◆『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』
ゲームルールの特色/Ver.2006.5/21

text:安藤 昌季

1.はじめに
2.『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』記事の企画意図
3.ゲームに必要なもの
4.プレイヤーキャラクター(PC)の作成
 4.1《アクセス》及び基本取得《アクセス》のルールコンセプト
 4.2.それ以外の《アクセス》のルールコンセプト
5.[行為判定]についてのルールコンセプト
6.ダメージの算出方法について
7.[反社会的行為]へのペナルティについて
8.[一般人判定]のルールコンセプト
9.[アンカー]と[デザイア]のルールコンセプト
10.《イモータル》の暴走とサブGMのルールコンセプト
11.[ベクトルカード]のルールコンセプト
12.《盟友》のルールコンセプト
13.[経験点]ルールのルールコンセプト
14.終わりに

I.『ホワイトカオス・ファンブック』製作コンセプト
II.SIDE Aの製作コンセプト
III.SIDE Bの製作コンセプト

W.『ホワイトカオス 3rd.edition』の製作コンセプト

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1.はじめに

 ここでは『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』ゲームルールパートについての特色を説明します。
 ルール運用などの事例についても挙げていきますので、特に会話型RPG(一般的にはテーブルトークRPG、TRPGとも呼ばれます)として遊ぶ場合は、参考にしてください。

 なお、基本的にはゲームギャザ誌掲載のルール部分を見ながら読むように書いてありますので、そのようにしてお読みください。

 また、以下の文章はゲームデザイナー・安藤 昌季としての考えを述べたものであり、株式会社ホビージャパン並びにゲームギャザとは、何の関係もないことを明記します。

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2.『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』記事の特色

 『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』は、毎月各話完結のゲームブックを掲載し、その判定システムとして会話型RPGとしても使用できるゲームルールを掲載する“遊べるゲーム記事”です。
 本記事は読者参加ゲームやカードゲームとは、また違った特色・ゲーム性を持つと考えております。その一つに、本記事が記事単体で遊べることに留まらず、会話型RPGとしてのゲーム性を併せ持つ“広がり”が挙げられると思います。

 本記事の主題であるゲームブックと、会話型RPGとは出自からしても近しい関係にあります。ですからゲームブックを遊び進めること自体が、会話型RPGを遊ぶことの疑似体験・導入記事となり得るのです。両者はルールに基づいて、物語中の状況処理を行うという部分でも共通しているからです。
 さらに、ゲームブックと連動した内容の会話型RPGゲームルールを毎号掲載することで「ゲームギャザ誌を買うこと=ルールブックを所持していること」となります。つまり、既存の会話型RPG販促展開では困難だった「卓のメンツ全員がルールブックを持っている」高普及率を実現できるわけです。
 ですから、ゲームギャザ誌の記事などを見て会話型RPGに興味を抱いたものの、ルールブックが高価なことから、面白いかわからず、商品購入に対し二の足を踏んでいた」読者が、会話型RPGを体験し新規ユーザーとなる機会にできると考えています。
 さらに、ゲームブックという記事構成にすることで、その内容を会話型RPGとして遊ぶ場合の世界設定紹介記事と、ゲームシナリオを兼ねた内容にできるという利点もあります。

 上記のコンセプトがあることから、『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』のルール分量は「ゲームギャザ2ページ分」という制約を自身に課しました。とはいえ『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』ゲームルールは、既存のさまざまな会話型RPGシステムとはまた違った、特色あるものです。ぜひ一度遊んでみてください。
 作り手としては「ルール量が少ない=底が浅く、特色が少ない」ものではないおもしろさが実現できたと考えております。

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3.ゲームに必要なもの

 『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』では「入手しやすい6面体ダイス(サイコロ)で遊べること」「沢山のサイコロを振らないこと」を基本コンセプトにおいています。
 これは、本企画が「会話型RPGを遊んだことがない読者にその面白さを伝える」企画意図を持つ以上、外せないコンセプトでした。

 会話型RPGをよく遊ぶユーザーにとっては、4面、8面、10面、12面、20面、100面といったゲーム用ダイスは馴染み深いものです。しかし、まずは「遊んでみる」ゲームが、そうした入手が難しいダイスを使用することは、敷居をあげることだと考えました。また、入手のしやすさを考えて「ダイス数十個を一度に振る」というようなシステムも避けました。
 ダイスを多く振るシステムは豪快であり、「見た目のわかりやすさ」にも優れています。ただし、ダイスで示される乱数が一度に把握しずらいため、ゲームバランスの処理が難しくなる側面もあります。

 一般の会話型RPGのデザインであれば、問題が少ない部分なのですが、「まずは遊んでみるゲーム」ですから、処理しやすさを優先させたのです。

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4.プレイヤーキャラクター(PC)の作成

 この『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』では、キャラクター作成はごく短い時間で終わります。能力値を配分して、《アクセス》を3種類選ぶだけです。慣れたら3分で作れます。

 作り手として、「まずは遊んでみる」作品である以上、「遊び手の敷居はできるだけ下げたい」という思いがありました。
 一般的にキャラクター作成が複雑であればあるほど、GMはプレイヤーが作成したキャラクター(PC)の能力把握に対する負担が増えます。また、PC作成時に選択肢が多ければ多いほど、プレイヤーのルール把握能力を要求します。

 もちろん「これはこれで、会話型RPGの楽しさ」です。自分のPCの特徴をルールで表現したり、特殊な技をどう取得して組み合わせるか考えたりすることは僕も好きです。
 とはいえ、これは料理としては「下ごしらえ」の部分です。「料理を食べる」ことが「ゲームを遊ぶこと」である以上、下ごしらえの負担が大きければ大きいほど、敷居が高くなるでしょう。

 ですから、発想を転換することにしました。「選択は少ないが、選択できる項目の重要性を高める」ことで、「選択できる幅を増やすことで、悩ませる」ことと同様の「PCを制作する楽しみ」を持たせようと考えたのです。

 こうしたことから『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』は【能力値】が3つしかありません。しかし、3つとも重要な【能力値】です。
 【強度】がなければ、達成値自体が上がりません。【制御】がなければ超能力を使うことで確実に暴走し、動けなくなります。また武器の威力も上昇しません。【反応】がなければ、自分を守るための結界を強く展開できない上、先手を取られます。つまり、自分を守る結界を張る前に、倒されてしまう危険性があるわけです。
 ですから、デザイナーとしても「何を上げておけば有利」とは言えません。まさに「シナリオの傾向次第」だからです。

 とはいえ、後述する「経験点プール」のルールにより、シナリオ傾向に合わせたPCのカスタマイズはある程度行えますから、「シナリオ傾向に合わないPCを作ってしまう」という会話型RPGでは起こりやすい現象についても、ある程度フォローできるようになっているのですが。

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■4.1《アクセス》及び基本取得《アクセス》のルールコンセプト

 ゲームの主人公が超能力者《イモータル》ですから、ゲームの華は超能力である《アクセス》と言えるでしょう。
 では《イモータル》が何をできる存在なのか。「なんでもできる」では、イメージ幅が広すぎてゲームとして成立しません。最低限は統一ルールを設ける必要があります。それが基本《アクセス》です。

 《フェアリーアイズ》では、超能力者としての基本的な身体能力向上を含みました。全PCの身体能力を向上させる必要はないとも考えましたが、少年マンガやジュブナイル小説の登場人物たちは、比較的リアリティを重視しているものでも、かなりのジャンプ力や、移動力を描写されているものです。ですから、一律最低限は向上していいと割り切りました。

 《アポート》は、このゲームの特色となるルールの一つです。格闘ゲームなどで、キャラクターデザインとしては携帯していない武器を、技を使うといつの間にか使っている場面などがありますが、『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』が少年マンガや格闘ゲームのジャンルと被っている以上、そうした描写も理由付けられたほうが好ましいと思ったわけです。

 幸い、超能力のパワーソースは「滅びた世界に堕ちているものを拾い上げること=《ホワイトカオス》」で説明していたので、「どこに武器を隠し持っていたんだ」とか「質量保存の法則はどうなっているんだ」「その装備は現代の科学力じゃ実現不可能だろ」といった疑問は、全て説明できます。また「滅びた世界の物品」である以上、外見が弱そうな武器=弱い、ということでもありません。滅びた異世界の科学力によって「すごい威力でコミカルな外見の武器」とか「どう見ても少女格闘家じゃ持てそうにないけど、なぜか振り回せる長物武器」が実現できていてもいいわけです。

 このように「武器の外見は強さと関わりない」と割り切ったことで、個々の武器データを作る必要もなくなりましたし、不利有利も考える必要がなくなったわけです。とは言え、ただ簡略にしても、ゲーム性が低下しますので、少年マンガなどにある「この魔剣は俺でも制御できるかどうか……」とか「敵の防御を打ち破るためには、もっと力を貯めたエネルギー弾を練らなくては」といったシチュエーションを再現できるようにしました。

 つまり「武器を取り出すには時間がかかる」「武器の威力を強めるにも時間がかかる」というルールにしたわけです。
 充分な準備時間があれば、戦闘前に準備しておけますが、状況が許さない場合は、とてもスリリングな戦闘となるものと想定しています。
 また威力を高めることで[複数攻撃][範囲攻撃]を行えるようにしたのも、少年マンガ的戦闘の表現を狙ったものです(成長した《イモータル》は高い【強度】を持つことで、いきなり[範囲攻撃]なども可能なことにご注意ください)。

 ちなみに、少年マンガで戦闘後にいつの間にか破れた服が元に戻っていたりするものがありますが、『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』では、《アポート》で服を取り出すことで再現できます(笑)

 《パッシブウォール》については、いわゆる重火器やエネルギー弾など、少年マンガで多用される見栄えの派手な攻撃を、普通の人間が受けたら、即死を免れないだろうという観点から考えたものです。『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』では、こうした攻撃を受ければ、常識通り即死します。
 もちろん、これではゲームになりませんので[結界]を張って防御しているのだ、という解釈となります。ですから、奇襲を受けたときなどは、《パッシブウォール》を展開できなければ、下手すれば全滅します。ですから【反応】を軽視すると痛い目に合うわけです。

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■4.2.それ以外の《アクセス》のルールコンセプト

 基本《アクセス》3種類以外の《アクセス》については、思い切ってゲームルール的効果を省きました。

 「この能力を取得すれば、攻撃力がこれだけ上がって……」というように、《アクセス》にゲームルール的効果を持たせれば、必ず不利有利が顕著に発生します。
 不利有利が発生するということは、有利なPCを作ったほうがいいということですから、必然的にキャラクターメイキングに時間がかかり、またプレイヤーのルール完熟度で性能がまるで違うことにつながります。そうしたことは「まずは遊んでみる」ゲームとしては、好ましくありません。

 とは言え《アクセス》にルール的効果を持たせないのは、分量を減らすためだけではありません。
 『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』の特徴的ルールは、《アクセス》よりも、むしろ「[パワーレベル]選択の戦略性」や「サブGMを担当することの戦略性」「[ベクトルカード][経験点プール]の使いどころ」にあります。こうしたルールを運用するさいに、《アクセス》ルールの処理量が多いと、プレイヤーの処理負担が「遊びにくいレベル」となってしまうことを危惧したからです。

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5.[行為判定]についてのルールコンセプト

 少年マンガやジュブナイル小説の中では「貴様など、この程度の力で充分よ」「全力を発揮すれば、俺の身体は持たないかもしれない。しかし!」といった「どの程度で力を使うのか」の指標が、多く登場していると思います。

 [パワーレベル]はそうした「使うべき力の強さ」を現すルールです。

 [パワーレベル表]に従い、ダイスを振って見ればわかりますが、LV0を使っても、出目次第でMAXに勝利する場合もあります。従って「全力の発揮」でも絶対的な効果はなく、ゲームとしての乱数は機能しています。しかし、[パワーレベル]を高めれば出目の期待値はほぼ確実に上昇します。その辺りに[パワーレベル]選択の戦略性があります。
 使いどころか難しいように見えるLV2についても、出目+3がほぼ確実に起こせることと(出目6が置き換えで7になるのはLV2だけです)、防御的に使用することで、勝てそうにもない場合に《共鳴》を狙うという使い道があります。

 [パワーレベル]MAXでは、[ベクトルカード]の[クリティカル値−1]効果と組み合わせれば、かなりの確率で[クリティカル]が発生します。
 「見せ場だ」とメンツが認識して、クリティカルするたびに[ベクトルカード]をそのPCに渡せば、勝てそうにない強敵に逆転勝利……という場合もあるのです(ただし、[ベクトルカード]を使うには「見せ場らしいこと」を演出しなくてはならないので、毎回見せ場らしい台詞や行動をする必要がありますが)。

 最後に、《共鳴》というルールは、ゲームバランスにランダム性を持たせることと、《ホワイトカオス》から引き上げている《アクセス》のままならなさを表現したくて加えたルールです。どんなに高い達成値を出そうと、《アクセス》は本人自身が持つ力ではありませんから、力が干渉しあって消滅することもあるわけです。

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6.ダメージの算出方法について

 一部の会話型RPGゲームルールでは、攻撃された時に達成値が上回れば自動的に反撃できる「突き返し」とか「反撃」というルールがありますが、『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』ではあえて採用しませんでした。これがあると、防御時でも[パワーレベル]MAXで反撃狙いというプレイが増え、[パワーレベル]選択の重要性が低下するからです。

 また「《ホワイトアウト》状態の一般人には、絶対にダメージなどの影響を与えられない。時間が止まって認知されないので、《イモータル》以外に目撃されることも絶対にない」という基本設定は、どこを見回しても人がいる現代日本(特に都会)を舞台とするこのゲームでは、必要だと感じています。
 このルールがないと、人がたくさんいる学校やコンサート会場などを舞台として、超能力者が戦闘したりすれば、超能力戦闘自体の効果もそうですが、逃げまどう一般人が倒れた人を踏んだりすることで、多大な二次被害が発生するからです。

 会話型RPGがコンピューターRPGに対して「起こった状況の処理に、一般常識や想像力を働かせることができる」という利点を持っている以上、作り手として不可抗力でのいたたまれない状況の発生はなるべく避けたいと考えました。
 ただし《ホワイトアウト》せずとも《アクセス》は使用できますし、時間をかければ《ホワイトアウト》状態も解凍できますので「大切な人が敵の攻撃で犠牲となる」というケースはあります。
 気づいていればその場で《ホワイトアウト》することで大抵は防げるのですが。

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7.[反社会的行為]へのペナルティについて

 会話型RPGというゲームジャンルが確立して以来、起こってきたトラブルの一つに「他のゲーム参加者が嫌がる行為を『行動は自由だから。そういうPCだから』と強行する」というものがあります。会話型RPGが、複数の人間を集めて遊ぶパーティゲームである以上、このような人間同士のトラブルは多くの場合「後味の悪い印象」を残します。

 会話型RPGのコンピューターRPGに対する優位性を「コマンドにない行動が取れる自由度」と説明することもありますが、これを誤読して「他人の意表をつく行動を思いつくままに取る」ことを目的としてしまう人も、残念ながら存在します。

 こうした「周囲を意識しないプレイ」を行うメンツ(GMも含みます)が卓に多くいた場合、割を食うのは大抵常識的な人です。実際に、初めてプレイした卓に身勝手なプレイヤーが複数いたことで、会話型RPG自体に対する第一印象を非常に悪くした人もかなりいるようです。会話型RPGが、複数の人が参加するパーティゲームの一ジャンルである以上、他の参加者を意識しないプレイが好ましいものではないことは明白でしょう。

 こうしたトラブルは、ゲームシステム制作側の工夫で少なくできれば、それに越したことはありません。
 『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』では、ゲーム参加者の半数が不快に感じたプレイについては、[デザイア]の増加を行うことができます。これは[経験点プール]の減少に直結していますので、卓全員に不利益が発生します。

 世界観としては、「自分の所属する世界を大切に思う気持ちが[アンカー]となって、《ホワイトカオス》から《イモータル》を引き込む力に対抗している」ので、「自分が所属している世界の秩序を否定し、破壊する行為」を行うと、引き込む力である[デザイア]が増加する、という設定を表現したルールです。

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8.[一般人判定]のルールコンセプト

 『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』では、【能力値】は《イモータル》としての力の優劣を現すもので、人間としての腕力や器用さを再現するものではありません。

 《ホワイトカオス》から超エネルギーや戦闘経験などを拾い上げ、その攻撃を結界で受け止めるようなこのゲームの戦闘イメージに対し、例え腕力が強くても何の役にも立たないだろう、という考えがそこにあるわけです(結果として、筋肉大男と美少女拳士が互角に殴り合えるという、格闘ゲーム的戦闘を実現したわけですが)。

 とはいえ、会話型RPGとしても遊べるわけですから「《アクセス》を使わない、一人の人間としての判定」という判定ケースは想定する必要があります。「《イモータル》として覚醒したことに気づいていない」「《アクセス》を使えない状況で判定する必要がある」などです。
 ですが、使用頻度が高くないであろう、こうした要素のために【能力値】などのパラメーターを増やすことは、ゲームを煩雑にします。ですから「自分が保有している《アクセス》傾向が、判定のプラス修正となる」という現行ルールにしたのです。

 「自分がやりたいPC」と「取得している《アクセス》」がかけ離れているというケースはあまりないでしょうから、システムとしては必要充分だと考えています。

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9.[アンカー]と[デザイア]のルールコンセプト

 会話型RPGには「ゲーム中にカッコイイ台詞を言った」「PCの行動原理をよく表現していた」といったプレイを評価して、状況を有利にするヒーローポイントを与えるルールを持つゲームシステムが存在します。[アンカー]と[デザイア]も基本的にはそういう目的を持ったルールです。

 [アンカー][デザイア]ルールで、特徴的な部分は「PCのロールプレイ以外のプレイヤーの振る舞いや気づかい」も、評価対象にしている点です。
 「かっこいい台詞が言えるけど、参加者としてのマナーが最低」であれば、好ましいことではないですし、逆に「派手なことは言えないけど、他の参加者が遊びやすいよう、配慮している参加者」は、積極的に評価するべきだと思いますので。

 なお、[アンカー]を与えられるのがGMだけではなく、プレイヤーも含まれていることに注意してください。特定プレイヤーからだけ全然[アンカー]が来ていなければ、そのプレイヤーには納得がいくプレイでないことが客観的にわかりますし、[デザイア]が来たなら、はっきりと好ましくなかったこともわかるのです。
 GMは、基本的には卓の全員がなるべく楽しめるよう、意識・配慮してマスタリングを行うべきですが、このルールはその判断に対する指針ともなるものです。

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10.《イモータル》の暴走とサブGMのルールコンセプト

 「強すぎる力を扱ったがゆえの暴走」。少年マンガなどでよく見られる、物語の節目となる演出場面です。
 『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』でも、こうした暴走状態を表現することにしました。ポイントは《アクセス》を[パワーレベル]LV1以上で使うと“必ず”暴走することです。
 暴走してしまえば、自分のPCは物語の場面が切り替わるまではNPCになってしまいますから、活躍しようがありません。ですから、プレイヤーは「暴走したくない」と思うと考えたわけです。

 ただ暴走させたのでは、PCの活躍場面が減るだけで、ゲームが面白くはなりません。ここでポイントなのは「PCがNPC化しているなら、そのプレイヤーは手が空いている」ということです。

 そこで手の空いたプレイヤーに別の役割を担わせれば、面白いことになるのではないかと考えました。具体的には、その場面に登場する敵NPCの台詞を分担してもらったり、データ管理をしてもらったりすることで、GMの負担を下げるという考えです。それが『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』の特徴的ルールである「サブGMシステム」です。

 サブGMを担当することで、暴走を抑える[暴走抑制点]を多く入手できます。ですから、暴走した次の場面以降で、暴走から復帰したPCが活躍できるわけです。
 サブGMを担当している間、そのプレイヤーは例えば中ボスの台詞を言ったり、ダイスを振ったりします。つまり、このシステムは「一つの場面だけGMを体験できるシステム」ということです。サブGMシステムは、プレイヤーにGM側の楽しさを一部体験してもらい、GM側の視点を持ってもらうという「GM育成」を狙いとしているのです。

 このシステムでは、卓に「経験が少ないGM」と「GM経験が多い(PCが暴走した)プレイヤー」がいたなら、経験の少ないGMは「自分が作り上げた物語の一場面を、他人ならどう切り回すのか」を体験できます。敵のデータ管理についても、ある程度サブGMとなったプレイヤーが分担してくれるなら、ルールの処理負担が少なくなるわけです。

 「経験が多いGM」と「GM経験が少ないプレイヤー」の組み合わせだとしても、サブGM化したプレイヤーは、GM作業の一部を分担することで「GMってこんな感じなんだ〜」と体験できるわけです。

 ちなみに「暴走しなくてもサブGMができる」というルールもありますが、中ボスやヒロインの台詞を言いたいプレイヤーというのも、世の中には結構いるからです([暴走抑制点]入手タイミングを多くしたいこともありますが)。

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11.[ベクトルカード]のルールコンセプト

 ゲームルール上の観点だけで言えば、[ベクトルカード]がなくとも、このゲームシステムは成立します。
 ルール量が増えることを覚悟で、あえて加えたのは「思いやりを形にする仕掛け」が欲しかったからです。

 [ベクトルカード]は「他人に見せ場を知らせる」カードですから、渡したプレイヤーとしては特に利益はありません(GMに渡すと[暴走抑制点]が増えるというメリットがありますが)。
 そこをあえて渡す、という行為が「思いやり」だと思う訳です。カードを他人に渡すタイミングを見るという行為は、「他の参加者のプレイに注目する」ということですが、こうした視点をプレイヤー(GMもだけど)が持つことは、プレイの質を相互補助的なものとし、多くの場合高める働きをします。そうした意味での“切り札”が[ベクトルカード]なのです。

 また、ゲームルール的に言えば[ベクトルカード]の「(PCを含む)他者に自分の任意の行動を取らせる」という効果については、この作品の特徴的なルールだと考えています。
 この効果を使うことでゲーム参加者は、現在進行形で作られようとしているゲーム世界に対し、さまざまな演出案を提示できるわけです。
 「今のPC1の台詞だけど、このほうが誤解なく伝わらないか」「今はPCたちの準備ができてないので、そのボスには高邁な理想とかを語らせていてくれ〜」といったように。これは、ゲームをする上でのノウハウ伝授をルール化したものです。

 もちろん、悪用を防ぐために、効果を適用される側の許可を必要としています。「思いやり」がルールの趣旨なので、自分の好みを押しつける、といった使い方は避けて頂けると嬉しいです。
 また、プレイに熱中してカードを渡すことを忘れる参加者も、たまに見られますので、GMはカードが回るように、タイミングを見て示唆してください。

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12.《盟友》のルールコンセプト

 格闘ゲームなどでは「動物や変な生き物を使い魔として使うキャラクター」はかなり存在します。魔女っ娘アニメなどでも「お供の生き物」は定番の存在です。こうした使い魔的な存在を、このゲームでは「異界の住人」と定義付けることで「自分たちの世界を含めた《異界》(=ネヴァーランド)が、『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』の世界には複数存在する」というフレーバーが明確になると感じました。

 「異世界の住人――《盟友》が、なぜPCに従うのか」については、PCが《ホワイトカオス》から引き上げたから、という理由を付け、主従関係を成立させています。
 もっとも、《盟友》は高度な知恵を持っていても構わない独立した生命(かそれに準ずる存在)ですから、PCの扱いが非道な場合は[デザイア]が増加します。
 余談ですが、第1話に登場する“意識”は、世界観的には召喚者を騙した《盟友》です。

 ゲームルール的には、《盟友》は「とても強力だが、強くすればするほど運用コストが高くつく」存在です。判定の[達成値]を高くすれば高い【能力値】を持てますが、その【能力値】の1/4だけ[デザイア]が増加するため、NPC化の危険が高まるのです。
 また、本来《ホワイトカオス》の中にいる存在なので、取り出した力をうまく制御できないために、大した[結界強度]を持たない存在でもあります。
 攻撃を受ければ、ほぼ《ホワイトカオス》に戻ってしまうので、使い勝手は悪いですが、使いようによっては超強力な存在。それが《盟友使い》のおもしろみです。

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13.[経験点]ルールのルールコンセプト

 上記で書いてきたように、特徴的なルールが多くある『ホワイトカオス ブックアドベンチャー』ですが、その最たるものが、この[経験点プール]のルールです。
 ゲーム参加者の目の前で、[経験点]が増えたり減ったりするゲーム性はあまり類を見ることがなく、本作の特徴的なものだと考えております。
 このゲームでは(必ずGMを含む)ゲーム参加者の半数が[アンカー]を渡せば、[経験点]が1点増えます。逆にゲーム参加者がどうかと思うプレイで[デザイア]をもらったなら、[経験点]は1点減ってしまうのです!(この場合はGM一人が挙げただけでも可)

 [経験点]はゲーム中にいつでも使用できるので、シナリオ内容に合うよう、PCをカスタマイズできます。ただし、[経験点プール]に払い戻すことはできませんので、使いどころが難しいルールです。そのシナリオの主人公っぽいPCに対し、集中的に[経験点]を投入したり、強敵に対抗するために、全員に[経験点]を配分したりと色々な使い方ができます。
 もっとも、ゲーム終了時には再配分した上で、成長しなおせますので、残さずぱーっと使ってください(笑)

 世界観的には「《ホワイトカオス》から引き上げられる力には、むらがあるので、たまに使えるはずのない力が使えたり、異常にパワーアップしたりできる」ことを再現するルールです。

 ちなみに[アンカー][デザイア]ともに、あまり深刻に考えずに、気軽にあげたほうがゲームは盛り上がるようです。  僕はプレイヤーで不穏当なツッコミを入れてしまって[デザイア]をもらい、「しまったぁ〜」などと、よくやっております(泣笑) そこで「うぎゃあ〜経験点がっ」と他のプレイヤー参加者が、すかさず返すわけです。

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14.終わりに

 どんなゲームシステムでも、遊ぶ人の善意・悪意は現れるものです。ゲームシステムは、本来セッションの場を盛り上げるためのツールでしかありません。
 システムを恣意的に悪用したり、他の人の揚げ足を取ったりするプレイは、できれば避けて頂けると嬉しいです。

 最後に、この場を借りまして、世界設定やルール面の制作で大いに助力を頂いたSYN氏、ならびにテストプレイに参加してくださった、全ての方に感謝の意を申し上げます。

 皆様が楽しいゲーム時間を過ごせますように!

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I.『ホワイトカオス・ファンブック』製作コンセプト

 ここからは、ゲームのデザインコンセプトではなく、連載終了後に発表された『ホワイトカオス・ファンブック』の製作コンセプトについて書いていきます。

 『ホワイトカオス・ファンブック』は現在も「月刊はがき戦国 Gポイントグッス」であり、さらにこのホームページのキリ番でプレゼントを行っているプレゼントグッズです。
 本来『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』は全6話の予定でした。それが読者の皆様からの支持もあり、全7話に延長が決まったさいに、感謝の気持ちを込めての盛り上げ企画を行いたいと考えたのです。
 その企画が『ホワイトカオス・ファンブック』です。『ホワイトカオス』のもう一つの姿である会話型RPG。そのルールブックを作ろうという企画でした。
 とはいえ製作費用は自腹ですし、どの程度の部数が見込めるのか予想できません。
 ですから印刷所に入稿しての、大部数印刷は不可能でした。選択肢は両面コピー機を駆使しての、完全受注生産しかありません。とはいえ「単なるコピー本」を作っても意味がないため、コピー本の制約を考慮した「究極のコピー本」を作ることにしたのです。

   さて、プレゼントであれ、私どもスタジオサウスサンドの名前で製作するわけですから、生半可なクオリティにすることはできません。まず市販「TRPGルールブック」に対して、どのような編集上の工夫が可能であるのかを考えました。
 私どもが作る両面コピー本の、市販ルールに対するアドバンテージは、(1)「原稿料が発生しない」(2)「納期を長く取れる」ことにあります。

 (1)は商業出版では「コストの枠」がある以上、ある程度以上、原稿料が発生するイラストを掲載できないということです。これについては、三好載克、くろせ秋両先生がイラストの掲載・執筆に対し便宜を図ってくださったこと。また、私どもが担当する読者コーナー「月刊はがき天国」にて、投稿されている投稿絵師の方々が、無償で協力してくださることにより、解決できました。投稿絵師の方々は修正の発生する「プロと同じ製作過程」にも関わらず、度重なる修正指示に応じてくださったのです(この場を借りて、感謝いたします)。

 (2)については本の体裁を研究し、テストプレイを反映する時間が多く取れるということです。コピー本はその性質上、本の端の部分は白くならざるを得ません。これはTRPGを遊ばれる方の中でも、チャート類などをコピーされた方ならご理解頂けると思います。
 『ホワイトカオス・ファンブック』では当初から「コピーされない部分」については、ページデザイン上に組み込むことで「コピーされない部分がない本」としています。

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II.SIDE Aの製作コンセプト

 『ホワイトカオス・ファンブック』製作に当たり、私どもが最大限考慮したことは「TRPGに対する予備知識のない方でも理解できる」ことでした。
 本は、基本的に最初のページから順に読んでいくものです。ですから、冒頭のページには読者に対する「引き」が必要です。市販TRPGの多くが本の冒頭にカラーページを設け、絵素材を多く配置するのは、内容に対する肯定的なイメージを持ってもらうためです。
 もちろん『ホワイトカオス・ファンブック』でも冒頭の引きは考慮しています。
 ただし、違ったアプローチの仕方で。

 活字離れが叫ばれ、インターネット普及により、本の売り上げが低迷している現代ですから「字を読ませる」ことに比重を置くことは、間口を狭くする結果となると考えたのです。ですから、冒頭はコミック。それも「TRPGがどんなゲームなのか」「『ホワイトカオス』がどのような特徴を持つのか」について解説するコミックとしました。
 これは「友達を誘うさいに、ゲーム性の説明が難しい」と言われることが多いTRPGにおいて、必要なアプローチだと考えたのです。この方法を取れば、誘う側は知らない人に、冒頭の説明コミックを読ませ、わからない点だけをフォローすればいいわけですから。

 さらに、市販TRPGの問題は「高額書籍のため、ビニールがかけられていることが多い」ことです。これにはやむを得ない事情があるわけですが、数千円する商品に対し、中身を確認できないことは、買う側に取って不安要素なのは確かです。
 ですから『ホワイトカオス・ファンブック』では、本の背表紙を「この本の内容を紹介する1ページマンガ」としました。
いわゆる「日ペンの●子ちゃん」方式です。
 以上の構成により、“とっつき”の点で改善されているものと考えております。

 さて、私どもはこの部分までを「SIDE A」として別冊としました。理由は二つ。  「友達にまず読ませる本」が分厚いことは問題があること。もう一つは「カラーページとしたかった」ことにあります。コピー本でカラーとするためには、5倍のコストとなります。しかし私どもに「雑誌のオマケTRPGを作っている気は毛頭なく、極めて本気であること」をアピールするためには、必要な要素だと考えたのです。

 完成したカラー本は、TRPGコンベンションなどでも好評であり、製作した側として胸をなで下ろしております。

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III.SIDE Bの製作コンセプト

 当初、ルールブックとしてのSIDE Bは32ページで考えていました。

 これは、コストの問題と「あまり分厚いコピー本は、ホチキスで閉じられない」ことがその理由でした。しかし、このページ数だと「ルールパート」「ワールドパート」「シナリオフック」「NPCガイド」しか入る余地がありません。
 遊べるTRPGルールブックとするなら「ゲームの遊び方・ルール運用」例となるリプレイは欲しいところですし、連載に登場した美浦市や学校などの紹介も必要でしょう。
 無駄をなくすためと、コピーの便宜を考慮して、背表紙をキャラクターシートにするなど、ページ数の圧縮は図りましたが、それでも追加したページにより、32ページは48ページに増えました。
 当初はこれで完成とするつもりだったのですが、プレゼンテーション力の強化とTRPGルールブックとして、実際に遊ぶ上で有益と思われる構成がまとまったこともあり、さらにページが増えることになります。

 その構成とは、冒頭に追加された「アーキタイプ」ページです。
 アーキタイプとは、そのゲームを遊ぶ上で基本と思われるキャラクターを、あらかじめ作成することで、プレイヤーの負担を減らすと共に、世界観を解説するフレーバーとしての効果を期待するサンプルキャラクターのことです。
 とはいえキャラクターが慣れれば3分で作れる『ホワイトカオス』ですから、私どもは当初アーキタイプは不要だと判断していました。しかし「アーキタイプのページを設けること」にメリットがあると気づいたため、追加したのです。

 『ホワイトカオス・ファンブック』では、アーキタイプページにも新たな試みを用いています。まず「同一組織・社会に所属するアーキタイプを男女別に用意したこと」です。
 これにより、アーキタイプの紹介文が「男女どちらでもあり」なものにする必要がなくなったこと、そして「特定組織・社会の切り口を多角的に提示できる」というメリットがありました。さらに、例えば《Anchors & Ships》の構成員アーキタイプなら、《Anchors & Ships》に関連する世界設定を簡便にまとめ、文章として掲載しました。
 そして同一組織・社会に所属するアーキタイプは、見開きで配置したのです。これにより「コピーすることで、アーキタイプを遊ぶプレイヤーは、わざわざワールドガイドを参照せずとも、自分が遊ぶキャラクターに付随する世界設定」がわかるようになりました。さらにコラムとして「想定するアーキタイプの遊び方」を掲載し、シナリオや他のPCとの関わり方を示唆しています。

 さらに、付属シナリオについても踏み込んだ内容としています。
 『ホワイトカオス・ファンブック』付属シナリオは、14ページのうち「プレイヤーに見せてもいい」と断り書きがあるページを4ページ設けているのです。
 「見せてもいい」ページに入る主な内容は「シナリオの説明方法」「PCの初期設定・立ち位置」「関連地図」「主要NPCの外見・性格付け」です。
 シナリオの説明方法は、GMがプレイヤーに「『ホワイトカオス』がどのようなゲームなのか」「今日遊ぶシナリオの方向性はどのようなものか」を読み上げる文章です。
 内容はTRPGコンベンションでのGM紹介時の読み上げを考慮しており、GMの説明負担を減少させることを念頭に置いたものです。

 また「主要NPCの外見・性格付け」は、NPCの全身イラストを使用し、設定・【能力値】、ロールプレイのコツを紹介しています(ロールプレイのコツは、サブGMによるプレイヤー側のNPC使用がある『ホワイトカオス』では必須です)。
 既存TRPGでは、シナリオ中の「NPCイラストが掲載されている部分」を見せると、その部分のシナリオ内容についても見せてしまうことになりがちでしたが、独立させることでその危険性は低下しています。なお「プレイヤーに読ませる部分」で主要NPCの性格付けを明記することで「プレイヤー側のNPCの性格捉え間違い」によるトラブルが減少します(不必要に疑ってかかる、など)。これを押しつけと感じられる方もおられるかもしれませんが、本来「PCはそのNPCとある程度親交を結んでいたはず」なので、その程度の情報量を持っているほうが自然だと判断したわけです。

 さらに、シナリオ内各章の記述についても「第×章のあらすじ」「第×章の目的」と物語上の意味合いを明確にすることで、マスタリングミスを減少させる構成を狙っています。

 こうしたことから、最終的なページ数は80ページとなりましたが、なんとか閉じられました(笑) SIDE Aと合わせると100ページですから、市販品に近いボリュームになったものと考えております。

 その他にも「ルール説明マンガ・コラム完備のルールパート」「ルールコンセプト解説ページ」「どのルールを使っているのか、各章見出しに明記されたショートリプレイ」「制服設定付きの学校ガイド」「連載各話のTRPGシナリオ化に対する説明」「起承転結を記述し、ゲームデータ完備のシナリオフック16本」など、作り込んだ内容のルールブックになったと考えております。

 前述の通り『ホワイトカオス・ファンブック』は、GAMEJAPAN誌読者コーナー「月刊はがき戦国」への投稿で獲得できるGポイントか、このホームページのキリ番報告でゲットできますので、1人でも多い皆様の手に渡ることを願っております。

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W.『ホワイトカオス 3rd.edition』製作コンセプト

 ここでは『ホワイトカオス』最新版である『3rd.edition』の製作コンセプトについて解説します。

 月刊ゲームギャザに掲載された『ホワイトカオス・ブックアドベンチャー』ゲームルールは、プレイアビリティの点でやや不満がありました。具体的には[アンカー][デザイア]の数値上下が[経験点プール]同時に発生することです。
 ゲームに慣れない限り、数値管理の負担により、プレイが阻害されてしまうこの欠点は、TRPGにおけるライブ感を重視した『ホワイトカオス』では避けたいところでした。

 また、実際にプレイした方々より「ベクトルカードを渡すことをつい忘れる」「《共鳴》による判定無効化は、発生確率からしてやや強すぎるのではないか」という声も寄せられていました。
 こうした欠点を解消するためには、小手先の追加ルールよりも、ゲームルール本体をリデザインしたほうが、より効果的だと考え、『3rd.edition』となりました(『ホワイトカオス』には、連載前に使われたルールがあるので、連載版が第2版です)。ただし、シナリオフックやゲームデータなど、既にゲーム資産として発表されている、連載やホームページ上での既存ゲームデータが使用不能とならないように、【能力値】《アクセス》などはいじらない、という条件を、自身に課しました。

 リデザイン前提であれば、対処は簡単でした。[アンカー][デザイア]の概念を、[経験点プール]の獲得条件と一致させてしまえば、同時発生の数値問題は解消します。
 これにより[アンカー]の獲得に長けたプレイヤーであれば、消費[デザイア]を気にしないで《アクセス》を使えるという構造的な問題にも対処できました(《アクセス》使用のリソースが[デザイア]増加、ではなく[暴走抑制点]減少、となったことで、リソースの枠に上限が付いたからです)。

 さらに、カードを忘れることについては「ベクトルカード」ではなく、より「切り札」的な概念である[ワイルドカード]化というルール変更を行いました。
 具体的には「PCの見せ場度合い」によって、カード効果の同時使用回数が獲得できるという変更です(なお『3rd.edition』の付属サマリーに書かれた追加ルール「他人に[ワイルドカード]で見せ場を示唆したさいに[カード使用回数]1回を獲得する」を導入すれば、より「互いの見せ場を意識する」というルールコンセプトを明確にできます)。
 これにより、カードの使用回数を一つの判定時に多数消費すれば「絶対に外したくない一撃」などが再現できるわけです。
 またカードの効果に「サイコロ1個の出目を±1する」を加えたことにより、《共鳴》の問題に対処しています。

 また、キャラクターの方向性を明確化するための「最初に覚醒した、得手とする超能力・《ファーストアクセス》」や、[サブGM]項目の追加、[結界強度]に上限が加わったことなどによって、実際に遊んだ感覚は今までとまるで別物、というのが『3rd.edition』のテストプレイ上で多く寄せられた感想と言えます。

 本としての製作コンセプトは『ホワイトカオス・ファンブック』に準じますが、細かな修正が多く加えられています。
 近年では『ホワイトカオス』と同一ジャンルの市販TRPGも多く発表されていますが、「×▲で同じことができるから、このゲームはいらない」とはならない、明確な方向性を持つゲームデザインと考えています。
 ぜひ実際に遊んでみてください。