◆月刊GAMEJAPAN 2008年1月号掲載/『ファントムサウザント』第13回ストーリー


イラスト:海江さん
▲《堕天都市》ヴィエル。天空から堕ち、深く地面に突き刺さった《箱船/アーク》発掘を生業とする鉱夫たちの町。そこに突如降り注いだ隕石と、それに取り付いた未知の魔物は町を混乱に陥れます。
母ユーネリアに会うために、この町に立ち寄った王女イアラたちは魔物と戦い、撃退しますが、 そこに蝙蝠傘を持った老紳士が現れ、イアラたちを恫喝します。
「殺り方が手ぬるい!」と。

イラスト:ポナパルドくん
▲老紳士・ギッシェンは《生命蹂躙/エナジードレイン》により、魔物を仕留めます。だがそれは《不死王/ヴァンパイア》の魔技。勇者ラウェスが身構えます。老紳士に敵意がないと見たイアラは彼を止め、真意を正しました。
「わしは、天に唾する愚者よ。が、語る時間もなかろう」
「なら、わたくしにお任せなさい!」

イラスト:キタオカミツルくん
▲一同を指さし、宣言したのはヘルメット姿の美女。その手には《真銀/ミスリル》で作られた、魔法のツルハシが握られています。
「わたくしはクレ……スティア。要はあなた方の助っ人です」
 美女は老紳士に言いました。
「わたくしが時間を稼ぎます。そなたはその者らに語りなさい」
「どうする気かね?」
「掘ります。巫女ユーネリアへと続く道を」
 余りの怪しさに一同が凍り付きます。

イラスト:大隈達矢くん
▲クレスティアは人混みを掻き分け、坑道に進みます。ツルハシの音が決然と響いたとき、一同は我に返ります。鉱夫らが美女に言いました。
「べっぴんのねーちゃん、坑道掘るなんて素人には無理だぜ」
「素人? ならお見せしましょう。我が《真銀鶴嘴/ミスリルマトック》+3、必殺の威力を!」
 一撃で大岩が砕け、道が開けます。歓声が上がる中、ギッシェンはイアラに言います。
「主ら、行くぞ」

イラスト:藤原貴紀くん
▲「えっ? 話は!?」
「あの者、いきなり道に迷っているようでな。道案内が必要だろうて」
 イアラたちは老紳士と共に、慌てて美女を追いました。
「こ、この坑道の構造は、頭に入れたのですが……」
 少しバツの悪い顔をしながら、美女は微笑みます。

イラスト:竜騎士くん
▲「ギッシェンさんより、貴女の正体の方が気になりますね。クレ……スティアさんでしたっけ?」
 ラウェスの問いに美女は大人っぽく……を意識したように微笑みます。
「通りすがりの聖職者・クレスティアです。特に伸びません。女性の過去はヒミツに満ちているものですわよ」

イラスト:MIEさん
▲ギッシェンの先導で坑道最深部まで来たとき、美女は双子姫に魔法を指示します。そしてツルハシを一閃させると《湖底教会/クリスタルチャーチ》への道が開き、光が差し込みます。

イラスト:TUKAMIくん
▲ついに母に会う……震えるイアラの手を、双子の姉姫・エリューシスが取ります。
「いこう」
 双子姫は光差し込む道を進みました。
《湖底教会》の水晶ドーム内にいた、母たる巫女が娘たちに気づきました。その瞳が歓喜の涙に染まります。

イラスト:有賀ちなつさん
▲ユーネリアは、覚束ない足取りで娘たちに歩み寄りました。双子姫は駆け寄り、母を抱きしめます。
「ああ……わたしの娘たち。なんて愛おしいのでしょう。聖霊クレシア様、ギッシェンさん、娘を導いてくださり感謝いたします」
 母は姿を変えた謎の美女に、そう言いました。

◆月刊GAMEJAPAN 2008年2月号掲載/『ファントムサウザント』第14回ストーリー


イラスト:舟橋寛之くん
▲イアラとエリューシスは、ついに母ユーネリアが《ファントムサウザント》の封印を守る《湖底教会》にたどり着きました。教会の中心にある水晶ドームには、《生命樹正教》の象徴である《生命樹》が枝を伸ばし、母娘の再会を見守っていました。戸惑い立ちすくむ母に、双子の王女はためらわず抱きつきました。

イラスト:大隈達矢くん
▲「許してくれるのですか……この私を『母』、と?」
 ユーネリアの胸中では、激しい感情がせめぎ合います。双子姫が自身を母として受け入れてくれた喜びと、我が子に人ならぬ宿命を負わせた罪。けど、双子姫にはユーネリアに対する罰の意識など存在していませんでした。
「母様は母様です」
 エリューシスが思わず叫びました。

イラスト:藤原貴紀くん
▲「許す……何を!? 私たちは母様から生まれた。生まれ落ちることで喜びも悲しみも怒りを知って。 私たちは、生まれてきて幸せなんです!」
 イアラも言います。ユーネリアの瞳から涙が落ちました。娘たちが世を呪ったとしても、責めは自身に降るようにと祈らぬ夜はなかったのです。
「すみません、母は、泣き虫なのです」
 ややあって《守護聖霊》クレシアが言いました。
「三人ともよく聞いてください」

イラスト:ブラック太郎さん
▲「貴女たちは本来、巫女や王女ではなく、普通の親子として生まれるはずだったの。世界の都合で道筋を曲げたのは我ら《聖霊》」
 《聖霊》の告白は続きます。
「人であるはずの者に《龍》でも《聖霊》でも《魔王》ですら背負えぬ願いを負わせた、業を引き受けに参ったのです。本来であれば得られたはずの日常を一日分だけ、お返しします」

イラスト:大隈達矢くん
▲クレシアの力により、三人は懐かしい《精霊樹の家》にいました。そこは三人が普通の親子として生きる世界。母娘はお弁当を一緒に作ります。料理はイアラが得意で、母と姉は教わる側でした。
「じゃあ、学校に行ってくるね」
「遅くならないうちに帰ってきます」
 双子姫は魔法学校に行きました。そこには二人の師であるヴォルドも生きていて、はしゃいだ二人は怒られます。二人はそれが嬉しくて、飛び跳ねました。金の砂のように貴い時間が流れていきます。

イラスト:TUKAMIくん
▲ユーネリアは少女時代を過ごした家を掃除しました。すると、紺と白の布で作られた匂い袋が見つかります。
「母様? それは」
 帰ってきた双子姫が聞きます。
「私が作った匂い袋がここに」
「作り方をおしえて」
「いいわ」
 三人の手芸教室が始まりました。器用に針を進めるイアラ。几帳面に縫い目を揃えるエリューシス。真新しい匂い袋が四つできあがります。娘たちが一つ作る間に、母は手際よく二つ作ったのです。
「母様にはかなわないですね」
「そう? 貴女たちの匂い袋の方が素敵に感じるわ」

イラスト:ポナパルドくん
▲午後はお弁当を持って、花咲く丘のピクニック。夕食は協力してごちそうを作りました。
 その夜。懐かしい子供部屋のベッドに双子姫は横になりました。二人は眠れませんでした。すると、ユーネリアが毛布を二人に掛け、そして優しく子守歌。翌朝、朝食を三人が食べていると、扉からノックが聞こえました。三人はただ見つめ合いました。
 夢の終わりの合図だったから。

◆月刊GAMEJAPAN 2008年3月号掲載/『ファントムサウザント』第15回ストーリー


イラスト:亜浪くん
▲花あふれる野原の中に立つ扉の向こうは、もう《湖底教会》になっていました。精気をあの野原に置いてきたように、ユーネリアは崩れ落ちます。とっさにイアラとエリューシスは母を支えました。
「すみません。また母は拙いところを」
 動揺する双子姫を見て、エリューシスの協力者であるラゴとムルシエが寝椅子を運んできました。
「姫様に報告があり、ここまで来たんだけどね」
 当惑するラゴに、薬草茶のポットを運ぶラウェスが「今は聞ける状態じゃないから、差し支えなければ僕が」と声をかけます。
 手慣れ横たえられたユーネリアは《守護聖霊》クレシアに手をかざされました。強烈な呪いが少し和らぎ、ユーネリアは口を開きます。
「これで語るべきことを伝えられます。クレシア様、感謝致しますわ」

イラスト:藤原貴紀くん
▲「なぜ《月の魔王》がイアラをを望むのか、伝えねばなりません。捻れた魔術の中心に立つ《触姫》の意味を。《触姫》とは性質が拮抗・対立するもの全てを統合精製した存在。全てを『壊す』ものです」
 ユーネリアの説明にイアラとエリューシスは愕然とします。少なくとも、魔法学校で習った魔術体型では決してあり得ない存在だからです。
「《触姫》を生み出すには《虚無の王》を召喚し、人に宿らせる必要があります。そのためには、複合禁呪が必要でした」  血を吐くような言葉にクレシアが口添えします。
「私たち《聖霊》や《魔王》も同じ結論に達したのです」

イラスト:MIEさん
▲17年前。15歳の巫女ユーネリアは僅かな星辰の乱れを感じました。それは創造主たる《龍王》をも殺めた大災厄の兆し。ユーネリアは同じ《四賢者》であるフレオール、バルグムント、ヴォルドと巫女の守り手である勇者レーヴィンを招集し、魔法王ガザに目通りを求めます。

イラスト:ポナパルドくん
 《中央大陸》最高の叡智であっても、この問題は手に余りました。あらゆる可能性が検討され、刻一刻と絶望は深くなっていきました。
 かつて降り立った大災厄・《凄霊》は人より大きな力を持つ《聖霊》や《魔王》、《龍》でさえ、対処できないほどの脅威でした。創造主である《龍王》が命を吐息に変えて撃退した相手なのです。
 そして今の世界の主は未だ《龍王》が残した卵の中。議論に疲れた賢者たちが休憩を宣言した暇に、ユーネリアは魔法王ガザに声をかけ、連れ出しました。

イラスト:しいらまさきさん
▲「一つだけ手が」
 巫女は魔法王に強い視線を向けます。
「陛下と私で《触姫》を生み出すのです。儀式に必要な魔力は、《聖霊》と《魔王》に助力を求めて」
 温厚で誠実な魔法王は、あり得ぬものを見る目で、巫女を見つめます。
「正気ですわ。世界はこんなにも輝いているのに、何もせずに滅びを迎えられるでしょうか」

イラスト:竜騎士くん
▲《聖霊》と《魔王》の助力の元、世界を救う《触姫》を生み出す儀式は行われました。幼い巫女を家族のように思っていた四賢者と勇者と王は、言いようのない哀しみを覚えつつ、巫女を励まします。

イラスト:大隈達矢くん
▲儀式のあと、魔法王ガザは何かを悟ったような目で賢者に語ります。それは後継者を魔術の力量で決める《魔法王の布告》。あえて世界を乱世にし、野にまどろむ英雄を磨く。そのための策略でした。

イラスト:裕三さん
▲《聖霊》クレシアは、自らも荷担した深き業を噛みしめます。
「《魔王》は《触姫》に災厄を回避したあと、闇の王《大魔王》となることを望みました。でも私たちは世界を慈しみ、人として生きてほしかったのです。だから私は運命に介入し、《触姫》に添え星を付けました。重すぎる運命に添う《灯火》としての半身を。だからイアラが《月触姫》で、それを照らす《日触姫》がエリューシスなのです」
 母も知らぬ双子の意味。それを語った後、クレシアは言います。
「《水の蓋》には私が立ちましょう。水の巫女の代わりとして……」

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