと、など。ただし、そうした問題についても「研究を進めていけば解決する」と強弁する。
 もし「『この世界』の秩序が乱れるから、問題がある」ことを指摘しても「少しずつ、『この世界』にそうした存在を浸透させていく。最初は騒ぎになるだろうが、慣れたら気にもとめなくなるだろう」と語り、そうした切り口の説得には応じない。特にPC3〜4が魔物化されているのであれば「ここまで来るうちに、その異形の力は役に立っただろう? それは人類の進化した姿だ」と指摘する。

 戦闘になった場合、彼は《スケアリーモンスター》で異形化し、襲いかかってくる。彼を打倒した場合、(生きていれば)彼はそれでも説得には応じないが、部下の医師たちが降伏し、元に戻す手術を行ってくれる。元々《Storm Crusade》が人為的に発生させた病なので、病自体も回復する。

※なおこのシナリオフックは、(1)「手術される前に助ける」でも(2)「手術されたあとを遊ぶ」のどちらでも楽しめる、2本分のシナリオ内容となっている。プレイヤーが少なかった場合は(1)でPC1〜2のみ、でも(2)でPC3〜4のみ、でも遊べるものと考えている。
 また、このシナリオを通して言えることだが、PCが二分されるため、GMは手の空いた側に《Storm Crusade》の医師や新城、自治体の上司といったNPCを積極的に振ったほうがいい。

◆DATA

《イモータル》刑部 貴人
【強度/制御/反応】10/8/5
[結界強度]130
[武器威力]+24
保有アクセス:《スケアリーモンスター》《ミスティックボディ》《ニューロマンサー》《ジャンピングジャック》

 《Storm Crusade》の中堅幹部。《Storm Crusade》内でも「何を考えているのかわからない」という評価を持つが、それは自身の研究の危険性を自覚しているからでもある。
 外見はオールバックに銀縁メガネ、痩身で長身。目の輝きだけが異常に強い男。
 使用[パワーレベル]は1〜MAX。

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■♯25 「白く舞う涙」


「……ぐ、ガ、う。ボくを……コロし、て……」

 《Anchors & Ships》の地方支部が何者かの襲撃に遭い、壊滅した。
 犯行は《ホワイトアウト》時に行われていたため、目撃者は一人もいなかった。だが、残された《時紋》の特長から、犯人は登録されたばかりの高校生《イモータル》・佐山 勇二(さやま・ゆうじ)であることがわかる。

 《Anchors & Ships》日本支部長・小津 香澄は事態を重く見て、かつてその支部で支部長をしたことがあるPC1を、再び支部長として派遣する。PC1はまず事態把握のために、佐山 勇二の親友である登録《イモータル》のPC2に接触を図る(PC1とPC2は知人である)。
 PC2が持っている情報としては、佐山 勇二の人柄は温厚で、誠実。とてもそのような事件を起こすようには思えないというもの(むしろ「勇二を疑われること自体が心外で、腹を立てるよう」な人間関係である)。
 だが、PC2は最近勇二から「気のせいかもしれないが、変なやつらにつきまとわれている」と相談されたことを覚えている。PC1・2は「変なやつら」についての調査を開始する。

 かつてこの町で支部長をしていたPC1は、周囲にコネを持っている。
 そのコネの中でも、アンダーグラウンドに通じた《イモータル》がPC3・4である。
 PC3・4は上海の国際《イモータル》マフィア組織《五爪龍》に所属しており、普段は合法・違法な取引をしている日系人という立ち位置。まだ年若いPC4はPC2の同級生であり、勇二とは共通の友人でもあった。
 PC4の正体に驚くPC2の場面を入れること。

 なお、PC1は今回の事件の犠牲者に「かつてPC3と恋仲だった女性(PC4の憧れでもある)」がいることを知っている。
 一通りPC間の人間関係構築を終えたら、PC3・4に[一般人判定]か《ニューロマンサー》などの《感覚系アクセス》の判定を指示すること。達成値によって以下の情報が入手できる。

「事件の2日前に、この町の日本海に面した港に、アジア船籍の貨物船が入港している(達成値10)」
「その貨物船に出入りしている人物に、かつて上海で《五爪龍》と抗争を繰り広げた《イモータル》のチャイニーズマフィア・《七星会》の幹部を見た(達成値12)」
「その《七星会》幹部は劉 紘星(りゅう・こうせい)という人物であり、裏物資を取り仕切る大人の一人と、最近接触を持ったらしい(達成値15)」

 なおPC3・4が《五爪龍》での上司である長老ヘンリー・チャンに相談するなら「首謀者が《七星会》であるなら、組織の鉄の掟に従い敵対者を誅殺せよ」と厳命される。
 相談した場合は達成値12・15で得られる情報も入手できる。PCたちが港に向かうと、降りしきる雪の中で、件の貨物船は出港準備を進めているところだった。

 積込作業を指示しているのは、件の《七星会》幹部・劉 紘星である。
 劉は旧知のPC3・4を認めると、側にある猛獣用の檻を開け《ホワイトアウト》する。
 檻からは、佐山 勇二が現れる。勇二の身体は、一部が青く変色し、そしてその部分から異形化している。 その表情には理性がなく、まるで獣のような咆哮を上げる。
 劉は猛り狂う勇二を見て、日本語で以下のように宣言する。

 「パトロンの一人から、《イモータル》にのみ効く秘薬の試験を委ねられてね。抵抗力の弱そうな《イモータル》を探していたのだが、丁度いいのがいたよ。とても優しく、ひ弱な性格をしていたのに、今やこんなに獰猛で、強靱なんだ。命じられるままに、いい木偶になってくれる。秘薬の実験は……成功だよ。途中、《Anchors & Ships》が妨害してきたが、この素体を思いやって攻撃しないのだ。愚かな奴らだよ。お、もちろんこのことを話した以上、ここで死んでもらうがね……いや、秘薬の実験体の方をお望みかな?」

 戦闘になった場合、勇二の目から血涙が流れる。劉を倒せば、勇二にPCたちを攻撃するような命令を出すものはいない。狂気のままに暴れようとする勇二を止めるには、《アクセス》により、動きを封じたあとで(対抗判定で処理すること)、PC2・4から呼びかけるしかない。

 人間性のある呼びかけをしたなら、勇二は理性を取り戻す。そして自分の犯した罪に恐れ、泣きじゃくる。PC3はヘンリー・チャンがくれた取引商品に「記憶を消去する秘薬」があることを知っている。
 使うかどうかは、PC3次第である。獣化の治療自体はPC1の専門分野であり、問題なく行える。

※物語の内容がハードすぎると考える方は、勇二の起こした事件が「人の魂を奪う行為」であり、《Anchors & Ships》の犠牲者たちは、仮死状態だった、としてもよい。劉の目的は、戦闘生物を作るために必要な魂の収拾、とすればつじつまは合う。この場合は、劉を倒したあと、PC3がヘンリー・チャンに相談すれば、元に戻す秘薬を調合してもらえる。

◆DATA

《イモータル》劉 紘星
【強度/制御/反応】10/8/6
[結界強度]240
[武器威力]+24
保有アクセス:《ブルズアイ》《ハンター》《トリックアームズ》《クンフーマスター》《ニューロマンサー》《カウント・ゼロ》《ハイドインシャドウ》

 《七星会》の中堅幹部。いつもサングラスをかけ、顔に古傷がある長身の色男。
 長いアンダーグラウンドでの体験により、倫理性は完全にマヒしているが、それでも『この世界』から消滅しないのは、家族主義を掲げる《七星会》の鉄の結束が[アンカー]となっているからである。

 使用[パワーレベル]は1〜MAX。


◆DATA

《イモータル》佐山 勇二
【強度/制御/反応】12/6/4
[結界強度]220
[武器威力]+18
保有アクセス:《ブレイブエッジ》《ミスティックボディ》《ファイズセンス》《リスキーリミット》《ジャンピングジャック》

 物語の舞台となる都市の、ごく普通の高校生。真面目で誠実な性格の図書委員。たまたま《イモータル》能力に覚醒したため、《Anchors & Ships》に保護されていた。覚醒したてで、能力の弱い彼を見つけた劉は、“秘薬”の実験材料にしようと目論む。
 使用[パワーレベル]はMAX。

return

■♯26「神拾遺(しんしゅうい)」


「悪い予感が致します。どうか、様子を見に行っては頂けませんか」

 ※このシナリオは1945年の史実をベースにしております。筆者は特定の歴史観などに与するものではありませんが、シナリオ中に歴史的なできごとが登場することを好まない方は遊ばないことを推奨します。

 古代の日本は大陸との交流が盛んであり、時に戦火を交えることもあった。そうした戦いの中で、大陸に置き忘れられた《神宝》があった。《九曜家》に仕えるPC1・2(の先祖。【能力値】《アクセス》は同じ。ゲーム的には同一キャラクターとして扱うこと)は、1932年に中国東北部に建国された日本の傀儡国家・満州国に作られつつある透谷(とうこく)神社に仕えていた。

 この神社には、代々《神木》と呼ばれる木を守る役目を負った《神木の巫女》の一人・柳 美澄(やなぎ・みすみ)がおり、大陸に立てられた神社とこの新国家の安寧を祈っていた。
 美澄とPC1・2との関係は主従であり、深い信頼関係があった。
 役目のない日は一人の宮司であるPC1・2は、神社に祖国の安寧と家族の幸せを祈りにくる日本の女学生らとも交流を持ちつつ、日々を送っていた。

 そんな中、満州国の情報将校であるPC3(基本路線としては、PC1・2とは対比となる怪しい男)から「とてつもない力を持つ謎の品が、鴨緑江の川底から上がった。上げた漁師は原因不明の高熱を発して、間もなく息を引き取った」という話が飛び込んでくる。
 調査のために赴いたPCたちは《ニューロマンサー》などの《アクセス》により、その不思議な比礼(ひれ。古代に存在した肩から載せる10〜15センチ程度のかけ布)が、古代に失われた神宝の一つであることを調査する(目標値15。20以上出せば、剣・鏡・勾玉に並ぶ品だということがわかる)。
 そして、然るべき方法で儀式を行わなければ、タタリを為すこともわかる。PCたちも《神宝》のタタリにより、しばらく高熱を発し(演出的なものなので抵抗不能)、苦しむ。だが、不思議なことに美澄は、そのタタリの影響を受けなかった。

 比礼は儀式後、透谷神社に奉納された。太平洋戦争の戦局悪化により、確実に日本に持ち帰る手段がないからである。そんな中、PC1・2は占いを終えた美澄から周囲の様子を見てくるよう、命じられる。
 PC1・2が神社からしばらく来ると、満州に侵攻したソ連軍が遠方から迫ってくるのがわかる。そして、その前方には通信所が見える。通信所には前半で透谷神社にお参りした女学生たち4人が務めていることがわかる。機械化部隊の侵攻速度は予想以上に速く、とても逃げられそうにはない。

 それを悟った彼女たちは、役目を放棄することなく、放送を続けていた。《ファイズセンス》などを使えば、彼女たちが「ソ連軍の侵攻が迫っていること、早期の避難を放送で勧告していること、そしてこの放送がもうすぐ終了すること」を伝えていることがわかる。
 部隊が近づくと、彼女たちは毒薬を取り出す。ソ連軍は報酬として兵士による略奪暴行を認めていたからである。《ホワイトアウト》を行うなら、女学生たちの自決を止めることができる。

 《ホワイトアウト》により部隊の侵攻を止めたなら、ソ連軍の《イモータル》特殊部隊が偵察に来る。
 戦闘は避けられない。【能力値】8/6/5[武器威力]+12[結界強度]100[使用パワーレベル]0〜MAXが二人である。倒せた場合は《マインドシール》などを使って、女学生たちを逃がすことができる(PCの片方だけが、美澄のところに戻る、などを宣言した場合は、《ホワイトアウト》可能な時間には制限があり、一人だけでは女学生たちを逃がしきれないことを伝えること。それでも戻った場合は、PC3とともに帰国不能になる。女学生の方に行ったPCには4人のうち、誰か二人だけを助けられると伝えること)。

 逃がした場合はそのまま日本に帰国するため、美澄のいる透谷神社に戻ることはできない。美澄は《神宝》とともにPC3が脱出させるが、帰国の途は閉ざされてしまう。
 それから61年が経過する。《九曜家》に仕えるPC1・2が先祖の集合写真を見ていると(祖先のことは知っている)、仕事上付き合いがある《Anchors & Ships》台湾支部のPC3(データ的には満州国情報将校のPC3と同じ)より電話がかかってくる。内容は「アジアで行われる裏のオークションに、例の《神宝》が出品されるのだが、出席しないか」というものである。

 PC1・2が上司の剣に相談すると「私に同行して、オークションで《神宝》を入手するのです」と命じられる。PC1・2と剣を出迎えたのは、PC3である。PC3は《Anchors & Ships》日本支部長・小津 香澄に交渉し《ペルセフォーネ》号を出港させる。
 《ペルセフォーネ》号が東シナ海の一点で停止し、しばらく待つと白とダークグリーンに塗装された大型客船がやってきて、横付けする。この客船は《燕州》号といい、♯25に登場した、上海の国際《イモータル》マフィア組織《五爪龍》の持ち船である。PC3は、船内案内を兼ねて、船内を案内する。

 船内にはカジノ、ショッピングモール、プール、映画館、植物園などが存在し、小規模な都市のようである。オークション会場も存在するが、上海出港後に開催するとのことで、何も置かれていない。
 PC3は、自分の仕える長老、ヘンリー・チャンにPC1・2が粗相しないように注意しながら、連れて行く。老人でありながら、圧倒的な威厳を持つチャンは遠方から来たPCたちを労いつつ「懐かしい顔を見た」と言う。少年時代に接した日本人に、よく似た男たちがいたのだという。

 PCたちは特別室で過ごしながら、船は上海に入港する。すると、船の一部で騒ぎが起こる。美澄によく似た面差しの少女が、日本語で何か書かれた箱を持ちながら、船内を走っているのだ([一般人判定・感覚系]で達成値20か、《フェアリーアイズ》《ファイズセンス》などで達成値15を出せば、箱に《神宝》を入れているのではないかと推測できる)。その速度は尋常ではなく、《アクセス》を使っていることが見て取れる。
 追うマフィアたちがとても追いつけないため、銃を取り出すが、上役のマフィアが制する。PC3は中国語がわかるため「あの品を扱えるのは、あの娘だけだ。殺すな」と言っているのがわかる。

 PCたちが追いかけるなら、下記の【能力値】を基本に[対抗判定]を行うこと。3回判定に失敗すると船外に出られてしまう。船外に出られたなら、上海市内の雑踏に入られてしまうので、見失ってしまう。
 そこでの《ファイズセンス》などの捜索判定で失敗した場合は、任務が失敗してゲーム終了となる。
 捕まえることができたなら、事情を聞くことができる(《ニューロマンサー》などを持たない場合、PC3以外は会話に参加できない)。みすぼらしい身なりをした少女――胡 彩春(こ・さいしゅん)は「放してっ! この《神宝》を元ある場所に戻さないと、大いなる災いが起こるって、おばあちゃんが言っていたの!」と訴え、もがく。PCたちが敵意がないことを示し、自分たちの立場を説明できるなら(古びた写真を見せるなど)、彩春は納得する。どちらにせよ逃走のさいに、わずかに封がずれ、60年間祭られなかったタタリが爆発的に膨れあがる。《ホワイトアウト》しなければ、その強大な力で《燕州》号は二つに折れ、沈没する。

 《ホワイトアウト》した場合、無数の蛇を集めたような黒いものが巨大な人型となり、船外で結合する。
 このタタリの化身と戦い、倒せたならヘンリー・チャンは「思い出した。あの通信所に現れた日本人だ。子供だったわしは、攻めてきた軍隊が怖くて怯えていたよ。そのときに、おそらく……お前さんたちの祖先が戦い、結果として守ってくれたんじゃな」と言い「《神宝》はお前さんがたに任せる。扱い方を知っておるようだしな」と言って、《神宝》をオークションなしで譲ってくれる。

 どちらにせよ《神宝》は彩春以外が触るとタタリで人死がでるため、PCが彩春をどう説得するかで、結末は変わる。故郷で《神宝》を守っていくなら、彩春の護衛が必要となる。
 日本に《神宝》ごと連れ帰るという説得でも、彩春は了承する。

 

◆DATA

[重要NPC]柳 美澄(1928〜1999)
[感覚系一般人判定]+9
[結界強度]

 61年前に満州国の透谷神社で巫女をしていた女性。1945年時には17歳。《イモータル》能力は持たないが、極めて強い占いの能力を持つ。長髪でほっそりとして小柄の美少女。
 思いやりが深く「身体が大きな殿方がお食べなさい」と、配給を分けてくれたりする性格。下記で紹介する胡 彩春の祖母にあたる。《九曜家》に連なる巫女は、本来結婚できないのだが、仕えるべき神木がソ連軍により焼かれたため、脱出を手伝ったPC3と添い遂げることになる。


◆DATA

《イモータル》胡 彩春
【強度/制御/反応】8/11/6
[結界強度]140
[武器威力]+24
保有アクセス:《クンフーマスター》《ハイドインシャドウ》《ジャンピングジャック》

 美澄の子孫である、中国人の少女。16歳。美澄とは対照的に活発な性格をしているが、思いやりが深いところは一緒である。外見も美澄によく似ている。父親が作った借金の形として、《神宝》と一緒に売買されようとしていた。使用[パワーレベル]は1〜MAX。


◆DATA

《タタリの化身》孤黒
【強度/制御/反応】18(180)/−/5(50)
[結界強度]230(2300)
[武器威力]+36(+360)
保有アクセス:《ウィル・イリュージョン》《ブレイブエッジ》《ミスティックボディ》《ファイズセンス》《ルーニークラウン》《ウォールウォーカー》

 祭られない《神宝》が起こしたタタリが形を為したもの。身長5メートルの巨人だが、その全身は黒い蛇の集合体であり、信じられないほどの柔軟性がある。
 この《神宝》自体は三種の神器と同じ時期から『この世界』に存在する、想像を絶する力を秘めた品物であり、完全にその力が解放されることがあれば(彩春が殺された場合など)、()内の【能力値】になる。
 使用[パワーレベル]はMAX。

◆DATA

《イモータル》ヘンリー・チャン
【強度/制御/反応】50/51/29
[結界強度]130
[武器威力]+153
保有アクセス:《エルダースピリット》《ブライトライト》《ハンター》《スローイングエッジ》《クンフーマスター》《トリックアームズ》《ウィスパリングパスト》《スイートアロマ》《ルミナス・ダークネス》《ブルーウォーター》《フットルース》《ニューロマンサー》《リスキーリミット》《マインドシール》《ハイドインシャドウ》

 上海に存在する国際《イモータル》マフィア組織《五爪龍》の長老。
 裏社会でありながら、古風な考えを持っており、法は破っても極悪非道には手を染めない人物である。一度同胞としたものは組織を挙げて協力するが、裏切者には死の制裁を与える人物でもある。上記の能力には現れない、薬品関係への深い知識も併せ持つ。
 使用[パワーレベル]は1〜MAX。

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■♯27「祝詞(まがうた)」


「わたし……コンサート、やりたいんだ」

 《九曜家》に仕えるPC1は、芸能プロダクションを経営していた。元々マスコミ対策として、その立場にあったのだが、当主・珠子の占いにより、「ある歌」を歌える人材を捜していたのである。
 その「歌」とは、ある地脈の乱れを鎮めるための祝詞(まがうた)であった。ある収穫がなかったオーディションの帰りに、PC1は足を止める。その「歌」の特長を活かすことのできる歌声が聞こえたから。

 《Anchors & Ships》に所属する大学生のPC2・3には近所に住む幼なじみの少女がいた。名前を杜宮 縁(もりみや・ゆかり)。PC2・3より2歳年下の高校生である。三人は小・中学校が同じであり、合唱部の部活動を通じて交流があった。縁はPC2・3を先輩として立て、前向きな人間関係があった。
 縁には図抜けた歌唱力があり、将来は人を喜ばせるために歌手になりたいという夢をより話していた。「いつか三人でユニット結成なんて、できたらいいですねぇ」。
 そんな時、PC1が現れる。PC1は、《九曜家》の主命により動いているため、何としてでも「歌」の歌い手である縁をスカウトしなくてはならない。説得方法はPC1に任せるが、縁はPC1がPC2・3に配慮していたなら、そのスカウトを受ける。デビューした縁はその独特の声質により、間もなく国民的アイドルとして認知されていく。

 そんなある日、PC1は《九曜家》に定期報告のため、訪れる。対応した珠子はPC1が作曲した縁の新曲を「今、学校で流行っているんです。いい曲ですね」と聞いていたが、ある一か所で眉をしかめ、曲を止める。
 「少し……強すぎる歌ですね。祝詞の歌い手にこの歌詞は……危険かもしれません」。急遽占いをした珠子は、地図上のある一点を指さし「この辺りで、地震が起こると思います。この辺りから、人を遠ざけてくださいませんか」。PC1は該当地域の人を集めるため、急遽イベントを企画する。該当地域では数年前、大きな地震が起こっており、「被災地激励コンサート」という名目となる。

 一方、PC2・3が家にいる時に、変装した縁が訪ねてくる。縁は「わたしの家に……こんな手紙が来たんだ」。手紙の内容は「コンサートを中止しなければ、杜宮 縁の命はない」というもので、昔の探偵小説のように新聞の切り貼りをつなげたものである(PCが達成値20以上で《ウィスパリングパスト》を使うなら、神社の中のような場所に古新聞が集まり、それを手にした人ではない黒影が見える)。
 縁は手紙の内容に不安を覚えながら「被災地の人を激励するために行うコンサートだもの。中止したくない。わたし……コンサートやりたいんだ。人に喜んでもらいたいから、歌っているんだから。ねぇ、どうしたらいいかな」と言う。中止する場合は、後ほどの記述となる。

 コンサートを行うべきだと言った場合は、《Anchors & Ships》日本支部長の小津 香澄より「そろそろ定期報告をしにくるように」との電話がくる。脅迫状について香澄に報告したなら、「気になるから、ちょっと見せに来て」と言われる。見せた場合は、前述した光景を香澄が《ウィスパリングパスト》で再現し「また、おばけ絡みの事件みたいね……。非科学的だわ。ちょっと待ってね」と《九曜家》に電話する。
 話がついた香澄は、PC2・3を「《九曜家》のPC1という方に、話を通したから、現地に行ってちょうだい」と依頼する(互いの正体を知らないなら、びっくりする演出を振るといい)。

 PC2・3は縁と共に被災地を訪れる。PC1の参加者に配慮した企画と(年齢が高い人向けの歌をメニューに含めたり、バリアフリーに務めたり)、縁の国民的人気により、珠子が予言した地域からはほとんどの人影がなくなるような事態となり、県営球場に設けられた特設ステージは超満員となる。
 そして、コンサートが始まろうとしたとき、PCたちは異様な気配を感じる(《フェアリーアイズ》で達成値15以上。出ない場合は、事件の証拠隠滅が難しくなる)。《ホワイトアウト》すると、その存在は《同調》し、県営球場のバックスクリーンに舞い降りる。

 現れたのは西洋風の黒マントに身を包み、死神の鎌を手に持つ怪人だった。だがその顔には能面があり、異様さを際だたせている。怪人は「このような場所には、確かこのような姿、でしたかな? 封じられてから数百年、潜みながら恨みを研ぎ、時を待っておりました。研いだ力で地震を起こし、ようやく封じの石がずれてきたというのに、我が力を弱める祝詞など……困るのですよ。もう少し、もう少し時を得ればより大きな地震が起き、戒めが完全に解かれるのです。人々は悲観にくれ、我ら闇に潜むモノに過ごしやすい土地となります。特に……そこな娘の命を奪えば、さぞかし、この国にはびこる者たちに悲しみが満ちることでしょう。それは、古にあるべき国を奪われ、追われた我らの喜びとなる」。

 怪人と対決し勝利したなら、勾玉に封じ込めることができる。戦う前にPC1が怪人の立場を認めていた場合(例えば「過去にあったことでは、あるいはそちらに正当性があったのかもしれない。だが、今ある秩序を守らねばならないのが、我らの立場。我らがこの戦いを制した場合でも、そなたを古き神として祀ろう」など。ポイントは「相手の立場に理解を示す」「神として遇する」「祟りが起こらないよう、祀る」こと)、勾玉に封じることなく、土地神としてこの地域を保護する存在となる。

 世界設定としては、この存在を封じないほうが《九曜家》当主・珠子の負担が減る(アーカーシャが勾玉封じを代行しているが、敵対的な勾玉が多いと結界維持の負担が増えるため、珠子がアーカーシャ休息のために結界内に戻る頻度が増える)。

 なお、コンサートを中止した場合は、怪人は復活しないが、断続的に地震が起こる。珠子が占うことで、封印となっている石がずれていることがわかる。
 封印を戻しに行くと、怪人がそれを留めようと具現化して戦闘になる(()内の【能力値】で処理すること)。

◆DATA

[重要NPC]杜宮 縁
[感覚系一般人判定]+9
[結界強度]

 《祝詞》を歌う素質を持つ少女。PC2・3と幼なじみ。性格はおっとりしているが、正義感が強い努力家である。人々を元気付けるような歌を歌いたいと願っている。


◆DATA

《タイラント》闇に潜むモノ
【強度/制御/反応】6(9)/8(11)/9(12)
[結界強度]160(240)
[武器威力]+24(33)
保有アクセス:《ブレイブエッジ》《ハイドインシャドウ》《ジャンピングジャック》《ルーニークラウン》《ウォールウォーカー》

 かつて《九曜家》に封じられた《妖物》で、古き時代の神々の一人神。好奇心が強く、限定された力で現代の情報を収集しているため、現代人に近い感覚を持つ。使用[パワーレベル]は1〜MAX。

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■♯28「原罪なき贄」


「あなたとあの子のおかげで……狂わずにいられました」

 舞台は美浦市。PC1は《Anchors & Ships》の協力者である高校生。PC2と3はPC1を指導する立場の《Anchors & Ships》インストラクター。16年前、PC2には幼なじみの新妻・純子がいた。純子は妊娠しており、二人はとても幸せだったが、ある日突然失踪してしまう。
 夫婦仲は極めてよく、原因はまったく思い当たらなかった。PC3はPC2の妻・純子の兄である。二人は必死に純子を探したが、行方はようとして知れなかった。

 16年後のある日、PC1は思い立って千鳥神社にお参りに行くことにする。すると、手を合わせて目を開けたとき、《ホワイトアウト》現象が起こる。そして、高校生くらいの巫女姿をした少女が突然目の前に現れる。
 少女は全てが物珍しい、というように辺りを見回し、PC1を見るとびっくりして飛び退く。見逃せないことに、少女は《パッシブウォール》による結界を展開している(GMは必要であれば[ベクトルカード]効果4を使用し、《Anchors & Ships》は覚醒した《イモータル》を保護する義務があることを伝えること)。
 PC1が少女に声をかけると、少女はPC1をまじまじと見て「ああ……他に人がいますね。すごいなぁ」と目を丸くする。名前を聞くと、(PC2の名字)千里と答える。住所を聞くと「白い霧のかかった山にいました」と答える。
 所属組織とか、家の住所を尋ねてもチンプンカンプンというような顔をして「よく、わかりません。すみません」と謝る。本シナリオの舞台となる美浦市のことを聞いても同様である。

 千里は記憶喪失ではない。それは「どこで、何をしていたのか」について明確な答えが返ってくるからわかる(例「3日前ですか? 滝で沐浴して、ご飯を食べました。献立はゆでた卵と塩キャベツ。あとハチミツを入れた牛乳です」)。また、なぜここに来たのか、という質問には「お母さんが血相を変えて『ここにいると危険だから、お逃げ』といって、わたしを送り出したんです。お母さんが心配だけど、わたし、どうしていいのか……」と答える。
 ともかく、《Anchors & Ships》に相談する必要がある(そんな話をしているうちに《うさぎ穴》は閉じてしまう)。《ペルセフォーネ》号で訓練中のPC2、3に連絡すると、横で訓練の段取りを伝えていた日本支部長・小津 香澄が「すぐに連れてきなさい」と指示する。

 千里は栄養失調に近く、顔色が優れない。聞くと「この2日間、“浄めの儀式”で、水以外は口にしていないんです」と訴える。なお、千里はPC2の妻、PC3の妹の若い頃に酷似しており、声もよく似ている(そのことはPC2、3のプレイヤーに必ず伝えること)。母の名を聞けば「(PC2の名字)純子です」と答える(特長を聞いても、失踪した妻と同じである)。
 ちなみに千里自体、PC2が「女の子だったら」と考えた名前である(ゲーム開始前に、PC2のプレイヤーに千里の名前、PC3のプレイヤーに純子の名前を考えさせてもよい)。
 彼女を《ペルセフォーネ》号に連れていき、食事を供した場合、卵と牛乳以外は口にしない。それ以外は「すみません……これと、これは食べてはいけないと言われているんです」と答える。
 彼女が食べられるのは、卵と牛乳、ハチミツ、キャベツやレタスの外周にある青い葉、種のある木の実と果物だけである。[一般人判定]《感覚系》なら[達成値]20、《ブルーウォーター》なら[達成値]15を出せば、食べ物の共通点がわかる。それは「命を奪わなくても食べられる食べ物」であることである(誰もわからなければ、香澄が気づく)。

 千里は人に慣れない様子であり、戸惑いを見せるがPCたちには心を開く(「なぜかわからないんですが、ほっとするんです」)。千里に“浄めの儀式”について聞くなら「包丁を持った恐ろしいおばあさんが、そういろって言ったんです。母が隙を見て逃がしてくれたんですが……ひどいことされているかも!」と動揺する。何かあれば母に手をあげる、恐ろしい老婆だったのだという。
 PCたちが原因調査のために動こうとすると、《ホワイトアウト》現象が起こり《うさぎ穴》が開く。  《うさぎ穴》からは昔話に出てくるような餓鬼が6体振ってくる。餓鬼は《ペルセフォーネ》号甲板に降り立ち、千里を奪おうとする。PCたち以外の援軍は3ラウンド経過後に現れる。もし3ラウンド経過したなら、判定なしで戦闘を終了させても構わない。なお、もし千里に「食べられるもの」以外を食べさせていたなら、開いた《うさぎ穴》より恐ろしい声で『……お前たち、とんでもないことをしでかしてくれたね。これで16年の苦労が台無しさね。死を持って償ってもらうよ』という声が響く。
 餓鬼の強さは【強度/制御/反応】3/−/3、[武器威力]+6、[結界強度]30である。

 餓鬼を倒すと、香澄は《うさぎ穴》の探索を指示する(連載第7話が近い時期であり、PC以外の戦力を割く余裕はない)。千里は道案内を志願する。連れて行くかはPC次第。ストーリーに影響はないが、連れて行く場合は、体調が優れないのに連れて行くことになるので[デザイア]を+1D6増やすこと。
 《うさぎ穴》の向こうは、霧に包まれた山がある。牧場となっており、牛や鶏の姿が見える。木々には蜜蜂が多くおり、巣が垂れ下がっている。千里がいればスムーズに、いない場合は《感覚系アクセス》で[達成値]20を出せば、純子がいるであろう古い家が見つかる。判定に失敗した場合は、後述する。
 家に近づくと、恐ろしい老婆の声がする。それは包丁と棒を持った山姥であり、怒り狂った様子である。山姥は怒りにまかせて純子を木から吊し、棒で叩いている。
「もう少しで、汚れなき命を噛み締め、すすり、永遠の美貌を手に入れられたんだ! それを、お前のせいで!! ええい、忌々しい女め、いっそくびり殺してくれる!!」
 そうわめき、包丁を振り上げる。前述した判定に成功していたなら、この場面の途中で割り込むことができる。もし失敗していたなら、純子の命に別状はないが、頬に深い切り傷ができる。

 このシナリオでは、山姥に説得の余地はない(千里を引き渡せば、見逃してくれるが)。山姥を倒せたなら、純子はPC2を見て、ぽろぽろと涙を流し、すがりつく。「16年、信じていました。あなたが必ず来るって。でも、あなたとあの子がいなかったら……狂っていたかもしれませんでした。子供って、家族って、尊いですね」と言って。
 山姥の作りだした《異界》は崩壊し、16年ぶりの家族の一時が戻ってくることになる。

◆DATA

[重要NPC](PC2の名字)純子
【強度/制御/反応】2/5/3
[結界強度]20
[武器威力]なし
保有アクセス:《ブルーウォーター》《ウィスパリングパスト》《サウザンマイルサイト》

 PC2とは幼なじみで結婚した妻。PC3の妹。少し古風で礼儀正しい性格。夫と娘・千里を誰よりも愛し、守るためなら命でも賭ける気丈な女性。山姥に拉致され、千里をかばいながら、育ててきた。千里を喰うという山姥の目論見を察し、命がけで逃がした。年齢は38歳。


◆DATA

[重要NPC](PC2の名字)千里
【強度/制御/反応】1/4/5
[結界強度]20
[武器威力]なし
保有アクセス:《ファイズセンス》《ハニーボイス》《ドギードック》

 PC2と純子の娘。純子を拉致した山姥の恐怖に晒されつつも、必死に自分を守ってきた母を強く愛している。そのために、過酷な生育環境にも関わらず、歪まずに育った。素直で真面目な性格である。  成人後、山姥が喰らうために育てられているため、死穢(しえ。死の穢れ)を持つ食物を一切与えられたことがない、“穢れなき者”である(だから巫女服を着ていたのである)。年齢15歳。


◆DATA

《タイラント》鬼切の山姥
【強度/制御/反応】9/12/4
[結界強度]250
[武器威力]+21
保有アクセス:《シャープエッジ》《スイートアロマ》《ファイズセンス》《ニューロマンサー》《ハイドインシャドウ》

 この日本に多く潜む《妖物》の一人。《Anchors & Ships》流に言うなら、『この世界』由来の《タイラント》。《ニューロマンサー》で《ホワイトカオス》から引き出した情報を元に、永遠の美貌を得る方法を実行しようとする。
 それは、一切の死穢(しえ。死の穢れ)を持たない生命を育て、その生命力が絶頂のときに喰らうというという、忌々しい方法である。
 罪なき命を喰らうことにより、数百年を生き延びてきたこの《タイラント》にとって、千里を育てるための16年など大した時間ではないのだ。
 使用[パワーレベル]は1〜MAX。

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■♯29「漂流学校」


「知識と精気が同時に手に入るとは、慶事なり」

 舞台は地方の寂れた寒村・戸高村。この村にある戸高中学校は、人口減少による生徒減少と市町村合併が進められたことで、今年限りでの廃校が決定した小さな分校だった。
 全校生徒を合わせても15人という状況では仕方がないと、地域住民も廃校を受け入れていた。PCは戸高中学校に通う生徒と、赴任したばかりの教師となる。
 教師は《九曜家》から派遣された。この地域の住人は、古来神域とされた戸高山を近くに持つため、《イモータル》への覚醒率がかなり高いのである。そのため、《イモータル》能力への覚醒者が出た場合、適切に指導するという任務を帯びて赴任したのであった。だが、都会の人間であるため、生徒たちとの人間関係はまだ深まっていないのが悩みどころという初期状態である。

 そうした状況を見て、全ての事情を理解し、さらに村の有力者でもある校長先生(PCでも構わない)は、村祭りの企画参加をPCの教師と生徒たちに依頼する。依頼内容は村祭り(小さな村なので学園祭を兼ねている)で「どんな出店を担当するか」である(プレイヤーに自治体担当者や仕入れ業者など、大人たちのNPCを担当させること)。PCの協力により、村祭りの出店は成功を収める(企画内容によっては、成功しなくても構わないが)。
 戸高中学校最後の大イベントも終わり、後かたづけのためにPCたちが学校に戻ったとき、業者が学校の取り壊し調査のために、地質調査を行う光景を目にする。そして業者が地面を掘ったさいに、異変が発生する。

 PCたちは強力な《ホワイトアウト》が起こり、周囲が《うさぎ穴》に引き込まれていくのを感知する。気がつくと、PCたち以外の人間はすべて白く凍り付いており、そして学校は見知らぬ古びた館の中庭に立っていた(教師が《ニューロマンサー》《ブルーウォーター》などの判定で、達成値20が出たなら『この世界』に寄生する形で《異界》を構築した《タイラント》の仕業だと推察できる。世界法則が一部『この世界』と重なっているため、一般人は凍結される)。事態を重く見た校長先生が、PCたち(つまり《ホワイトアウト》を機会に覚醒した少年少女)を集め、PCの教師と共に“特別授業”を開始する(これにより、《イモータル》としての基礎知識・能力を使いこなせたということになる)。
 “特別授業”が終わったころ、学校の校庭に4匹の餓鬼が進入してくる。餓鬼は校庭で地質調査を行っていた業者の作業員二人をこれから解凍し、食べようとしている。PCが止めないなら、作業員は次第に解凍され、発狂しながら食べられてしまう([暴走抑制点]を−12D6すること)。
 止めようとした場合、餓鬼は「こちラのほうが、面倒がなイ」と目を輝かせ、襲いかかってくる。【能力値】は【4/−/3】、[武器威力]+8、[結界強度]30、使用[パワーレベル]1〜2である。

 PCたちが戦っている間に、周囲の屋敷から触手が伸び、同級生の少女・片岡 一葉(かたおか・かずは)が凍り付いた状態のまま、拉致される。止める場合は[ワイルドカード]による追加行動が必要。触手(【能力値】は【5/−/1】、[武器威力]+10、[結界強度]40、使用[パワーレベル]2)をそのラウンド以内に倒すことで、拉致を防げる。
 拉致が失敗した場合は、鴉の顔を持つ翼を持った獣人の、巨大な幻影が現れ「邪魔立てする者も減ったと思い、仕掛けてみれば、まだ力ある者がいましたか。まあよい。貴方がたの息の根を止めれば、思う存分、年若い脳を喰らい、知識と精気の双方を満たせるのですから。むしろ慶事」と宣言する。

 館は平安貴族が住まうような平屋であり、塀などはないため、屋内への侵入は容易である。ただし、建物内はものすごく広大であり、かつ同じような作りとなっているため、《ドギードック》などの感覚系《アクセス》で達成値25以上を出さないと、鴉の獣人の居場所がわからない。
 なお、一葉が拉致された場合は、餓鬼5匹が行く手を阻む(獣人が一葉を解凍し、喰らって力とする間の時間稼ぎである。戦闘に4ラウンド以上かけるか、前述の捜索判定に失敗した場合、一葉は助からない)。拉致できなかった場合は、餓鬼たちは鴉の獣人の横にいる。
 館の大広間に鴉の獣人はいる。獣人は鉢に植えられた食人植物に、餓鬼か(拉致に失敗した場合は)一葉の血をあげている。植物は触手を伸ばし、PCがいなくなった学校の生徒たちを拉致しようとしている(校長がNPCの場合は、これを防いでいる)。
 ここでは鴉の獣人と食人植物と戦闘になる。なお、餓鬼たち(拉致に成功した場合は1匹、そうでない場合は6匹)は戦闘に参加しない。餓鬼たちは食人植物の[結界強度]が半分になった場合、自ら喰われることで、[結界強度]を1匹につき30回復させるためにいるのである。

 鴉の獣人を倒したなら《異界》は崩壊し、学校は元の場所に戻る。PCが望むなら、学校の廃校は止められないが、PCの教師か校長が《九曜家》に働きかけることで、建物を公民館として残すことができる。

◆DATA

《タイラント》暁鴉(あかつきがらす)
【強度/制御/反応】10(15)/−/8(10)
[結界強度]180(250)
[武器威力]+20(+30)
保有アクセス:《ティア・ディメンション》《クンフーマスター》《ファイズセンス》《スローターハウス》《ジャンピングジャック》

 《九曜家》と敵対する《妖物》のひとり。脳を喰らうことで、自らの知識を増大させ、寿命を延ばす能力を持っており、知識欲から人を喰らってきた。戸高村の人口減少により、監視が弱まったことから、百年ぶりに人喰いを再開しようとしている。戦闘方法は卓越した運動能力による格闘術。その拳は触れたものを破砕する。データの()は一葉を食べた場合。使用[パワーレベル]は1〜MAX。


◆DATA

《異界の植物》食人夏草
【強度/制御/反応】8/−/2
[結界強度]100
[武器威力]+16
保有アクセス:《インフェルノ》《トリックアームズ》《スイートアロマ》《ハイドインシャドウ》

 《タイラント》・暁鴉が飼う、危険な植物。人肉を食べさせることで、至高の美味である実を付ける。鉢植えで飼われているが、無数の触手と口を持ち、影を伝う力があるので、侮れない。
 使用[パワーレベル]は1〜2。


◆DATA

[重要NPC]片岡 一葉(かたおか・かずは)
[行動系一般人判定]+3

 PCたちの通う、戸高中学校の同級生である少女。スポーツ万能・明朗活発であり、PCたちと一緒に山野を駆け回ってきた幼なじみ。戸高中学校の廃校に心を痛めており、高校に陸上の特待生で入学して活躍し、「今の自分があるのは、戸高の中学校時代があったからです!」と言うことが目標。夢はプロ野球選手(プロ野球は女性選手も認めている。女性選手がプロテストに受からないだけである)。年齢14歳。

return

■♯30 「天使の種」


「わたしの中には、しあわせのモトがはいってるの」

 ある日、少年は記憶喪失の少女を拾う。彼女は自らの名前を「てん」とだけ名乗り、自身の中に
は宝物が入っているのだというが、それ以外は何も覚えていない。

 紆余曲折を経て、少年はてんを連れ、《Anchors&Ships》を訪れる。
 小津 香澄以下《Anchors&Ships》のスタッフはてんの保護に同意し、彼女の記憶のリハビリを始める。
 てんは少年の働きかけで、さまざまなことを新たに覚え始める。また《Anchors&Ships》の医療スタッフはてんが何故記憶を失ったのかの検査を始める。
 検査の結果、てんは記憶が3日しか持たないこと、そして、記憶が消えるたびに演算能力が上がっていくことが判明する。また、時を同じくして《Anchors&Ships》の調査で、《イモータル》の数学者、宗田 直(そうだ・なお)の娘、典子(のりこ)であることが判明する。

 宗田は数学界では鬼才と名高い人物だったが、自身の病と数的能力の限界に学会を去った。
 個人となった後も宗田は研究を続けていたが、早晩、自身の死期を悟る。
 宗田は自身の研究の補完のために、数学者としての経験値の低い典子に《イモータル》能力で入手した数学的知力を増加させる結晶を埋め込んだ。これは自身亡き後の典子の幸せを願ってのことでもあった。
 しかし、宗田の意図に反して結晶は、人としての思いやぬくもりを糧に成長し、典子の記憶を蝕んでいった。結果、典子は一番暖かい記憶──宗田が典子を呼んだ愛称の「てん」という言葉──だけを残して街を彷徨っていたのである。

 彼女の記憶を取り戻すには、彼女から結晶を取り出し、結晶を溶かすことで記憶を還元させるしかない。
 しかしこの結晶は、典子が父親の宗田から受け継いだ唯一の遺産であり、このまま上手く成長を続けることができれば、歴史上追随を許さない演算機を人類は手に入れることができ、さまざまな分野に貢献することができることは間違いないのである。

 推奨PCはてんを拾った少年(たち)、学校の数学教諭、《Anchors&Ships》関係者。

◆DATA

《情報体》「結晶」
【強度/制御/反応】7/5/8
[結界強度]100
[武器威力]+14
保有アクセス:《ニューロマンサー》《ノイズィームーン》《ブルーウォーター》《ヴァンパイア》

 結晶は意志を持たないが、自己保存本能があるため、攻撃を受けると反撃する。
 《ヴァンパイア》は相手の記憶や精気を破壊し、結晶自身のソースにすることを示す。
 使用パワーレベルは1〜2。

主要NPC「てん」
[結界強度]0
[感覚系]の一般人判定に+3修正

 本名、宗田 典子。14歳。ふわふわした幼い感じの残る少女で、数日前に他界した父・宗田 直とは幼少期から父子家庭だったこともあり、大の仲良しだった。父に憧れ、将来は数学者になりたいと願っている。
return

■♯31 「愉快な誘拐」


「お母さんがぼくの事なんて心配するもんか」

 美浦市内で、奇妙な連続誘拐事件が起きた。
 誘拐されたのは小学4年生から中学2年生までの子どもだが、その子どもの家は特別裕福でもなく、共通点はない。

 誘拐犯が身代金として要求するのは金銭ではない奇妙なモノだった。……奇妙なモノ、それは誘拐された子どもがその親たちにとってどれだけ大切かを証明する物品だった。
 誘拐犯は人の思い出の品にこもった思いを糧にする魔物。《彼》は昔から市内の旧家に棲んでおり、そこでのんびりと暮らしていた。しかし、その屋敷が先日取り壊されて、歴史ある土蔵がなくなってしまった結果、食べる物がなくなってしまったのである。
 魔物は夕暮れの町の影の中、消滅を待ちながら漂っていたが、一人の家出したばかりの少年、幸村 智之に出会う。

 智之は両親が自分に関心がないと信じていて、居場所がないと思いこんでいる。それに魔物は自分と同じ境遇と同情してしまった。結果、智之と一緒に「居場所がない」と感じている子どもたちに、「自分たちに誘拐されて、親を試す」ことを了承させていたのである。

 推奨PCは智之や誘拐された子どもの家族やクラスメート、学校の教諭、《Anchors&Ships》関係者、《九曜家》から派遣された《備》以下クラスの調査員。

◆DATA

《魔物》「くらのぬし」
【強度/制御/反応】8/6/4
[結界強度]190
[武器威力]+16
保有アクセス:《ヴァンパイア》《ウィスパリングパスト》《ナックルトーク》《ハイドインシャドウ》

 200年以上続いた旧家の土蔵に棲んでいた魔物。どうして自分が発生したのかは覚えていない。
 智之に同情して子どもたちを“誘拐”し、子どもたちの家に身代金要求をした。なお、うけとった身代金の物品は「くらのぬし」が大切に保管しており、話の持って行き方では物語の最後には返してくれる。
 なお、タチの悪い思い出(誰かが酷い目にあった記憶や悲しすぎる思い出)を食べると暴走して暴れ出す。

主要NPC「幸村 智之(ゆきむら ともゆき)」
 [感覚系]の一般人判定に+3修正

 中学2年生の14歳。両親が共稼ぎで、朝は一人で朝ご飯、夕飯は冷凍食品をチンして食べるという生活を小学校4年生からしている。学力も運動能力も中の中。静かな生徒で、担任からも影が薄いという印象を持たれている。内面は優しく、寂しがり屋。
 なお、智之の両親は仕事が忙しいだけで、智之のことを大切に思っている。ただ、智之の誘拐声明は母親の留守電操作のミスで伝わっていない。
 智之の不在は、衣類がまとまってなくなっているのを見て、「連絡はなかったけれど、夏休みだし、どこかに泊まりに行っているのだろう」と考えていた。

return

■♯32 「裏山にUFO?」


「私はUFOと宇宙人の存在を学会に突きつけてやるのだぁ!」

 小学生の間に、ある噂が流れた。千鳥山の中腹にUFOがいて、宇宙人がそこを侵略拠点にしているというのである。噂に誘われて何人かの小学生が千鳥山に出かけていった。が、そこにUFOを発見した者はいなかった。しかし、一人の小学生 桑原 悠斗(くわばら・ゆうと)は昆虫採集に出かけた折、偶然UFOらしい建造物と宇宙人らしい生命体(?)を発見してしまう。
 この事件より少し前に、『元』博士、榊原 一成(さかきばら・かずなり)が消息を絶っていた。榊原には妻と高校生の子供が一人いるが、金にならない実のない(と妻子は考えている)研究ばかりしている榊原に愛想を尽かして出て行ってしまっている。

 千鳥山のUFOとは、《タイラント》能力を偶然身につけた榊原が作った《ネヴァーランド》の一部のことだったのである。
 榊原はUFO型の要塞を作り、宇宙人の姿をした兵士を作って、現実世界へ侵略しようと企てている。そして、榊原の論文をバカにした科学者たちに復讐しようとしているのだった。

 なお、榊原の学位に『元』がつくのは、あまりにも荒唐無稽な宇宙に関する論文を学会に提出し続けたため、学位を取り上げられたからである。
 推奨PCは悠斗の兄弟やその友人、《Anchors & Ships》関係者、榊原の子供など。

◆DATA

《タイラント》榊原 一成(さかきばら・かずなり)
【強度/制御/反応】10/−/2
[結界強度]120
[武器威力]+20
保有アクセス:《ニューロマンサー》《ノイズィームーン》《ブルーウォーター》《パペットマスター》

 「宇宙好きな少年はお勉強をいっぱいして学者になりましたが、ロマンを感じる対象は少年の時と変わらず、気が付くと変なおじさんになっていました」という人物。基本的に人は悪くないし、ノリもイイが、思いこみが激しく、こうと決めたら一歩も引かない頑固な壮年男性。
 妻が子供を連れて市内の実家へ帰ってしまったことがきっかけで、偏屈さに磨きをます。
 宇宙人の兵隊が1000人になったところで美浦市への侵攻を開始しようと考えている。

主要NPC「桑原 悠斗(くわばら・ゆうと)」
 [運動系]の一般人判定に+3修正

 昆虫が大好きな小学4年生。千鳥山中腹で昆虫採集中、足を滑らせ、たまたま開いていた榊原の《ネバーランド》へ入り込んでしまった。
 展開次第で榊原と友達になりえる柔軟な発想力を持つ。この場合、悠斗は榊原の宇宙人による侵略は良くないことなんじゃないかと思っている。が、それを言うと榊原がへそを曲げそうなので、口には出せない。

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■♯33「椿座の客人」


「横着者には困りましたわね……」

 怪奇現象が続発することで有名な劇団・椿座。
 秋の公演を前に奇妙な『先生』が現れた。その先生は、声も姿もない。ただ、台本の中に現れるのだ。若い劇団員が稽古中の台本を椿座に忘れて帰ると、翌日には要所に演技指導が鉛筆で書き込まれているのである。

 その指摘の的確さや丁寧さ・細やかさは、多忙な座長の滝浪 啓一郎(たきなみ・けいいちろう)からの教授では得ようのないものだった。その書き込みを気味悪がりながらも、内心喜んで台本を置いて帰る団員は若手以外にも増え始め、第二の事件が起こる。
 第二の事件。それは置き忘れた台本全てがなくなってしまい、練習場の真ん中に「わざと台本を置いて帰るような不心得者には台本は要りませんわね」と鉛筆で描かれたわら半紙がおかれていた、というものだった。

 『先生』の正体は、椿座のオープンから通い詰めていた常連客・繁村 歌津子。歌津子は大学で演出の教鞭をとっていたが、定年を迎え、余生の余暇を椿座の客席で過ごしていたのである。しかし、彼女は7年前に享年82歳で他界している。……つまり、死んでなお、椿座の常連をしていたのである。
 歌津子(の幽霊)は椿座と繋がってしまった小さな《ネヴァーランド》に住んでおり、現状に満足している。台本を返してもらうには、歌津子を探し出してお願いするしかない。その時に歌津子が出す課題をこなせさえすれば、台本を無事帰してもらえる。

 推奨PCは椿座の劇団員やその友人、《Anchors & Ships》や《九曜家》の関係者。

◆DATA

《幽霊》繁村 歌津子(しげむら・かづこ)
【強度/制御/反応】5/15/6
[結界強度]110
[武器威力]+10
保有アクセス:《ウィスパリングパスト》《クールアイズ》《クルーレスジャッジ》《ドッペルゲンガー》

 大正生まれにして大学で演劇を学んだ女性。人柄は穏やかでありながら、芸術に対して妥協のない眼差しを持って生きた。結婚もし、子や孫にも恵まれ、生前はただの椿座の常連客として過ごす。
 座長の滝浪も歌津子を演劇好きな品のよい老女、と言う認識を持つに留めていたのだが、死後、本人が望んだ訳でもないが、気がつくと椿座で地縛霊になっていた。
 台本に手を加えてしまったのはほんの出来心だったのだが、団員たちが台本をどんどん置いて帰るようになったことに心を痛め、滝浪に申し訳ないと思っている。

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■♯34「なごり雪」


「オレが一人目、アンタが二人目、だよ」

 地方都市の郊外から更にバスで一時間余り。
 更に山道を三十分ほど登った場所、門弟もいない道場『伏木稽古場』はそこにある。

 門弟がいないのは、この伏木流が直系血族以外の存在の入門を禁じられているからだ。だから師弟は必ず、親子の縁を持つ。現道場主・伏木 幸侍(ふしき・こうじ)の師も彼の父親だった。
 『伏木稽古場』の歴史は古く、古武術の流れを汲むらしい。らしいというのは、手短な口伝でしか、その由来を先代である父親から幸侍も聞いたことがないからだ。
 先代はもう十年近く前の夏に失踪したきり。法的にも亡き人になっているため、詳しく聞こうにも聞きようがない。

 そんなある日、幸侍に耳を疑うような情報が飛び込んできた。幸侍そっくりな技を使う男が、関東で道場破りをしている、というのだ。情報をもたらしたのは伏木家と深い繋がりを持つという九曜家からだった。

 推奨PCは幸侍の兄弟姉妹や友人、《九曜家》の関係者。

◆DATA

《伏木流 家元》伏木 幸侍(ふしき・こうじ)
【強度/制御/反応】7/10/6
[結界強度]230
[武器威力]+30
保有アクセス:《クンフーマスター》《ティア・ディメンション》《ルミナス・ダークネス》《ジャンピングジャック》

 古武術『伏木流』の家元でもある高校三年生。幼いときから父親でもある師、伏木 冬侍(ふしき・とうじ)が1999年の5月に失踪して以来、免許皆伝されていないにもかかわらず、家元となっていることに悩みを抱えている。
 道場をたたむか続けるかという進路に悩んでいるさなか、関東で道場破りの噂を聞きつけ、解決に乗り出す。


◆DATA

《二人目》伏木 冬幸(ふしき・ふゆき)
【強度/制御/反応】9/−/6
[結界強度]150
[武器威力]+18
保有アクセス:《クンフーマスター》《ティア・ディメンション》《ルミナス・ダークネス》《フォースインパクト》

 冬侍が《大戦》の最中、瀕死で辿り着いた《異界》の果てで巡り会った異世界の魔物。
 強い力を持ちながら、『(幸侍に免許皆伝できなかったことへの)心残り』という弱い感情を持つ冬侍に興味を持ち、冬侍の能力全てを吸い取ってこちらの世界へやって来た。道場破りしていたのは幸侍を燻り出すため。
 冬幸は心の移ろいを理解できず、誇りや矜持といったものの価値が分からない。そのため、道場破りで戦った相手の『誇り』や『矜持』の源になっている技量を吸い取り続けている。

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■♯35 「喪服の訪問者」


『気のせいかも知れないんです。……でも』

 都会の片隅にある小さな探偵社に喪服の美女が現れる。

 美女の名前は澤村 香織(さわむら・かおり)。昨今、身辺に不審な人物の気配がするので、PCi身辺警護と調査をして欲しいというのが依頼内容だ。
 香織は元華族にして澤村グループ総帥の澤村 巌(さわむら・いわお)の孫、怜哉(れいや)の妻で、年齢は25歳。しかし当の夫である怜哉は、先月初めに舅共々ヨットの事故で亡くなったという。
 香織と怜哉の間には子どもがいない。よって、怜哉の死によって香織は澤村の家とは縁が切れるはずだった。しかし、巌の鶴の一声で香織は澤村家の人間として引き留められているのだと香織は語る。
 夫の死と、不審者の影に怯えている香織は、最近体調がよくないのだと訴える。親身になって相談に乗ってくれるのは、夫の叔母にあたる同じ『澤村家の嫁』の立場である澤村 美千代(さわむら・みちよ)だけ。
 姑の芙実香(ふみか)は数年前に他界しており、夫の妹である野梨子や明菜は、香織を財産目当てだとして爪弾きにしているのが現状だった。

週末には澤村家の人間が所有する別荘で、澤村コンツェルン90周年記念パーティがあるのだと香織は言う。
 そこは澤村家の人間が全て集まり、主要取引先の重役も顔を揃える華やかな場。しかし、どちらかというと庶民出身の香織には敷居の高い場所だ。東欧にあった本物の城を買い取って移築したという離島の別荘に香織は一度も行ったことがなく、それも不安材料だと香織は述べる。

 香織の不安をよそに記念パーティが始まり、連続殺人事件が起こる。

 この事件の真相はざっと三通り考えられる。

 1:事件の首謀者は澤村 美千代。巌の遺産の独り占めが目的である。
 この場合、香織はそれと知らず怜哉の子どもを妊娠しており、美千子とつるんでいる澤村家の主治医の高岡が美千子へその情報を流している。
 そして連続殺人事件の殺害される順番は「野梨子or明菜→巌→美千代の夫の義靖(よしやす)」。
 香織は美千子の性格を穏健なものにしたいのなら、「流産さえしてくれれば問題がない」として後回し。より残酷にしたいのであれば巌の前になる。この順番になるのは、美千代と義靖の間に子どもが居ないためで、この順番が狂うと、美智子は法的に遺産を独り占めできない。

 2:首謀者は香織で、不審者というのは狂言。目的は巌の遺産の独り占め。  この場合は殺害される順番は「義靖or野梨子or明菜→巌」。

 3:首謀者は怨恨で澤村家の外部の人間
 殺害される順番は関係なし。澤村巌は強引で独善的な人物であるため、敵も多い。

 実行犯は1・2の場合、雇われた《イモータル》のヒットマン。3の場合は巌によって大切なものを壊されたことで覚醒してしまった《イモータル》である。

 推奨PCは依頼が持ち込まれる探偵やその助手、または香織が手配したというボディーガードや香織の地方にいる兄の友人など。

◆DATA

ヒットマン「大沢 孝児(おおさわ・こうじ)」
【強度/制御/反応】10/6/5
[結界強度]210
[武器威力]+20
保有アクセス:《パペットマスター》《シューティングスター》《ハンター》《ヴァンパイア》《クールアイズ》《ハイドインシャドウ》

 《イモータル》能力を使って暗殺を行う殺し屋、26歳。覚醒したきっかけは子どもの頃に家族との旅行中に大事故に遭い唯一人生還したこと。事故が本当に事故だったのか、それとも……。
 考児には解らない。ただ、父親が経営していた会社が、稼ぎの綱だった特許を澤村工業に横取りされたという事実を知ったのは高校を出た頃の話だ。

重要NPC「澤村 香織」
[結界強度]0
[行動系]の一般人判定に+3修正

 澤村家の御曹司の嫁だった女性、25歳。大学時代同級生だった怜哉と交際ののち結婚。実家は岡山で小さなラーメン屋をやっている。兄と妹がおり仲のよい三人兄妹。怜哉亡き今、岡山の実家へ帰ろうと思っていたが、巌が養女にすると言い出したので、やや困っている。

重要NPC「澤村 美千代」
[結界強度]0
[行動系]の一般人判定に+3修正

 澤村家の次男の嫁で45歳。外見はどう多く見積もっても30半ばくらいにしか見えない。夫の義靖とは巌が進めた見合い結婚で、子どもはない。義靖には結婚前からの愛人(子どももいる)がいて夫婦中は冷え切っているが、外からは全くそんなそぶりは見えない。

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■♯36 「椿座の猫叉」


「最近、ネコ、ふえた、よね?」

 件の椿座。最近、頓にネコの姿を目にするようになった。
 無論、劇団員にもネコ好き・ネコ嫌いなどさまざまあるが、座長の滝浪啓一郎はネコにまったく頓着しなかったので、ネコの増加は放置された。
 しかし、新春の公演を前に団員の合宿が始まるとこのネコ問題はトラブルが表面化し始めたのである。
「ここに置いておいた魚知らない?」
「干しておいた衣装のブラウス、誰か落としたでしょう!」
 みな増えたネコの仕業である。
 ただでさえ、ネコ好きとネコ嫌いが何となく疎遠な雰囲気になっていた矢先。このままでは稽古にも障ると、古株の劇団員が滝浪に許可を得てネコ駆除を始める。しかし、何かに統率でもされているかのように、一匹も捕まらない。おまけにネコを追いかけていた団員の内の何人かはシッポの先が二股になっている「猫叉」を見たと言い出す始末である。
 椿座が椿座であるがゆえに、あり得ない話ではないと滝浪は判断し、《A&S》に調査依頼をすることになる(なお、ここで調査依頼を《九曜家》の関係者へ話を持って行った場合、滝浪と《九曜家》では滝浪の方が目下になることを念頭に置くこと。つまり、調査過程において副次的に発生した事態に対してのイニシアチブを椿座側は絶対に取れない)。

 真相は、椿座の中庭にある石灯籠の辺りに、ネコがようやく通れるくらいの大きさの《うさぎ穴》が開いており、その影響で椿座周囲の野良猫が集まって来てしまったのである。
 この《うさぎ穴》の向こうにある《ネバーランド》は人間レベルの知的水準を持つネコが住む世界。団員が見かけた猫叉はその住人だ。猫叉はこちらの世界へやって来て、普通のネコと見分けがつきにくいのをいいことに、ネコのふりをしながら好き放題やっていたわけである。
 猫叉の基本的な性格はネコなので、下手に出ればつけあがるし、気分次第で言い分を変えるので、交渉がうまくいかない(格下と判断されたり、不快感を与えるなど)場合、戦闘になる

 推奨PCは椿座の団員や椿座出入りの業者、《A&S》のインストラクター、。

◆DATA

《猫叉》「おれさま」
【強度/制御/反応】3/3/10
[結界強度]50
[武器威力]+5
保有アクセス:《ジャンピングジャック》《シュラ》《ファイズセンス》

 《ジャンピングジャック》でネコらしい跳躍や運動性を、《シュラ》はネコの爪をイメージしています。
 使用パワーレベルは1〜2。

return

■♯37 「ワンナイト・ウィズ・グリーンベリー」


「ウチは二十歳未満お断りだろ?」

 グリーンベリー、それは美浦市で一番歴史のあるライブハウス。古いだけでなく、平日の夜も市外からの常連客が顔を出すほどに、招聘するアーティストに定評のある店。
 ミュージックチャージは安くはない。料理は美味い。だから、客層も悪くない。当然、お子様はお断り。勿論コレ、精神年齢コミのお話。
 でも。ある日、アリーナ・ボックスシートに12歳くらいの女の子が座っている。
 相席者は……いない。
 あり得ない。
 フロントは何をしていた?
 フロアスタッフは?
 どうやら彼女が見えるのはオレしかいないみたい。
「わたし、こぼれ落ちちゃったみたい」
 演奏の途中、MC中のオレの所まで来て、彼女は何かを指さしながら訴える。白くて綺麗な指の先にあるのは……薄暗い煌めきを放つシャンデリア。

 少女が指し示す先は年代物のシャンデリアです。調べると、天井とシャンデリアを繋ぐ金具部分にあるレリーフが外れて一つなくなっています。なくなったレリーフは周囲にある同型のレリーフから、『少女』であることが判ります。
 少女は外見年齢よりもやや高い精神年齢を持ち、自身がシャンデリアのレリーフであったことも記憶していますが、そのレリーフになる前に人間であった記憶もある、と「ぽろっ」とこぼします。
 少女に優しく(あくまで優しく。問いつめてはいけません。問いつめると黙ってしまいます)聞くと、他のレリーフも少女と同じ立場の筈だと教えてくれます。そして良い音楽を聴きながら過ごせるのはそれなりに幸せだと。
 少女のレリーフが刻まれたシャンデリアパーツ(吊り金具)は5年前に購入された品です(なお、PCが誤ってシャンデリア自体を調べてしまった場合、このグリーンベリーに来る前はさる華族の屋敷の広間を飾っており、その前は英国の貴族宅で使用されていたものであることを伝えてください)。
 シャンデリアパーツを納入した業者は、これが特注品だといいます。シャンデリアの大きさが、規格品と合わなかったからです。仕入れ先は粟倉工房(社長:粟倉光彦(あわくら みつひこ))という県外のアトリエであることも教えてくれます。
 調査をすると、10年くらい前から2、3年おきに小学校高学年の女の子が行方不明になるという事件が続いていることもわかります。

 推奨PCは演奏能力を持つ能力者や、《Anchors & Ships》のインストラクター、グリーンベリー常連客の刑事など。

◆DATA

《タイラント》粟倉 光彦
【強度/制御/反応】10/6/3
[結界強度]100
[武器威力]+15
保有アクセス:《クールアイズ》《クロックワーク・オレンジ》《カウント・ゼロ》

 《クールアイズ》のおかげで、いつも人当たりの良い男性造形作家という印象を周囲に与えているが、実際は神経質でやや偏屈な人物。彼のネバーランドは、ゴシックな洋館の内部(外は存在しない)で、そこには魂の抜けた少女たち肉体が存在する。
 使用パワーレベルは1〜2。

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■#38「Romantic from Zoo」


「ぼくを待っている子ども達を置いていけないよ」

 ある日少年たちは、小さな動物を拾った。

 図鑑で調べると、それはフクロアリクイという動物らしい。しかも、日本の動物園で飼育されていない事がわかる。
 少年たちは、裏山の秘密基地でフクロアリクイを飼い始める。餌を集めることに四苦八苦しながらも、利口なフクロアリクイは少年たちに懐きはじめた矢先、事件が起こった。フクロアリクイが《ホワイトアウト》したのだ。

 ある日。この小さなフクロアリクイは、家人の留守中を見計らって連れ込まれた。少年たちはTVゲームをするべくTVに電源を入れた。すると、お昼の情報番組が映る。特集は『近所の動物園』。TVには新たにお目見えしたオオアリクイが映った。このオオアリクイを見て、フクロアリクイは《ホワイトアウト》しざまに「オウサマ、見ツケマシタワ!」と叫んだのだ。
 フクロアリクイに事情を聞くと、フクロアリクイやこのオオアリクイは、この世界に自身たちと似た生物がいる事を逆手にとって、こちらの世界への『異世界旅行』が流行っているのだという。
 しかし、彼女の国の国王がこの『異世界旅行』に出たきり戻ってこない。それどころか国王に同行していた旅行添乗員から「現地人に国王は捕まった」というのだ。
 幾人もの王宮警護隊員が国王の奪還を目ざしこちらの世界へやって来ているが、今日ようやくその国王の消息を掴んだのだのである。

 また、国王が失踪してから判明した事だが、この王国にはクーデターを目論んでいる者がいるらしい……。

◆DATA

フクロアリクイ
 【強度/制御/反応】3/4/3 
 [結界強度]30
 [武器強度]12 
 保有アクセス:《シャープエッジ》《ルーニークラウン》《フットルース》

 アリクイ国の女性王宮警護官。年齢は人間換算で約20歳。警護官らしく真面目な性格。 自分を拾ってくれた少年たちにたいして、好感情を持っている。
ヒメアリクイ
 【強度/制御/反応】5/3/2 
 [結界強度]30
 [武器強度]9 
 保有アクセス:《シャープエッジ》《ニューロマンサー》《フットルース》

 オオアリクイ国王を人間の密猟者に捕らえさせたアリクイ世界側の人物。
 とはいえ、このヒメアリクイも、人間にノセされての事なので、基本的に邪悪な存在ではない。
児玉 寛之(こだま・ひろゆき)
 【強度/制御/反応】 8/6/7 
 [結界強度] 
50  [武器強度] 
15  保有アクセス:
《ハンター》《サンダークラップ》《トリッキー・トラップ》《ブルーウォーター》
 悪徳野生動物ブローカー。この世界にアリクイたちが旅行に来ていることを偶然知った《イモータル》で、ヒメアリクイにクーデターを持ちかけた張本人。アリクイ王国では、異世界旅行の現地スタッフと認識されていた。静電気の鞭と罠を武器として使う。
 
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