◆月刊GAMEJAPAN 2007年4月号掲載/『ファントムサウザント』第4回ストーリー


イラスト:竜騎士くん
▲苦難の末、《風歌の賢者》フレオールの元にたどり着いた王女イアラ。フレオールはその顔を見て、何とも言えぬ複雑な顔をしました。「賢者様……ですよね? どうかなさったんですか!?」 不審な賢者の様子を見て、イアラが尋ねると、フレオールは「いや、その顔、その声が過去を思い出させるだけだ。とはいえ、それはそなたに咎なきこと。まあ……掛けよ。お茶は、嗜むかね?」 イアラが頷くと、フレオールは両手を軽く叩きます。すると、奥から銀のトレイを押しつつ、12歳くらいの少女が現れます。
「お前が言った通りになったな、クローネ」  フレオールが声をかけると、クローネと呼ばれた少女は少しはにかみつつ、答えました。
「えへへ、クローネも《時魔術師》だよぉ。おばさまほどじゃないけどね〜。このクッキーも〜」
 クローネは焼きたてクッキーを出しつつ、紅茶を淹れ始めます。それに合わせて、妖精たちが穏やかな楽曲を奏で始めました。精霊力を操作しているのか、《音叉の塔》の最上階には、涼しい風が吹き抜けます。
 穏やかで、居心地がいい時間が流れ、イアラはアップルティーを飲みましたが、はっとして、本題に気づきます。「そう言えば賢者さま! 相談したい話があって……」
 フレオールはイアラにわからない程度に舌打ちします。そこをクローネに「面倒くさがりやさんだ〜」と、つっこまれ、賢者は「話したまえ」と促しました。
 イアラは、フレオールに師・ヴォルドの死と双子の姉・エリューシスが禁呪を奪ったことを伝えます。イアラの訴えに対し、フレオールは沈黙のあと「さもあらん。つまりヴォルドは語れなかったのだね。呪いによって」と言います。

イラスト:れすきゅーさん
▲「私はそなたたち双子がまだ赤子の時に、一度見せられたことがあるのだ」。フレオールはレモンティーを口にしつつ、大切なことを語ります。「その時には、そなたに星形の痣があった」。
 それでイアラは思い出します。8年前、育ての父でもあった勇者レーヴィンが突如失踪した時まで、自分の左肩に星形の変わった痣があったことを。
「私がこれより語りしは、星形の痣にまつわる話のみ。ただ、それはそなたを危機より遠ざけようとした、師と姉の願いに逆らうことになろう。覚悟がないなら、このまま帰るがよい」
「姉様は、賢者様……ヴォルド様を実の祖父のように慕っていました。わたしには、姉が賢者様を襲い、禁呪を奪ったなんて、今でも信じられません。事情を知ることで、私が少しでも力になれるのだとしたら、知りたいです」 一切の迷いを見せず、イアラはまっすぐとした視線を向けます。
「力になれるかは解らぬ。が、覚悟あらば、その胸に刻め。そなたの師が背負う罪と、姉が己に課した宿業を」。イアラが頷くとフレオールはクローネに促します。
「このクローネの目は時を越え、見抜く。願った以上、そなたは真実を知らねばならぬ」
 クローネの不思議な力で、イアラの心は時空を飛翔します。そして、その心は自身が生まれる前である、17年前に飛翔しました。

イラスト:大隈 達矢くん
▲そのころ、イアラの双子の姉であるエリューシスは、禁呪奪還の命を受けた特務騎士・エーデルとその配下の追撃を受けていました。「王女エリューシス殿下とお見受けする! もはや逃げることかなわず!! 投降されよ」 弓の名手であるセリス・トリヴァードが馬上より弓を構え、狙います。身体強化の魔術に長けたエリューシスでしたが、長時間の追撃により魔力を消費し、さらに疲労が限界に達そうとしていました。
 手練れであるエーデルの配下には、生半可な魔術は通用しません。しかし、本気で魔術を使ったなら何人も殺傷してしまうでしょう。オルサード家の揺らぎない忠節を知るエリューシスは、無益な死者を出したくはなかったのです。どの魔術を使って、この場を切り抜けるか……。一瞬の迷いを付いて、セリスの弓がエリューシスの外套を撃ち抜き、動きを止めます。転倒したエリューシスに、騎馬の一団が迫りました。
 そこに現れたのは、イアラのクラスメートであるエミリオでした。「姫様。エーデル配下の一団ですね。撃退します」 エミリオは付与魔術を唱えると抜剣し、魔力を込めた刀身をなぎ払います。
「だめっ」 エリューシスが制止しますが、魔力により拡大した衝撃波は騎馬の一団を襲いました。騎乗しているが故に、機敏に動けないことがたたり、エーデルたちはまともにその一撃を受けます。
「ご安心ください。僕の魔術は《樹》の系統ですから」
 エミリオはこの草原に埋もれていた無数の種を、一時的に“胡椒”に変えたのです。目つぶしと気管に対する打撃により、無力化されるエーデルたちを見て、エミリオはいたずらっぽく微笑みます。
「なぜ……大罪人である私に助力を? 貴方の家とて名誉があるでしょうに」
「理由? 姫様が右肩にある《星痣》です。《精霊樹の森》は僕と友人たちの遊び場でした。勇者レーヴィンが失踪した晩、僕は“勇気を試す”と称して、友人たちと森に入ったのです。そして、僕たちは姫様とヴォルド様の話を聞いてしまった。追われている時でも、追撃者を殺戮しようとしなかった姫様が、自身の師を手にかける。事実としても、よほどの……きっと正当な理由があるのでしょうから」
 不覚にも、涙があふれそうになったエリューシスは、顔を背けます。
「魔法王の布告により、今は戦乱。仕えるのなら、信をおける方に仕えたいのです」
 エミリオは手際よく馬を奪うと、エリューシスを鞍に乗せました。そして「すぐに答えを出さずとも構いません。ただ、一人で全てを背負ってほしくないのです」と言いました。

イラスト:TUKAMIくん
▲イアラは戻りゆく時の中で、一瞬、星の痣が見えた気がしました。そこで“立ち止まる”と、右肩に星型の痣を持つ10代後半の少女が、愛おしそうに大きくなったお腹を撫でていました。そして少女はお腹に向けて話しかけます。
「あ、今、叩いた。元気ね! あなたたちは。……愛しいイアラ、エリューシス。お母さんは、あなたたちとずっと一緒にはいられないけれども、でも、誰よりも大切に思っているのよ」 愛しさと嬉しさと、そして悲しさが入り交じった表情で、少女はお腹に語りかけます。
 そこに、20代後半の精悍な風貌をした男性が入室してきます。「ユーネリア様。お呼びでしょうか」
 男性が身につけていたのは、代々受け継がれし武門の証し・《伝説装具》。それは世界の危機に立ち向かう宿命を負う《勇者》の家柄のみが、身につけることを許された装具でした。
 イアラはそこで理解します。現れた勇者は、義父レーヴィン。そして、今まで知らなかった自身の母親が、ラーナフェルト四賢者の一人である《蒼碧の巫女》ユーネリアであることを。
「生涯未婚の掟を持つ巫女様が……母様!? どうして!?」
 イアラの問いに答えるかのように、刻の歯車は回り続けます。

イラスト:ポナパルドくん
▲常に先陣を切る勇気から、《先駆ける者/ヴァンガード》の異名を持つレーヴィンは、水の巫女ユーネリアが幼少の時より、勇者としてずっと仕えてきました。この世界の《勇者》とは、本来世界の災厄に立ち向かう家の者であり、特定の誰かに仕える者ではありません。
 しかし、レーヴィンはユーネリアに仕えます。自身が聖剣を向けてもなお、討ち果たせなかった魔獣。未熟さ故に返り討ちに会い、止めを刺されようとしていた、まだ少年の勇者の前に、もっと小さな巫女が立ちはだかりました。
 そして巫女は、勇者を叱咤したのです。「知らなかったのですね? この者は、ただ古き祠を守ろうとしていただけなのです。魔獣だからと、現れただけで討ち果たすなど、あってはなりません!」と。
 猛り狂った魔獣がその小さな身体を握りしめ、打ち砕こうとしましたが、ユーネリアはその手の傷に触れ、「痛かったでしょうに」と優しく撫でました。魔族はその手を放し、勇者は救われました。その時以来、優しすぎる9歳年下の巫女の、その儚げなあり方を守るために、レーヴィンの人生はあったのです。
 役目から生涯未婚の巫女ゆえ、二人は深い信頼感で結ばれ、まるで兄妹のように過ごしました。そして10年が過ぎたとき、役目を終えて自室に戻ったユーネリアは、レーヴィンを呼び、相談します。
「わたし、理由あって子を為さなくてはならなくなりました。魔法王……ガザ陛下と」と言って。
 巫女の告白に勇者は驚き、そして理由を尋ねます。ユーネリアは「天空の星々が大きな災厄を告げています。かつて創造主である《龍王/ブレグラーン》様が、その命を落とされた時以来の大戦が起ころうとしているのです。世界のために、わたしは自身にできることをしなくてはなりません」と答えます。
「しかし、ユーネリア様は《蒼碧の巫女》。掟に背けば、祭祀は意味を失い、恐るべき《奈落》の者どもが《祭祀の蓋/ファントムサウザント》を開きましょう」 勇者の問いに、巫女は目を伏せ一筋の涙を流します。
「それでも……世界の全てのために、必要なのです。勇者よ、どうかわたしの願いを聞いては頂けませんか? 名誉に彩られた貴方の武勲に、泥を塗る願いだと……思っています。でも、このようなことを頼める方は、わたしには……他にいないのです。どうか……出産まで、わたしを拉致してください」
 悩み果てた巫女の願いは、どこまでも深く、悲痛でした。何よりも守るべきひとの願いに対し、勇者が取るべき道は、一つしかありませんでした。レーヴィンは腰を落とし、ユーネリアの目を見据えました。
「……どうか、顔をあげてください。水の巫女よ。貴女がそう願うことに、どれだけの思いがあることでしょうか。私は、貴女の願いから歪んだものを感じません。だから……私は貴女の勇者として、為すべきことを果たしましょう」
 勇者レーヴィンは魔族を装い、水の巫女を拉致しました。丁度、水の巫女の座である《橋上都市》エルンに魔法王ガザが訪れていたこともあり、警護は極めて手薄。かつ、巫女の警護をしていたレーヴィン自身が、巫女を拉致するのです。万に一つも失敗はありませんでした。
 勇者は胸が張り裂けそうになりながら、巫女を魔法王が待つ古びた尖塔まで送り届けます。
 尖塔での儀式を終えた巫女を、魔族として勇者は“拉致”しました。そして魔法王ガザより「巫女を拉致した魔族を討伐し、巫女を奪還せよ」との命を受けたのです。万人を欺くための、命を。

イラスト:ポナパルドくん
▲巫女奪還の命を受けた勇者レーヴィンは、ユーネリアの待つ深き森の小屋に急ぎました。巫女が祭祀を手放し、そして資格を失ったことを表すように、奈落の影響を受けて凶暴化した魔獣が行く手を阻みます。勇者はそれらを切り伏せながら進みます。剣を振るう時だけ、迷いは消えました。
 小屋を守っていたのは、《風歌の賢者》フレオールと、かつてのドワーフ凱旋王・《鳳焔の工匠》バルグムントでした。
「ふん……ようやくたどり着いたか。これで私も面倒から解放されるというものだ」 フレオールがレーヴィンにそう言うと、ユーネリアが三人に「お待ちしていました。勇者様。フレオール兄様も貴重な時間をお借りして、申し訳ありません。凱旋王様にも、ご迷惑をおかけ致しました」と頭を下げます。フレオールは振り向いて、「フン、同門のたっての願い故、断れなかっただけだ」と呟き、バルグムントは「わしは頼まれて、小屋を建てただけだよ」と笑いました。
 人里離れたこの小屋を訪れる者はいません。レーヴィンは、出産までの間、ユーネリアと過ごしました。勇者と巫女、様々な背負うこと――そうしたことと無縁の時間を、二人は生まれて初めて過ごしたのです。
 そして、出産の時がやってきました。レーヴィンは、産みの苦しみに耐える巫女を励ましつつ、その時を迎えます。生まれたのは双子の女の子でした。ユーネリアは、しばらく呆然としていましたが、我が子を抱き、乳を含ませます。「生まれました。わたしの、子どもたち。いらっしゃい、この世界に」
 巫女はそう言いながら、涙をポロポロ流します。双子が心配して、泣きました。
「ごめんなさい……! ごめんね」 ユーネリアの心にお腹の中の双子と過ごした日々が、急激に膨らんできました。『生まれた子どもと別れたくない!』 今まで人生の全てだった巫女の責務に劣らないほど、それは限りなく強い気持ちでした。でも、当初からの取り決めは「自分は勇者により魔族から救出され、子どもは勇者が育てる」というもの。我を失いかけたユーネリアの気持ちをかろうじて押しとどめたのは、レーヴィンでした。勇者は自分のことのように心を痛め、強く手を握り、泣いていました。
「取り乱して……めいわくを、かけます。……この子たちを……お願い」
 それでも勇者はすぐには起ちませんでした。巫女の体調が戻るのに必要な3か月を共に過ごしたのです。
 迎えに来たのは、《風歌の賢者》フレオールでした。フレオールは「子どもは、私がヴォルドのところに送ろう。そなたは巫女を奪還したと、王に伝えるのだ」と言います。泣きわめく子供を必死にあやしつつ、フレオールは移動呪文を唱えます。勇者も巫女も賢者も、涙を浮かべつつ、呪文は唱え終わります。
「連れて行ってください。勇者よ」 まだ17歳のユーネリアは、26歳のレーヴィンに言いました。年齢差を感じさせない、母としての振る舞いでした。
 こうして、勇者は巫女を連れ帰り、その功績を讃えられました。王から直々に受けた叙勲の場で、レーヴィンは当初からの打ち合わせ通り、願いを言いました。
「王よ、では願いを言いましょう。王には今、身分の低い母より生まれ、そして母を失い、行き場の定まらぬ子がいるとか。私は魔族から受けた傷深く、もはや勇者を続けることも叶いませぬ。願わくば、その哀れな子たちを引き受けたく思います」
「さすがは仁愛深き勇者レーヴィンよ。地位でも財宝でもなく、身体の弱き母を失い、依るべを持たなくなった赤子を望むか。よかろう、我が子の養育、そなたに委ねよう」
 魔法王ガザは、こうして我が子であるイアラとエリューシスを、勇者レーヴィンに委ねました。レーヴィンは実の父のように、双子たちを育てました。あまりにも深い苦悩のため、その髪は白く染まり、風貌はまるで老人のようになっていました。

イラスト:キタオカミツルくん
▲レーヴィンは双子たちが世界にとって、必要な子であることを理解していました。そして、魔族にとっても見逃せない子であることも。だから、いざという時に、関係のない人たちを巻き込まないよう、《深緑の賢者》ヴォルドの守る《精霊樹の森》に住居を建てました。その家は、《鳳焔の工匠》バルグムントが《精霊樹》の中でも強い力を持つ《生命樹》を刳り抜き、作った住居でした。《樹》とは、この世界の根幹を為す概念。  《世界》を構成している《要素》であり、魔法の源でもある《魔法力》は『二天四大』という考えによって分類されます。『二天』とは、天を支配する二者。すなわち『太陽』と『月』です。陽と陰、昼と夜、光と闇、男と女、実と虚、清と濁、白と黒、動と静のように、この世はすべからく、この二極に分けられます。
 一方で『四大』とは『二天』を分けてこの世を形づくる根元的要素、すなわち〈火〉と〈地〉、〈水〉と〈風〉です。そして『太陽』は〈火〉と〈地〉を支配し、『月』は〈水〉と〈風〉を支配します。
 そして、全ての根幹である《樹》。《樹》は『二天』と『四大』の入り交じるものです。
 昼(『太陽』)に日(〈火〉)を浴び、大地(〈地〉)の滋養を得た樹木が夜(『月』)に水分(〈水〉)と大気(〈風〉)を取り入れて成長するように、〈樹〉とは『二天』双方、『四大』全てを統合した存在なのです。
 ですから、《精霊樹の家》で育まれた双子たちは、この世界の大きな力の流れの中で育っていきました。《先駆ける者》と呼ばれた勇者レーヴィンが、行き場のない双子の王女を引き取っているという報は、すぐに広まり、周囲に住む人たちは、何かと一家を手助けしました。
 大きく欠けた何かがありながらも、幸せな8年が過ぎていきました。しかし、その時間は突如終わりを告げたのでした。レーヴィンにより救出され、祭祀を続けてきた《蒼碧の巫女》ユーネリアでしたが、掟を破ったことにより、その力は大きく失われていました。
 かつて地の底に封じられた六魔王の眷属を封じし《奈落》。魔法王国ラーナフェルトは、その《奈落》が開かないよう、魔術儀式と祭祀によりそれを封じる意味を持ち、建国された国家でした。しかし、ユーネリアの力が失われたことで、祭祀は意味を失っていきます。それは《奈落の蓋/ファントムサウザント》を開き、解き放たれた魔族が、《精霊樹の家》に現れました。イアラを連れ去るために。
 勇者レーヴィンは「ついに、そのときが来たのだな。だが、守ってみせる」とつぶやき、剣を取りました。

イラスト:藤原貴紀くん
▲イアラが生まれた時、左の肩に星の形をした痣がありました。それは魔術師の観点からすれば、強力な魔術の才覚を現すもの。そして祭祀の観点から言えば、巫女の才覚を持つものでした。特に、青い星の痣は、水の巫女の才覚を現すものとされていました。
 巫女の力により封じられていた魔族は、イアラを新たな巫女として認識し、抹殺するか、拉致して生け贄とすることで、完全なる解放を狙っていました。そして、魔族はイアラの心に悪夢として現れ、具現化しましたのです。それに立ち向かったのは、勇者レーヴィンでした。
 やや衰えたとはいえ、《先駆ける者/ヴァンガード》と呼ばれたレーヴィンの武芸は健在で、あと一歩まで混沌を追いつめます。しかし、若い頃に、魔獣から受けた呪いの傷がうずき、わずかな隙が生まれます。
 深手を負った混沌の存在は、レーヴィンを道連れにして、歪みに引き込もうとしました。只ならぬ気配を感じ、飛び起きたエリューシスがレーヴィンを助けようとしますが、無理と判断したレーヴィンは彼女を突き飛ばし、奈落に落ちます。
 

イラスト:キタオカミツルくん
▲エリューシスは《精霊樹の森》を駆け、《深緑の賢者》ヴォルドに助けを求めます。現場に駆けつけたヴォルドでしたが、すでに《奈落》との扉である“歪”は閉じており、後の祭りでした。エリューシスは眠れるイアラを心配し、《精霊樹の家》に賢者を招きます。賢者は「イアラが持つ星型の痣(あざ)“巫女たる証”を、混沌が狙ったか」と呟きます。
 眠り続ける妹を心配しながら、エリューシスはヴォルドに問います。なぜ魔族がイアラを狙うのかを。


イラスト:がんじゅーいくん
▲ヴォルドは二人の母が巫女ユーネリアだと語り「巫女抹殺のために魔族が動いた。その痣が巫女の証だ」と答えます。賢者の説明を聞いたエリューシスは、真摯に願いました。
「星の痣を自分に移し、魔法学校の特待生にしていただけませんか。痣には、魔法の資質を表すという意味もあると聞きます。痣があれば魔法学校の特待生になれます。常に結界の張られた学校なら、混沌も簡単には見つけられないでしょう。そして、義父を救う方法も学べますから……」と。

イラスト:伊勢屋三泗郎くん
▲ヴォルドは「イアラを魔法学校に入れるのでは駄目なのかね」と聞きました。エリューシスは「私たちには、父も母もいません。だから、私は姉ですが、父のように、母のようにも尽くしてきたつもりです。そして、今起こった悲劇を受け止めるには、この子は優しすぎます」と言います。そして「私は魔法学校に逃げ込むつもりはないのです。義父も、妹も、そして母も救いたいのです。もしそこでよい手だてが見つかったなら、この子から義父までも奪わなくてすみますから……」と。
 ヴォルドは絶句します。その覚悟と、わずか8歳でありながら瞬時にそこまで思考を巡らせるその天才に。  賢者は「恐らく痣が持つ“意味”までは移せぬ。そして、その術は呪いだが、よいのかね?」と問います。  エリューシスは頷きました。ためらわず、強い決意の目をして。
 目覚めたイアラに、ヴォルドは「義父レーヴィンは、王より役目を受けて旅だった」と説明します。そして、姉エリューシスは魔法学校に特待生として引き取られたと。
 ヴォルドはイアラに起こるかもしれない万が一に備えて、彼女を引き取りました。
 エリューシスは特待生となり、目覚ましい実力を身につけていきます。その中で魔法王に接し、全ての始まりとなった事象を察するのです。

 そこでイアラの意識は、《音叉の塔》に戻ります。フレオールは言います。「魔法王はヴォルドに《束縛》をかけ、自身に不利な会話を封じた。私は魔法王の変化を察し、ここに隠遁している」と。イアラはフレオールに尋ねます。魔法王ガザは何を考えているのか。なぜ巫女である母との間に自分たちをもうけたのか。なぜ魔法王の布告を出して、この国を争乱に導こうとしているのか、と。
 フレオールは「そなたが生まれる前に、星が大きく乱れたことがあった」と語り始めます。
 この世界では、星々は天の吉兆を表すものであり、《星読み》を行い、未来の流れを読み取るものは、国を指導する職責を担います。
 イアラとエリューシスの実父である魔法王ガザも、王になる前は《曙光の大賢者》と呼ばれていました。ガザは最も読みにくい星である《太陽》を星読みの対象とする力を有していたからです。
 フレオールは、イアラたちが生まれる前に起こった星の乱れは、今までにないものであり、自分でもその意味はわからない、と語ります。
 そして《蒼碧の巫女》と呼ばれる母・ユーネリアは《太陽》の対極にある《月》の星読みに長けていたとイアラに伝えるのです。つまり、魔法王と巫女にしかわからない、何かがあったのではないか、と。
 「真実を知りたければ、巫女を訪ねよ。ただし巫女は《蒼碧湖》の底にある教会に幽閉され、強力な結界で守られていると聞く。結界は私やお前の師と同じ《四賢者》である火の賢者・《鳳焔の工匠》バルグムントが施したものだ。《堕天都市》に向かい、賢者を訪ねよ。そなたの姉が得手とするのは《火》と《大地》。《火》の禁呪に導かれ、巡り会うこともあろう」と指示します。
 イアラは礼を言うと、《音叉の塔》を出て、《堕天都市》に旅立ちました。

◆月刊GAMEJAPAN 2007年5月号掲載/『ファントムサウザント』第5回ストーリー


イラスト:竜騎士くん
▲《風歌の賢者》フレオールの助言を受け、王女イアラ(左)は船で《蒼碧湖》に封じられた母・ユーネリアの元に向かいます。船には姉・エリューシス(右)も乗っていました。姉は貴族トロンプに招待されていたのです。

イラスト:伊勢屋三泗郎くん
▲エリューシス(中央左)は魔法学校の級友エミリオ(右)の助力により、トロンプが新たな禁呪を解放したことを知ります。「姫様、奴の狙いは“あの錬成”かと」「なにっ」

イラスト:TUKAMIくん
▲船内で迷ったイアラは倉庫で人魚・ミラノと出会いました。二人は歌を通じて仲良くなります。ミラノは迷子になった所を貴族トロンプに保護され、一族を捜してもらうのだと話してくれます。

イラスト:藤原貴紀くん
▲下船するさいに、イアラは人足の話を耳にします。ミラノは美食家で有名な貴族・トロンプの「晩餐会の食材」として、運ばれているというのです。イアラは歌を教えてくれた友人を救うべく、王女としてトロンプの屋敷に乗り込むことにしました。

イラスト:ボナパルトくん
▲屋敷を訪ねたイアラをトロンプは紳士的に迎え、ミラノ解放を約束します。そしてトロンプは、イアラを晩餐会に招待します。イアラは警戒しつつも、ミラノを解放してもらうため、参加を了承しました。

イラスト:れすきゅーさん
▲持参したドレスに着替えたイアラに《精霊王》が言います。「師より受け継いだ装具を置いていくのか」と。イアラは「晩餐会に武装していくことはできません。装具を外してしばらくは魔力も増幅していますから大丈夫です」と答えます。

イラスト:竜騎士くん
▲晩餐会会場には、双子の姉がいました。驚いて話しかけようとしたイアラですが、その前にトロンプの配下が二人の王女を取り囲みます。「人魚の肉に王女の血のソース。それは究極の魔力を得られる美食なのです」激昂したエリューシスが瞬時に魔力解放し、トロンプに跳び蹴りを加えます。


イラスト:大隅達矢くん
▲体勢を立て直したトロンプはミラノを背にします。「ふ、噂に違わぬ強化魔術。でも師を殺め、禁呪を奪った貴女が正義の味方気取り!? 片腹痛いわ」「お前などにはわかるまい。私は受け継いだのだ、契約も、運命も!」 エリューシスの全身に禁呪の魔術刻印が現れます。姉は妹に「念じて装具を呼び、人魚を連れて脱出しなさい!」と伝えます。姉の心を乱せば、禁呪の制御に失敗すると直感したイアラは頷きました。二人の解放した禁呪が激突する中、イアラはミラノを救出します。

イラスト:ボナパルトくん
▲イアラは《精霊王》の助力により、魔法でミラノに一時的な足と衣服を与えます。屋敷の裏手に繋がれていた、小舟に飛び乗ったイアラたちの上を、禁呪が生み出した爆風が通り過ぎていきました。

◆月刊GAMEJAPAN 2007年6月号掲載/『ファントムサウザント』第6回ストーリー


イラスト:キタオカミツルくん
▲美食家の貴族トロンプに、食材にされようとした人魚ミラノを助け出すべく、晩餐会に出席した王女イアラ。そこには双子の姉エリューシスも招待されていました。禁呪を使って二人の王女までも食材にしようというトロンプに対し、姉が禁呪を発動させます。

イラスト:ボナパルトくん
▲エリューシスの持つ禁呪は《極光煉獄》。最強の光である《太陽》の欠片を召喚し、その輝きで闇の禁呪を封じる術です。それはトロンプの闇の巨人を包み、消し去りました。「闇を弄んだ報いを知れ!」止めを刺そうとした時、エリューシスの体から、闇が洩れ出します。「くっ」洩れ出した闇どもに抗いながら、王女は館を脱出しました。

イラスト:TUKAMIくん
▲一方、王女イアラは助け出した人魚ミラノとに、館の裏手に係留されていた小船に乗り込みました。久々に水に触れたミラノは笑顔を浮かべ、イアラも笑顔で返します。その時、二人は複数の馬蹄が鳴る音を耳にします。追手かと身構えると《人馬族》の馬車曳きが、騎馬の一団と、それが放った魔物に追われる光景が目に入りました。

イラスト:大隅達矢くん
▲反撃しない《人馬族》の馬車に、追撃者たちは容赦なく矢を射かけました。老人が矢を受けたのを見て、イアラは光の剣を召喚し、追撃者たちを阻みます。

イラスト:ボナパルトくん
▲《人馬族》の青年テュルクは、イアラたちに礼を言い、息絶えた老人を埋葬します。彼は《橋上都市》エルンに手紙を届けようとしたが、騎馬の一団に阻まれたと話します。イアラが助力を申し出ると、テュルクは喜び、時折、魔法が切れて人魚に戻るミラノを見て「では、僕は彼女を運ぶのを手伝おう」と申し出ます。

イラスト:キタオカミツルくん
▲新手の騎馬隊に追撃され、危機に陥った一行。しかし、ミラノが不思議な力を持つ《人魚の歌》を歌うと疲労が消え、逃げ切れます。たどり着いた《橋上都市》はトロンプの上役であるエスフェランス公の軍勢に封鎖されていました。そこで水の《精霊王》が「あの都市に行こうとは難儀なことだ。一つだけ手があるがね」と申し出ます。

イラスト:竜騎士くん
▲イアラが方法を問うと、《精霊王》は呪文を教えてくれました。そして「お前の魔力を使い切るが」と忠告します。イアラは同意し、《ルーン・ペアレス》を解放すると、その呪文《青の道筋》を唱えました。「これで水はそなたらの道」《精霊王》は大河に道を開きます。


イラスト:ゆきまんまんさん
▲戸惑いながら、一行は水中を進みました。不思議なことに、水中にもかかわらずテュルクの馬車の音が聞こえ、会話も普通に通ります。ミラノが「ここならお役に立てますね♪ 先導役はまかせてください」と微笑み、先に進みます。テュルクが「任せるよ。いくらなんでも、こんなとこまでは追手はこれないだろうけど」と返したとき、ミラノが「あ……あれっ!」と驚いた声を上げます。目指す《橋上都市》のあるその方向には、多くの黒影が見えました。

掲載ストーリー第1回〜3回を見る

掲載ストーリー第7回〜9回を見る

掲載ストーリー第10〜12回を見る

掲載ストーリー第13〜15回を見る

募集要項を見る

エピソードリクエスト♯1を見る

エピソードリクエスト♯3を見る

エピソードリクエスト♯5を見る

エピソードリクエスト♯7を見る

読者設定資料を見る

「月刊はがき戦国」トップへ